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コッパ・イタリアFINAL 〜結実のアッレグリ・スタイル

アタランタと対戦したコッパ・イタリア決勝戦はブラホビッチの先制点を守り切って1-0で競り勝ち見事3季ぶりのタイトルを獲得。第二期アッレグリ政権で初のタイトル獲得となりました。

アッレグリ・スタイル

ロカテッリが累積警告のため出場できず、代わりにニコルッシ・カビリアを先発させて5-3-2のベースフォーメーションで試合に入ったユベントス。攻撃のリズムと方向を決める選手がいないため、この試合はボール保持は最初からするつもりはなかったと思います。守備ラインでボールを保持しても中盤にボールを預けることはほとんどなく、ブラホビッチを狙って長いボールを送り込むプレーが多かったです。ブラホビッチが競り勝てなかったとしても、マッケニーやラビオ、キエーザをブラホビッチに近い位置に置いてセカンドボールを狙う。セカンドボールをアタランタに拾われたら、潔く下がって構えて守る。自陣ペナルティエリア付近のスペースを徹底的に管理してできるだけアタランタにスペースを与えない。

ロカテッリが使えない以上、コレしかなかったといったところかもしれません。

ニコルッシに攻撃のリズムや方向性を決定するだけの経験値や戦術眼をありませんし、守備の戦術理解も不足しているからです。ボールを保持しても効果的にボールを動かすことはできないだろうし、ハイプレスに出てアタランタが使えるスペースを広げてしまうとニコルッシがカバーし切れなくなる可能性が高いでしょう。例えば前半にデ・ケテラーレに左足でシュートを撃たれた場面。ニコルッシはポジションを調整してペナルティエリアアーク付近まで戻っておくべきでした。そのポジション調整を怠ったことでデ・ケテラーレがカットインシュートを撃つスペースを開けてしまいました。

また、セリエAにおけるアタランタとの対戦で広がったライン間をコープマイナースとパシャリッチに使われまくって2-2のドローだったことへの対策という面もあるでしょう。アッレグリは試合をコントロールすることを好む監督です。ロカテッリがいないならブラホビッチ、キエーザ、ユルディズを先発させて撃ち合いを挑むプランもあったかもしれません。ただ、タイトルがかかった試合であまりにリスクが大きいと判断したのでしょう。

ともかく、ユベントスは期せずして引いて守ってカウンターをベースとする、多方面から批判されるアッレグリ・スタイルで試合に臨むことになりました。

関脇が見せる横綱相撲

試合は開始3分でブラホビッチが抜け出して先制。ブレーメルの前線への長い縦パスが起点となって、マッケニー→カンビアーゾと繋いで守備時も前に出ようとしていたアタランタの裏をとることに成功しました。その後はキエーザも中盤まで下がって5-4-1で構えてアタランタにスペースを与えずロングカウンターから得点を狙います。ルックマンに手を焼き、2度ほど決定機を作られました。特にミランチュクのシュートは完璧に崩されましたが、枠を外れてくれました。ユベントスもカウンターからチャンスを作りますが決め切れず。ブレーメル、ダニーロ、ガッティを中心にペナルティエリアに近づけさせず、ペナルティエリアに入られたとしても跳ね返し、シュートをブロックして逃げ切りました。

アッレグリ・スタイルはいわば横綱相撲です。平成の大横綱・貴乃花関の相撲によく似ていると思います。

立ち合いは素直に立ち、相手を受け止め攻めを凌いで組み止める。そして地力の違いを見せつけるように四つに組んで寄り切りや上手投げで勝つ。

アッレグリのユベントスも、まずは守備から入って相手の攻撃を受け止めつつ、ボールを持ったら素早く前に展開してクオリティの高い選手の突破やコンビネーションで得点を重ねて勝ち切る。「受け」から入って試合を落ち着かせ、相手の隙を突いたり前線の選手のクオリティを押し付けて得点する。2014年から2019年まではこのスタイルで勝ち点を積み重ね、トーナメントでも勝ち上がっていました。

しかし、過渡期のユベントスに不正会計問題まで重なったことによって戦力は大幅ダウン。守備は整備できても、攻撃のクオリティは選手次第。アッレグリのスタイルを体現するだけのスカッドはありませんでした。今季前半は、コスティッチからのCBのゴールが最大の武器となり、アッレグリが整備した守備によって得点は少なくても失点しないため0-1で勝ち切って勝ち点を積み重ねていきました。

年明け、ハイプレスへ出る頻度を高め、積極的に前に出るスタイルを継続した時期もありました。攻守のバランスを調整して、攻撃寄りに舵を切ったのです。しかし、チャンスは作れど決め切れず、逆に相手にチャンスを与えて失点。勝ち点を積み重ねることができなくなりしました。この時期のユベントスは、結果は出ていなかったですが、ピッチで表現していることはとてもアグレッシブで面白い試合をしていたと思います。ただ、今度は「結果が出ていない」と批判されます。タイトルがかかったコッパ・イタリア決勝戦。

失点しなければ負けない。

失点しなければ、勝つチャンスを離すことはない。

とても横綱相撲と言えるような代物ではありませんでした。右サイドはルックマンに蹂躙され、クロス、カットインシュートを何度も撃ち込まれました。それでも、3バックが跳ね返しました。セカンドボールもラビオが身体を張ってキープして時間を作ってくれました。ブレーメルが最後の番人になれたことも大きかったと思います。スカマッカがいなかったことで、ブレーメルが吊り出されることはありませんでした。運も味方しました。それでもタイトルに手が届いたのは、CLでマドリーやドルトムントが証明しているように守備の力もバカにしてはいけないということです。アッレグリと選手たちの執念がタイトルを手繰り寄せたように思います。

ただし、現在のユベントスの戦力を考えると、アッレグリのスタイルで勝ち続けるのは難しいでしょう。セリエAを見ても、インテル、ミランには戦力で劣っています。ナポリ、ローマ、ラツィオあたりと同等程度でしょうか。相撲の番付に例えるならば、関脇あたりになるでしょう。ヨーロッパへと視野を広げてみると、スペインの2強、プレミア勢には遠く及ばないでしょう。ユベントスは、上位を追いかけるクラブだということです。だとすれば、尖ったスタイルで荒らしに行く方が向いているのではないでしょうか。横綱・貴乃花にガムシャラに突き押しを繰り出して攻めまくった朝青龍のように。

その意味で、アッレグリの解任は妥当だと思います。そして、我々も、結果に固執しすぎることなく、選手やチームの成長にフォーカスしていく必要があるでしょう。

アッレグリの第二期政権はユベントス再生への道のスタートでした。

関脇は、大関や横綱よりも格は下。「負けて当然」なのですから。

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