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UCL GS 第2節 ユベントス vs ベンフィカ 〜崩壊したチーム

ベンフィカとの試合は1-2でベンフィカの勝利に終わりました。極めて妥当な結果で、あと2点以上入れられていても不思議はありませんでした。コンディション不良は明らかで、チームとして機能していたのは前半20分くらいまで。それ以降は個人の寄せ集めの様相を呈して、はっきり言えば試合にすらなっていませんでした。特に語るところもないので、良かったところと悪かったところを確認して、次節に備えましょう。

良かったところ

ボール保持からの前進からのチャンスメイクは前半20分くらいまではできていた。後方から、ベンフィカの選手の間を通す縦パスをワンタッチで落として後方から走り込んだ選手が前を向く。いわゆるレイオフと呼ばれるプレーを多用してボールを前進。ゴール方向に向かう姿勢が強く押し出されて迫力のある攻撃が繰り出されていた。左サイドでは。右サイドはクアドラードが足下でボールを欲しがるため、スペースへ流し込むパスがあまり見られずに深い位置まで侵入できなかった。ミリクの先制点に繋がったFKの位置を見ればわかる。右サイドではスペースを狙ったフリーランが少なく、攻撃に時間がかかるため、ベンフィカに守備に戻る時間を与えてしまった。左サイドではコスティッチがスペースへ走り込むフリーランを敢行してサイド深い位置までボールを運んでクロスを上げるところまで行っていた。ただ、マッケニーとクアドラードが間に合わず、ファーへのクロスが流れること複数回。ディフェンスの前を通すグラウンダーのクロスが素通りしていく今季お馴染みの光景も。

レイオフ使って前進するなら、そのメリットを最大限引き出したいところ。縦パスが入った瞬間、中盤の守備ラインを置き去りにできているのだから、置き去りにした相手が戻ってくる前に時間と手数をかけずにディフェンスラインに攻撃を仕掛けたい。そのためにも、レイオフで前を向いた選手より前に走り込む選手を増やしたい。若いミレッティやブラホビッチ、今季からユベントスに来たコスティッチ、パレデスらはこの辺りのリスクの掛け方は理解できていたのかもしれない。彼らが固まっていた左サイドではパレデスからの縦パスを起点にブラホビッチの落としを前向きに受けたミレッティに対してコスティッチとブラホビッチがスプリントをかけていた。ブラホビッチへのマークは厳しく、左のコスティッチを使うことが多かった。そこからのクロスは先ほど述べた通り。ミレッティがコスティッチとブラホビッチを囮に中に切れ込んでシュートを狙いに行っても面白かった。そこに右サイドからクアドラードやマッケニーがスプリントしてくる攻撃が見たかった。

ボールより前に走り込む選手がいない問題は、高い位置でボールを奪った時にも当てはまる。マッケニーが中盤でボールを引っ掛けても、選択肢がない。ブラホビッチとミリクのコンビネーションはあまり良くないように思えた。

悪かったところ

明確に言うと、チームとしての陣形をコンパクトに保てなかったこと。ミレッティのPK献上に繋がったシーンでは、前から当たりに行っているのに、センターアーク付近でベンフィカの選手がフリーになっていた。その選手にパレデスがつききれずにターンを許してボールを運ばれたところからPKに繋がっている。まあ、PK自体は、相手のベクトルを考えても、ミレッティは無理はしなくても良かった。ユベントスの守備を考えればコーナーキックを与えるのは特に問題はなかったわけで、若さが裏目に出たと言えるだろう。

問題はパレデスがセンターアーク付近にとどまっていたことだ。前線の選手が前からスプリントをかけてハイプレスに出ているのなら、後ろの選手も前に前に人を捕まえに行かなくてはいけない。パスで逃げるところを与えてしまっては、ハイプレスをかける意味がない。パレデスは絶対に離してはいけない選手を離してしまっていた。パレデスがマークについていれば、簡単にボールをペナルティエリアまで運ばれることはなかっただろう。最悪でも、ファウルで潰してしまわなければならない場面だったように思う。前がハイプレスに出ているのにステイしていた後方の選手たち。結局のところ、チームとして動けていなかった。そんな隙を見逃してくれるほど甘い相手ではなかったと言うことだ。

試合を見ていた限り、ユベントスがまともにチームとしてプレーできていたのはここまで。この時間帯以降は、中盤より前の選手は守備にも戻って来なくなり、チームとしてのバランスは崩壊した。連戦の疲労からなのか、得点を取らなければならないという焦燥感からなのか、何が原因でこうなったのかはわからない。ただ、ベンフィカの2点目のシーンを見てみれば、明らかに守備の枚数が足りない。試合終了直後、両膝に手をついて肩で息をするマッケニーの姿があった。マッケニーは必死に攻守に走り回っていただけに、切ないシーンだった。

なぜユベントスは崩壊したか?

