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セリエA 第35節 ユベントス vs ヴェネツィア 〜経験か、若さか


ヴェネツィアとの一戦は期待の若手・ミレッティのセットプレーからボヌッチがバースデーゴールを2発流し込んで2-1でユベントスが勝利。内容は褒められたものではありませんが、最低限の結果は出しました。感想を残しておきます。

ボールを持てないユベントス

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、ダニーロ、ボヌッチ、デリフト、ペッレグリーニ、ベルナルデスキ、ザカリア、ミレッティ、ラビオ、ブラホビッチ、モラタ。4-4-2をベースに、3-1-4-2のようなポジショニングでボール保持から攻撃に出た。

試合開始から15分程度までは後方で数的優位を確保してボールを保持してユベントスが押し込んで攻撃できた。その間にミレッティの素晴らしいフリーキックからボヌッチがバースデーゴールをマーク。他にもペッレグリーニがバー直撃のミドル、モラタやブラホビッチもいい形でペナルティエリアでボールを持てていた。しかし、前半15分過ぎくらいからヴェネツィアがインサイドハーフを上げてユベントスのビルドアップ隊にハイプレスをかけるようになった。ヴェネツィアのハイプレスによってユベントスのビルドアップ隊は時間を奪われ、ヴェネツィアの守備陣形を見てボールを出す時間的余裕を持てなかった。そのため、ヴェネツィアはユベントスの選手にマンマークについてボールが出てきたところでタイトにマークして潰していった。前半15分以降はユベントスはまともにボールを持つことができず、逆にヴェネツィアがボールを保持するようになっていった。

ヴェネツィアがハイプレスに出た時、裏へ走り出す選手がいれば、ボヌッチやデリフトのロングボールからハイプレスをひっくり返すことができたかもしれない。また、ロングボールのターゲットとなっていたブラホビッチの近くに選手を置くことができれば、ブラホビッチが競り合ったセカンドボールを拾って波状攻撃を仕掛けることができただろう。今季のユベントスは時間を奪いにくる勢いのあるハイプレスを苦手としている。ハイプレス対策の一つとして、ロングボールがある。ブラホビッチがいるとしても、ブラホビッチの近くにセカンドボールを拾うための選手や、ブラホビッチを追い越して裏に走る選手を用意したい。ブラホビッチへの警戒は相当なものだ。いくらブラホビッチのフィジカルが強いと言っても、フィジカル自慢のCBにファウル覚悟でタイトにマークされたり、ダブルチームでマークされたりすると苦しい。それでもボールを収めてしまうブラホビッチは恐ろしいが、ブラホビッチをサポートしたり、ブラホビッチを囮として裏へ抜ける選手がいれば、ブラホビッチ狙いのロングボールももっと効果的になるだろうと思う。

選手間の距離

味方との距離

この試合で気になったのは、選手間の距離だ。まずは味方との距離だ。攻撃時の味方同士の距離については前述した通り。ユベントスはブラホビッチと周りの選手との距離が離れすぎていてブラホビッチを狙ったロングボールがうまく機能しなかった。一方、ヴェネツィアはFWの選手へのサポートが速く、前線でボールを受けた選手の近くに別の選手が走り込んでいた。得点シーンがその象徴だろう。カウンターからも前線の選手が落としたボールをスプリントしてきた後方の選手が受け取ってドリブルで運んでいた。試合を通して前線の選手を孤立させることは少なかったように思う。

守備時の味方との距離もユベントスよりもヴェネツィアの方が優れていたように思う。ヴェネツィアはハイプレスに出ながらも、味方同士の距離、特に中盤とディフェンスラインの距離をコンパクトに保って守備をしていた。ブラホビッチやモラタがボールを受けようにも、ディフェンスラインから選手が飛び出してきてなかなかフリーになれなかった。一方のユベントスはディフェンスラインと中盤との距離が開いており、ライン間でヴェネツィアの選手にボールを持たれることも少なくなかった。FWの選手が下がってボールを受ける時にはライン間が広くなっていてマークにつききれないシーンもあった。

相手との距離

もう一つ考えさせられたのが、DFと相手のFWとの距離だ。ブラホビッチやモラタがボールを受けようとした時、ヴェネツィアのDFは必ずと言っていいほどタイトにマークについている。一方、ヴェネツィアのFWがライン間でボールを受けようとしている時、ボヌッチやデリフトはマークにつききれないことが何度かあった。タイトにマークにつけず、FWとの距離を離してしまっていた。それではチャンスを作られても仕方ないとしか言いようがない。ヴェネツィアがFWの周りに選手を走り込ませているのだから尚更だ。

しかし、今季のデリフトはディフェンスラインから飛び出してライン間でボールを受けようとする選手を潰し続けていたはず。中盤のラインより前に出てボールを奪うこともあった。なぜ、この試合ではヴェネツィアにライン間を使った攻撃を何度も許してしまったのか?

