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フラム分析 その2

前回からフラムについて4局面に分けて書いています。今回はフラムの守備フェーズについて書いておきます。

フラムの守備

フラムの守備は5-4-1もしくは5-3-2で守備ブロックを組む構造になっている。ただし、人海戦術に近い守備になっており、戦術的に洗練されたものではないと思う。例えば、WBA戦の1失点目について見ると、デコードバ・リード、ロフタスチーク、アンギッサがそれぞれ独自の判断で動いているとしか思えず、組織的に守ることができていなかったと言える。

この場面では、デコードバ・リードの裏を簡単に取られたことからサイドの深い位置までボールを運ばれている。この時、デコードバ・リードが中盤右サイドまで上がってプレスをかけに行っている。それにもかかわらず、ディフェンスラインに残った4枚のDFは右にスライドしていない。そのため、デコードバ・リードが中盤まで上がったことで開いたスペースを埋められず、その開いたスペースを使われて自陣右サイド深くまで侵入を許してしまった。その後、オラ・アイナがサイドに出てボール保持者に対応し、その間にデコードバ・リードも戻ってきて一度ボールを下げさせることに成功している。しかし、その後の守備も不味かった。フラムから見て中盤右サイドでバックパスを引き取った選手に対してアンギッサとロフタスチークどちらがマークにつくのかはっきりせず、まるでお見合いするような状態になり、結局フリーでクロスを上げられてしまい、クリアミスも絡んで失点に繋がってしまった。

フラムは守備ブロックを敷いて構える時、中盤の構成が決まってないような印象を受けることがある。上記の失点シーンでは、ロフタスチークは5-4-1の「4」の右サイドを担当していたのか、5-3-2の「2」の一角を担当していたのか、定かではない。5-4-1で守っているなら、バックパスの後のボール保持者にはロフタスチークがタイトにマークにつかなければならない。5-3-2で守っているなら、「3」がスライドしてアンギッサがマークにつくべきだっただろう。しかし、現実にはロフタスチークもアンギッサもボール保持者のマークについていない。どのような陣形で守備ブロックを組み、各選手にどのようなタスクを任せてゾーン2〜3を守るのかが整理されていないのではないか。

また、中盤の選手によるプレスが甘く、ボール保持者に時間とスペースを与えてしまっていることが多い。そうであるなら、中盤の守備ラインを形成して、なおかつ互いの距離を縮めて選手間のパスコースを消すようにポジショニングを調整しなければならない。しかし、残念ながらそれもできておらず、中盤の守備ラインの前でボールを持つ相手選手がフリーの状態で、かつディフェンスラインと中盤の間のスペースにボールを入れるためのパスコースがガラ空きの状態になってしまっていることが少なくない。

さらに、ゾーン3まで押し込まれた時に中盤の選手が下がりすぎてしまってディフェンスラインの前でボールを持つ選手へのプレスが遅いもしくは弱くなってしまっていること、あるいは中盤の選手が棒立ちになってしまってディフェンスラインとの間でプレスバックが効かないことは致命的な弱点である。ディフェンスラインをペナルティエリア前後に設定してブロックを構えて守備をしている際、ディフェンスラインの前でフリーの相手選手がボールを持っているシーンを多く見かける。ディフェンスラインの前でボールを持つ選手をフリーにしてしまうと、ミドルシュート、スルーパス、ワンツー、ドリブルなど簡単にチャンスを作られてしまう。実際に、マンチェスター・ユナイテッドにはこの弱点を突かれて逆転されてしまった。5バックで守備をしているなら、ディフェンスラインから1人飛び出してプレスをかけるか、中盤からプレスバックしてフリーの選手を潰しにかからないといけない。

これらの問題は、5-4-1で守るのか、5-3-2で守るのかがはっきりしていないことにも関わっている。パーカー監督は守備の陣形を明確に定め、守備の時にはどの位置にポジションを取ればいいのか、どのようなタスクを任せているのかを選手に示さなければならない。いずれにせよ、ゾーン2〜3でのミドル〜ロープレスの際の守備陣形と選手個々のタスクの整理は急務である。


次に書く予定のトランジションはまずまずなので、守備フェーズにおいて堅く守ることができるようになれば勝ち点は拾えると思う。アレオラがビッグセーブを連発してくれているが、そればかりではやはり心許ない。ブロック守備の練度を上げていきたい。

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