アッレグリの解任の噂も強くなってきた。試合の内容を見れば、それもやむなしだろう。チームを掌握しきれていないと言われても仕方がない。ただ、各選手がコンディション不良から体が思うように動かなかった可能性はある。週に2試合のスケジュールを、この日のスタメンで乗り切ってきたのだ。疲労は溜まる一方で、コンディション調整は難しかっただろう。そうなると、監督にできることはない。スケジュールを開ける以外に打てる手はないのだから。

ボヌッチのラインコントロール

メンタルやコンディションについては、現場でないとわからない。ただ、なぜパレデスはハイプレスについていけなかったのかについて、昨季から抱いている仮説がある。

「ボヌッチがラインを上げられないのではないか」

昨季から、ボヌッチが裏を取られて失点するシーンが増えている。今年35歳を迎える年齢から来るフィジカルの衰えの影響は十分考えられるだろう。ハイプレスに伴ってハイラインを敷くとなると、ディフェンスラインの背後に広大なスペースを残すことになる。昨季はその裏のスペースを狙われて、失点を繰り返した。そのため、裏のスペースを消すために、ディフェンスラインはあらかじめ下げておきたい…。ディフェンスラインが低い位置にある以上、アンカーのパレデスも下がっておかなくてはディフェンスラインの前をプロテクトできない…。結果としてハイプレスに出た前線との距離が広がり、チームの陣形は間延びしてしまう。ベンフィカは間延びした中盤にパスを差し込んできた。パレデスはマークにつききれずにズルズルと下がることになった。ハイプレスに出ていた選手は戻って来れず、対応は後手に回って、ミレッティの判断ミスはあったものの、PKに繋がった。考えすぎだろうか?

ボヌッチを上げろ!

1番の改善策は、ボヌッチからガッティかルガーニが定位置を奪うだけのパフォーマンスを見せることだ。2人ともそれだけの素質はある。ルガーニはロングパスの精度はボヌッチには及ばないが、ショートパスによる前進には貢献できるはずだ。おそらく適性は左CBだろう。右の方がプレーしやすそうにしているブレーメルとの相性も良さそうだ。スペツィア戦ではガッティも悪くなかった。2人の奮起がユベントス上昇のキッカケになる。

ただ、ビッグマッチではボヌッチの経験も頼りになる。ベンフィカ戦で3バックを採用したのも、ブレーメルとダニーロにボヌッチをサポートさせる狙いがあったかもしれない。だとすると、ディフェンスラインから飛び出して人を捕まえに行く守備を、ダニーロやブレーメルではなく、ボヌッチに任せてみるのは面白い。ボヌッチが前に出て中盤でボールを受けようとする選手を捕まえにいけば、背後をカバーするのはダニーロとブレーメルになる。ダニーロとブレーメルは、まだまだスピードで相手FWと勝負できる。ハイラインを敷くことも可能になり、パレデスの位置も中盤の高い位置に設定できるだろう。陣形をコンパクトに保ち、前線からのハイプレスを機能させられる。

成長の痛み

攻撃においては、ボール保持からの攻撃が徐々に機能し始めている。が、それは新加入選手を中心としてだ。彼らは現代サッカーの最先端を学んで、ボール保持からの攻撃への理解度が高いのだろう。攻撃の場面では、長年ユベントスにいた選手たちが新加入の選手やミレッティら若い選手たちの足を引っ張ってしまっているような印象を受ける。

守備では、ユベントス伝統の堅い守備が崩壊しつつある。攻撃の裏返しで、新加入の選手やアカデミー出身の若手が守備への理解を深めていかなければならない。取るべきポジションをとり、相手が使えるスペースを消し、攻撃をスローダウンさせてじっくりと守る。試合の中ではそう言う時間も訪れるし、その時間帯は失点しないように我慢しなければならない。そのことを、ユベントスに長くいる選手たちはわかっているが、新加入の選手たちは理解できていないのかもしれない。古参の選手と新しい選手たち。現状では互いに足の引っ張り合いをしてしまっているようにも思えるが、互いが補い合える関係に発展していければいい。ボール保持からの攻撃に取り組んでいるのであれば、古参の選手たちが新しい選手たちから学んで攻撃の理論を理解して動けるようにならなければならない。一方で、ユベントスに加入した以上、ユベントスの文化である全員守備を体現できるようにならなければいけない。時代遅れと言われようが、最後の最後に拠り所となるのは自分たちが培ってきた文化だ。ユベントスであれば、堅い守備で失点しないこと。相互理解を深めて、チームとして動けるようにな羅なければいけない。その過程で、痛みを味わっているのかもしれない。

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