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フラムの進化型キック&ラッシュ

今一番試合を見ていて楽しいチーム、フラムを紹介します!
いや、ホントに全世界のどのチームよりもフラムが好きです。アーセナルやアトレティコなどもチェックしてますが、現在のところ、試合観戦の優先順位はフラムがトップです。それくらい、このチームに魅了されました。

現在、降格圏に沈むフラムですが、観るべきチームです。20代前半の若手が多く、プレースタイルはとてもエネルギッシュで溌溂としています。

具体的には5-4-1をベースに守備を固めつつ果敢にハイプレスも発動して守備で敵陣に乗り込んでいきます。5-4-1の組織守備もゾーンディフェンスを基本として整備されており、引いて守った時の堅さは一定程度保障されています。特にレミナの読みの鋭さは一級品で、リバプール戦では中盤センターで何度もリバプールの攻撃を食い止めていました。ハリソン・リードが使われることが多いですが、レミナの方が守備面では安定している印象です。また、パーカー監督は相手の良さを消すための策を打ってくることもあります。例えば、レスター戦では、ハーフスペースに入ってくる選手を徹底して迎撃するタスクを左CBと右CHに与えていました。マディソンやティーレマンスがハーフスペースに移動してきたらすぐに左CB、右CHが捕まえにいき、ハーフスペースを封鎖することに成功していました。

一方、攻撃はいかにもイングランドのチームらしいキックアンドラッシュがメインです。その設計がとても面白く、エキサイティングです。

パス回しによるボール運びはほとんどする気がありません。というか、選手の質からして諦めていると言った方がいいかもしれません。マイボールになったら、近くで2、3本パスを回して視野と時間を確保したら、とにかく前線にロングボールを蹴ります。ターゲットは、ロスタフチークとカバレロです。ロスタフチークは見た目通りのフィジカルと高さでボールを受けてしまいます。カバレロも身長は高くないですが、簡単に競り負けることはほとんどありません。そして、ロングボールを蹴る前の2、3本のパス回しの間に、パス回しに関与していなかった選手達がセカンドボールを奪うためのポジションを取り、ロングボールを前の2人が競り合って生じるセカンドボールにCH、WB、STが襲いかかります。

ロングボールを蹴る前に準備のポジショニングをとっているので、セカンドボールを回収できなかったとしてもボールの周りをフラムの選手が囲んでいる形になっています。そこから一気にハイプレスに移行してショートカウンターを狙いにいきます。ハイプレスを剥がされたら一転ピンチになってしまいますが、最近の試合では持ち前の若さとスピードで追いついて時間を稼いだり、戦術的ファールで止めることも出来てきています。

首尾よくセカンドボールを拾うことができたら、両翼のWBと前線の3枚で5レーンを埋め、GKを除く10人が敵陣に上がってコンパクトな陣形を保っています。タスクとしては、CHのうち1枚(主にアンギッサ)が左サイドの攻撃のサポート、右CBのオラ・アイナが右サイドの攻撃のサポートに入ります。残り3枚はカウンター対応とルーズボールの回収のためにポジショニングを調整しながら睨みを効かせています。
また、左サイドではロビンソンとルックマンがドリブルでボールを運ぶオプションも持っています。


注目すべきは、各選手のスピードと思い切りの良さです。とくに両WBの上下動の速さはこのチームの根幹を成しています。右のボビー・リードと左のロビンソンは守備で自陣ペナルティエリア横にいたかと思えば、ロングボールを前線に送り込んでセカンドボールを争っている頃にはハーフウェーラインを超えて攻撃に参加できるポジションをとっています。特にロビンソンの左足のクロスはスピード、精度ともに良く、好機を演出しています。また、主に左のシャドーストライカーとして活躍しているルックマンはスピードが武器でガンガンドリブル突破を仕掛けます。まだまだ荒削りでボールロストも多いですが、そのスピードとアグレッシブな姿勢は見ていて気持ちがいいですし、相手からしても脅威になっていると思います。そして、シュートの場面でとにかく足を振る。ほとんどの選手が勢いのあるシュートを撃ちます。見ていて清々しさすら覚えます。

フラムのチームの土台はロングボールを主体としたセカンドボール合戦です。今風に言うとストーミングということになるでしょうか。そして、ボールを確保できた時は5レーンを埋めるポジショナルプレー。ハイプレスが剥がされたらリトリートして5-4-1のカテナチオ。フィジカルとスピードに振り切った全方位型のチームということができるでしょう。今シーズンプレミア復帰を果たし、残留が目標であるチームが全方位型のチーム作りに挑戦している。しかも、土台はプレミアリーグらしいキックアンドラッシュで。開幕3試合で10失点を記録していることが物語るように、やはり無謀な挑戦に思えます。あまりにフィジカルを酷使するスタイルのため、後半30分を過ぎると相手に押し込まれるケースが多いことが弱点でもあります。

しかし、ここまで記してきたように、ここ最近の試合では攻守にわたっていい試合運びが出来ています。守備も堅く、ハイプレスでボールを回収できています。攻撃でもチャンスクリエイトはできています。カバレロに得点が来たら、きっと大化けするチームです。リードできれば、試合終盤はハッキリ引いて守り切るプランも選択肢に入ってくるし、選手交代をうまく使って凌ぐことは可能だと思います。何より、プレミアに昇格したチームが全方位型のチーム作りに挑戦するという気概を買いたい。パーカー監督をはじめ、チームが一体となってプレミアリーグに戦いを挑んでいる感じが胸を熱くさせます。

まとめ。
5-4-1をベースに堅い組織守備と5レーンを埋める攻撃を備えた上で、若さとスピードを全面に押し出したセカンドボール合戦を軸にしたチーム作りに取り組んでいるフラム。イングランドの伝統的なキックアンドラッシュを現代的にアップデートしたと言えるでしょう。
ビエルサのリーズもいいけど、パーカーのフラムも悪くないですよ。

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