見出し画像

セリエA 第14節 ヴェローナ vs ユベントス 〜適材適所を見つけるまでは…


ヴェローナとのアウェーゲームは苦しい展開ながらもキーンのゴールを守って1-0で勝利、5連勝としました。クリーンシートも5試合連続となり、調子は上向きなようですが、途中から出てきたディマリア、パレデスはフィットしきれていない様子もありました。簡単に試合を振り返っておきます。

戦術的な試合

ユベントスのスタメンは、ペリン、クアドラード、ブレーメル、ボヌッチ、ダニーロ、ファジョーリ、ロカテッリ、ラビオ、コスティッチ、ミリク、キーン。最近のユベントスのフォーメーションは3-5-2と表記されている。ただ、守備時には4-4-2がベースにあって、コスティッチが列を移動しているように思う。ボールを右サイドから自陣まで運ばれた時にコスティッチがディフェンスラインまで下がって一時的に5バックで守ることはある。しかし、常に5バックで守っているわけではないし、何よりコスティッチをできるだけ高い位置に留めておこうという意図も見える。4-4-2をベースにしながら、ボールの位置や相手の出方を見ながら選手のポジションを変化させていると解釈した方が整理しやすいような気はしている。

対するヴェローナは、3-4-2-1をベースにハイプレスを仕掛けてきた。ユベントスは、試合開始当初は、ボール保持時はブレーメル、ボヌッチ、ダニーロが3バックとして振る舞って後方でボールを回していた。ヴェローナの3トップがマンマークでつくことで数的同数でプレスをかけることができていたため、ユベントスはボールを前進させるのに苦労していた。クアドラードの不用意なボールロストも絡んで、ヴェローナにチャンスを作られる場面もあった。その後、ユベントスはクアドラードとダニーロが左右のSBとして振る舞い、後方で4対3の数的優位を作り出す。これでスペースと時間を得たボヌッチやダニーロからのロングボールでチャンスを作るが、ミリク、ロカテッリのミドルシュートは決まらない。アッレグリの試合後のコメントの通り、技術的にはうまくいかなかったかもしれない。ただ、戦術的な意味では試合中に相手の出方に対応して柔軟に戦術を変化させていたと言えるのではないだろうか。

前半途中からヴェローナ側がハイプレスを諦めたこともあってユベントスがボールを保持して押し込む展開になるが、5-4-1のブロックで人数をかけて守るヴェローナを崩しきれない。後方に人数をかけて守る相手に対して、ミリク、ラビオも下がってボールを受けようとしてしまっていた。相手の守備ブロックの前でボールを回していてもチャンスにはならない。ブロックの中を使う、ディフェンスラインの裏を狙うなど守備ブロックを動かす工夫が必要だろう。また、ゴールを奪うという意識が低かったようにも見える。90分間際にディマリアがボレーを放ったシーンがあった。そのボールに反応したのはボヌッチだけだった。シティやリバプール、バイエルンなどのチームならば、3人くらい飛び込んでいただろう。これまでの試合でもクアドラードからゴール前を掠めるハイスピードのボールが何度も供給されてきたが、そのボールに飛びこむ選手は皆無だった。ゴールへの執念、欲求が足りないように思ってしまう。

ただ、ライン間でボールを受けられるミレッティはベンチだったし、中の3枚に対してキーン1枚の数的不利はロナウドでもなかなか打開できない。最終的にはアシストをマークしたとはいえ、ラビオが前線に顔を出す機会が激減していたことが気になる。5連勝中、ラビオが積極的に前に出て行っていたことが攻撃の活性化につながっている。次節のラツィオとの上位直接対決は中盤からの飛び出しが得点へのカギになると思う。

