見出し画像

フラム分析 その3 総括

20-21シーズンのフラムについての覚書第三弾です。今回は4局面のうち、攻守のトランジションについて書いておきます。そして、20-21シーズン前半戦のフラムを総括しておきます。

ポジティブトランジション

ボールを奪った位置が低ければ、近い位置の選手間でパス交換をしてポゼッションを安定させようとする。以前書いたように、低い位置からでもボールを運ぶノウハウは持っているチームだからだ。そして、左サイドからはロビンソンやルックマンのドリブルでボールを運ぶ。右サイドでは、ロフタスチーク、デコードバ・リード、アンギッサ、オラ・アイナで作るひし形の陣形をベースにしたパスワークで前進を図る。どちらのサイドも素早くポゼッションを安定させたら動き始め、相手が守備陣形を整える前にボールの前進を図る。ただし、相手のプレスが速く、ボールロストの危険性が高ければ前線へのロングボールを選択する。

ポジティブトランジションのキーマンは両WBである。カウンターは相手SBの裏のスペースを狙うのが定石だ。そのスペースに飛び込むのがデコードバ・リードとロビンソンである。彼らの脚力とサイドの上下動を繰り返すスタミナは特筆に値する。2人がサイドを駆け上がることで、カウンターの際に中央を閉められたとしてもサイドに展開してサイド深い位置までボールを運ぶことができる。逆に、この2人を欠いた試合では、ポジティブトランジションの際に両WBが高い位置まで上がれずにカウンターがストップしてしまうケースが多い。デコードバ・リードが他のポジションを任されるケースもあることから、特にテテには怖がらずに高い位置に出て行くようになってほしい。

最後に、ルックマンについて。ルックマンは止まって足下でボールを欲しがることが多い。そこからのドリブルがとても魅力的な選手だが、積極的に前に走ってスペースでボールを受けたり、デコイランで味方にスペースを作ることができるようになってほしい。格段に怖い選手になると期待している。


ネガティブトランジション

フラムは5レーン理論を採用した攻撃を展開しているため、ある程度安定してボールをゾーン1まで運ぶことができている。そのため、ゾーン1でのボールロストでは、ボール付近にフラムの選手が複数ポジションをとっている状況が出来上がっている。ボールロスト時は、まずはボールに近い選手がボールにアタックする。さらに、ハリソン・リード(またはレミナ)と攻撃サイドのCBは攻撃のサポートとともに被カウンターに備えて高いポジションをとっており、ボールロストと同時に分厚いプレスをかけることが可能になっている。

また、ビルドアップが苦しい時はカバレロやロフタスチークを狙ったロングボールも選択肢として持っている。特に、ロフタスチークのフィジカルは大きな武器となっており、ボールをキープできなかったとしても相手に十分な体制でクリアをさせず、セカンドボールの取り合いを誘発できる。ボールが空中にある間に中盤が押し上げ、セカンドボールに襲いかかる。

攻撃中のボールロスト時やロングボールからのセカンドボール合戦に素早くボールにプレッシャーをかけることができており、結果として高い位置でのボール奪回や相手にロングボールを選択させて回収することができている。

これらのプレスが外されたときにも、後方に残ったCBやCH(主にハリソン・リードかレミナ)がボール保持者に圧力をかけつつ攻撃を遅らせ、チームの帰陣を待つこともできている。ネガティブトランジションで積極的にプレスに行く割に、意外とカウンターからの失点は少ない。


総括

ビルドアップ、ネガティブトランジション、ポジティブトランジションについては十分なクオリティを備えていると思う。リバプール戦ではトランジションゲームでリバプールに対して優位に立っていた。最近のゲームでも、ビルドアップの場面では激しいプレスもかいくぐって前線までボールを運べている。

課題があるのは攻撃の最後のフェーズと、引いて構えた時の守備だ。

裏抜けを狙う選手が少ないことから相手のディフェンスラインを動かすことができず、中々効果的に決定機が作れていない。シュートも相手DFを前に置いた状況からのものが多く、得点に繋がりにくい。カバレロは万能タイプだから、裏抜けもプレー選択のうちに入っているだろう。ミトロビッチとカバレロのセットを見てみたい。また、ルックマンは積極的にドリブルで仕掛ける、本当に楽しみな選手だ。パーカー監督には裏抜けなど「使われる」ことを指導して、さらに上のレベルに導いてあげてほしい。

守備の整備は本当に急務だ。マンチェスターU戦、WBA戦の失点はフラム側の問題だ。防げた失点と言っていい。守備陣形を確定させ、選手に守備の時にはどのポジションに戻り、どの位置の相手をマークして、どのスペースを封鎖すべきなのかという指標を示してほしい。明確な守備戦術を授ければ、選手は守備の局面でも自分のすべきことを判断しやすいだろう。アレオラのセーブ力は信頼を置ける。より強固な守備を構築できれば、負けないことで勝ち点は増えて行くはずだ。

「カンピオナートは守備で勝つもの」とはアッレグリの言葉だ。プレミアリーグはまだ折り返したばかり。不用意な失点を減らし、勝ち点を1ずつでも積み重ねて行くことで、残留も見えてくるだろう。残留を目指す戦いは険しい道のりだが、越えられないものではないはずだ。後半戦もフラムに注目していきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?