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セリエA 第34節 ユベントス vs ミラン 〜少しやる気出してみました

ミランとの一戦はスコアレスドローで決着。ただ、アッレグリが色々な柵を振り解き、やっとやる気を出してみたように思えました。来季はアッレグリはユベントスにいないかもしれません。アッレグリ第2期政権の集大成が今、ピッチに描かれているように思う試合でした。簡単に振り返っておきます。

アッレグリによる今季の最適解

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、ウェア、ガッティ、ブレーメル、ダニーロ、コスティッチ、カンビアーゾ、ロカテッリ、ラビオ、ブラホビッチ、ユルディズ。この試合のポイントは、ウェアとユルディズです。

ウェアは右の大外を上下動して幅をとる役割を任せる人材。彼がケガによる離脱とその後の不調に陥ったことが右サイドを苦しくさせていました。そして、キエーザではなくユルディズを起用し、左サイドはコスティッチが駆け上がるように配置とタスクを整理。

このメンバーをスタメンに送り出したことによって、守備時は5-3-2をベースに自陣で構える守備の際はユルディズが中盤左に入った5-4-1へ移行してより固く守ることが可能に。さらに攻撃時は2トップとWB、カンビアーゾが前に出て5レーンをバランスよく埋めて攻撃に出て、3バックとロカテッリ、ラビオがポジションを入れ替えながらボールを保持するメカニズムによってミランのファーストプレスをいなして押し込む展開を作ることに成功していました。攻守にバランスの取れた配置とタスクの割り振りができていたと思います。特に攻撃時はコスティッチが躍動。左サイド高い位置まで進出して何本もクロスを撃ち込み、チャンスを演出していました。

あと微調整ができるとしたら、カンビアーゾかマッケニーかというCHの選択ではないでしょうか。カンビアーゾはポジションにとらわれない流動的な動きが最大の特徴です。一方のマッケニーは高い戦術眼とフィジカルを武器としています。ミラン戦のように両サイドからクロスを多く撃ち込むならマッケニーの方が高さ・強さを兼ね備えているため得点に期待できるかもしれません。ただ、ミラン戦についてはレオンに対してウェアとダブルチームに行くことを考えれば、縦突破はウェアが、カットインをCHがケアするとすれば左利きのカンビアーゾの方が対応しやすいということも考慮に入れていた可能性はあります。

中盤の盾・ラビオ

そして、ラビオに対する存在意義の変化も感じ取ることができました。昨季の得点量産を経て、ラビオは高さを生かしてペナルティエリアに突撃するミッドフィルダーと認識していましたが、どうもアッレグリはラビオに対して今季は違ったタスクを期待していたようです。

それは、ロカテッリの副官として主に守備で彼の横をプロテクトするという役割です。ロカテッリは高い戦術眼とテクニックで攻撃のリズムと方向を決定するビルドアップのキーマン。同時に守備ラインの前に陣取りプロテクトしつつ、ハイプレスにも出て、さらには守備ラインの穴を埋めるという守備フェーズにおいても重要なタスクを担っています。ただ、スピードには難があり、被カウンター時にはその弱点が露呈してしまいます。しかも攻撃のユニットが固定できなかった今季のユベントスはパスミスが多くカウンターを喰らう場面も増えました。さらにガッティを攻め上がらせる機会も増えていることから、カウンターに対応する人員を確保しなければなりません。そこで白羽の矢が立ったのがラビオだったのではないかと思います。

ラビオは高さ・強さに加えて長いストライドを生かしたスプリントでスピードも兼ね備えています。アッレグリはそのフィジカルで被カウンター時にカウンターの芽を早いうちに潰す役割をラビオに期待しているのではないでしょうか。ミラン戦では、ミランのカウンターの起点となっていたロフタスチークと何度となくやり合ってカウンターの発動を遅らせていました。おそらく、ロカテッリではロフタスチークのフィジカルに太刀打ちできなかったでしょう。年々フィジカルが強化される近代サッカーにおいて、トランジションで先手を取るには強力なフィジカルを備えた選手が必要です。特にカウンターを潰すなら高い位置から守備をするMFに。ユベントスにおいて適任はラビオしかいません。試合後、アッレグリは「ミランに何もさせなかった」とコメントしていましたが、守備陣の奮闘はもちろんのこと、ラビオのネガティブトランジション時の獅子奮迅の活躍によるところも大きいと思います。試合を支配するためには、相手にチャンスを与えないことも重要。カウンターは相手にとって大きなチャンスとなりうる機会です。そのカウンターを圧倒的なフィジカルで潰してしまうというラビオの仕事ぶりは賞賛に値するでしょう。

4バックも機能させて見せる

後半途中からキエーザとミリクを投入して守備時に4バックで守る形も披露。主に左サイドに前の選手が落ちる形の4-4-2で守っていました。攻撃時は前線に左からキエーザ、ユルディズ、ミリク、カンビアーゾ、ウェア(マッケニー)が並ぶ形でキエーザの攻撃性能を押し付けて左サイドからチャンスメイク。重心が高くなったことを利用してハイプレスも多用してより高い位置からプレスに出て行くように調整していました。ボールを運ばれると守備の枚数を1枚削っているためピンチになりかけることもありましたが、カンビアーゾやロカテッリが守備ラインに落ちて決定的な仕事をさせません。むしろミランがハイプレスを仕掛けてこなかったために押し込む時間が長く、攻撃的な選手による攻撃を全面に押し出して敵陣で時計を進めることができました。アタランタ相手にこのバランスを保つことができるのかは分かりませんが、少なくとも守備ラインに主力を欠き、前線の主力も下げたミラン相手には4バックで危なげなく攻め続けることができました。

キエーザを先発させなければいけないという呪縛から解き放たれ、ユルディズによって左サイドの配置を整理したユベントスは、テオ・エルナンデスのいないミラン相手に試合を支配することに成功しました。キエーザも途中からピッチに降り立ち、その攻撃性能で数々のチャンスを演出しました。ミランには枠内シュートを許さず、ユベントスに決定機も何度かあり、見事な試合運びだったと思います。ローマ、ボローニャ、そしてコッパイタリア決勝でアタランタと強敵が待っています。彼らとの試合がむしろ楽しみになる試合だったと思います。

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