選手交代後の試合展開

DAZNのリプレイ中で何が起こったかははっきりわからないが、おそらくロングボールのこぼれ球がミリクにおさまったのだろう。擬似的なカウンターのような状況になり、駆け上がったラビオから斜めに走り込んだキーンにボールが渡ってゴール。ユベントスが先制する。その後、ファジョーリ、ロカテッリ、ミリクに替えてミレッティ、パレデス、ディマリアを投入した。技術的に優れた選手たちがピッチに入って、ボールを保持して試合を終わらせるのかと思っていた。うまく押し込んでチャンスになりそうな場面もあった。しかし、パスが合わない、ドリブルのタッチが長いなどの技術的なミスを連発して不用意なボールロストを繰り返す。その上、トランジションのレベルも低く、カウンターやロングボールから決定機を作られる。途中出場のサンドロの漢気がなければ勝ち点を失っていただろう。

そもそもの問題として、ディマリアとパレデスのベストな起用方法が未だ見つかっていないことがある。ディマリアのテクニックに疑いの余地はないが、現状では守備で走ることは求められないレベルにある。レアルでBBCのために攻守に走り回っていた頃の姿はもう見ることはできないだろう。むしろ、ディマリアの運動量を他の誰かがカバーしなければならない。だが、ヴェローナ戦の終盤にそんな選手はいなかった。結果として、ユベントスは単純に守備では−1を背負っている状態だった。さらにパレデスは守備のポジショニングがうまくいっておらず、ディフェンスラインの前をポッカリと空けてしまうことが多い。パレデスに関してもその技術の高さに疑いの余地はない。ディフェンスラインの前をプロテクトするタスクがうまくこなせないだけだ。前に出てマークにつく守備はアグレッシブに行けている。アンカーポジションではなく、後ろにカバーがいる状態で前に出て守備ができるインサイドハーフとして起用すれば躍動できるのではないだろうか。

ただ、ここ数試合、ファジョーリが素晴らしいプレーを見せている。攻守に走り回り、攻撃時には前線まで顔を出し、守備でも素早くポジションを回復して守備組織に穴を作らない。何より、トランジションの意識が高い。特に被カウンター時の守備はチームを救っている。そして、ボールを走らせることができる技術を持っていて、ロカテッリとポジションを入れ替えることができる。ファジョーリがアンカーに下がって、ロカテッリが前線に上がる。そのポジションチェンジからロカテッリがチャンスメイクに絡むシーンも増えており、ファジョーリの価値はさらに高まっている。パレデスはファジョーリとポジションを争うことになるだろう。もしくは、アッレグリは守備を指導してアンカーとして開花させるつもりなのかもしれない。ロカテッリは攻撃時のクオリティ、試合を読む力、何より巧みなポジショニングを活かした守備によって本当に替えのきかない存在になっている。ロカテッリが不在だった序盤に落とした試合の数がそれを証明している。ロカテッリ不在時のダメージをできる限り軽減するためにも、ロカテッリを休ませるためにもアンカーポジションを任せられる選手の発掘、育成は急務だ。アッレグリはパレデスをその第一候補と見ているのかもしれない。ここに来てサンドロがCBとしての価値を高めつつある。守備の指導はアッレグリの専売特許だ。交替でプレータイムを確保しつつ、アンカーとしての守備を植え付けてロカテッリとのターンオーバーを敷く。アッレグリの頭にはそんなプランがあるのかもしれない。

サンドロのためにも…

サンドロのレッドカードは覚悟の上だった。その前でパレデスとボヌッチがサンドして潰しておけばこんなことにはならなかった。勝ち点3のためにペナルティエリアに入る前に故意にファウルをした。故意のファウルもレッドカードも褒められたものではないが、チームのためのプレーと解釈することもできる。昨季、不調に喘いでいたサンドロがチームのために犠牲になった。ラツィオ戦、サンドロの不在が響いてしまう可能性は十分にある。尻拭いをしてもらったボヌッチ、パレデスはサンドロの漢気に応えてもらいたい。






………ボヌッチには無理かな。

この記事が参加している募集

#サッカーを語ろう

10,969件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?