一つの仮説がある。ボヌッチの存在だ。

年明け以降、ボヌッチはケガで出場機会を減らしていた。その間はデリフトを軸にルガーニやキエッリーニがCBでコンビを組んでいた。その間はクリーンシートも多く、順調に勝ち点を伸ばしていた。簡単にライン間を使わせることもなかった。むしろ、ファーサイドへクロスが流れたところをSBの外から決められるシーンが多く、4バックでの守備の弱点を外から突かれるケースが多かった。これはダニーロのケガによる離脱の影響もあるだろう。クアドラードを上げ下げすることで一時的に5バック化する守備のためには、SBにもCBにも対応できるダニーロが不可欠だったからだ。

一方、ボヌッチとデリフトのセットがメインとなっていた前半戦では、裏を突かれた失点が多かった。特にクアドラードを下げた5バック化が本格的に導入される前のシーズン序盤と、ダニーロがケガをして以降の年末にかけての試合だ。これは、ボヌッチが出場し、かつ4バックを採用していた時期に当たる。今季、ボヌッチは裏への対応に苦戦している。今季35歳を迎える年齢からくるスピードの衰えもあるだろう。裏を狙われた時に対応が遅れて決定機につながるケースが多い。ダニーロがいれば、ボヌッチのカバーにスピードのあるダニーロとデリフトが走ってくれる。5バック化するならばボヌッチとダニーロ、デリフトの距離もさらに近くなる。しかし、ヴェネツィア戦は4バックを採用していた。一応、ベルナルデスキは低い位置まで下がって5バック化するような動きは見せていたが、守備はかなり怪しかった。ダニーロとしてはベルナルデスキのカバーも意識しておかなければならなかっただろう。その上、アッレグリは前日会見で「ダニーロには休息が必要だがプレーしてもらわなければならない」とコメントしていた。ダニーロのコンディションは良くなかった可能性がある。つまり、ボヌッチの裏を狙われることをケアするためには、ラインを下げて裏へのスペースを消しておく必要があったと考えられる。そのため、ディフェンスラインと中盤との距離が離れ、結果としてデリフトやボヌッチとライン間でボールを受けようとするヴェネツィアの選手との距離が離れてしまってマークに付けないという現象が起きたのではないか。

これはあくまで試合を見る限りの仮説に過ぎない。しかし、ボヌッチが裏への対応に苦しんでいることもまた事実である。いよいよユベントスのCBにも世代交代の時期がきたのではないだろうか。

経験か、若さか。

さて、個人的にはボヌッチの代わりにルガーニを起用してもいいと思っている。ビジャレアル戦では痛恨のPKを献上してしまったが、それこそいい経験になったはずだ。継続して出場機会を与えることでレベルアップしていけると思う。実際、一月、二月はルガーニを使い続けてそれなりの結果を出してきている。ラウタロやイブラヒモビッチ、ジェコ、ジルーらを相手に対等に渡り合ってきた。スピードやアジリティなどフィジカルの上ではルガーニはボヌッチよりも上だと思う。守備組織が整っている中での守備に関しては安定してきている。課題は被カウンターなど、守備組織が整っていない状況での守備対応だ。ただ、この状況の守備はボヌッチやキエッリーニでも難しい。まして、中盤の底で予防的に守備のポジションをとって防波堤となってくれるロカテッリがいない現在のチーム事情の中では、尚更難しい。ボヌッチの最大の武器であるロングボールはルガーニにはない。しかし、守備のことを考えればルガーニにチャンスを与えても良いのではないだろうか。

左サイドバックについても同じことが言える。ヴェネツィア戦はペッレグリーニが先発したが、後半早い時間にサンドロと交替している。今季、重要な試合ではペッレグリーニではなくサンドロが使われてきた。しかし、攻撃に関しては明らかにペッレグリーニの方が上だ。サンドロが交替で出てきてから、ユベントスの左サイドの攻撃は機能しなくなった。左サイドで高い位置をとる選手がいなくなり、ボールの動きが止まってしまう。守備のことを考えればサンドロに一日の長があるだろうが、ヴェネツィア戦に限定すれば、サンドロを起用したから左サイドの守備が安定したとは言えないだろう。ペッレグリーニも何度か突破を許していたが、サンドロも何度か突破を許してしまっていた。それならば、ペッレグリーニに経験を積ませて守備を鍛えていった方が将来のことを考えてもいいのではないか。

アッレグリはボヌッチやサンドロの経験を重視しているのかもしれない。しかし、経験を積むということは年齢を重ねるということであり、それはフィジカルの衰えにも繋がってくる。現在のフットボールでは、リバプールを筆頭にフィジカルを全面に押し出して、走れる若手を積極的に起用してくるチームも増えてきている。セリエAでも中位から下位のチームはその傾向が強い。スピードやアジリティなどのフィジカルで圧倒されて相手の動きについていけなければ、簡単に失点してしまう。今季のユベントスが中位から下位のチームに不覚をとっていることも偶然ではない。確かに、フィジカルの不利を先読みやポジショニングなど経験で補うこともできる。しかし、それならフィジカルや将来性のある若手に経験を積ませてフィジカルでも負けず経験を積んだ選手に育て上げる方が、今後長きに渡ってチームに貢献してくれるのではないかと思う。

ミレッティやアケ、デヴィンターを先発で起用するなどして、アッレグリも今までよりは若手を積極的に起用していると言える。あと3試合で勝ち点1を取れば4位以内は確定する。残り試合ではさらに積極的に若手に経験を積ませ、世代交代を推し進めてこれからのユベントス黄金時代の礎を築くチャンスとしてほしい。

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