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EL SEMIFINAL ユベントス vs セビージャ 〜フェデリコ・ガッティ!!

セビージャとのEL準決勝ファーストレグは後半アディショナルタイムにガッティの劇的ゴールでドロー決着。決勝進出はセビリアでのアウェー戦に勝たなければなりません。ただ、勝てば決勝進出、負ければ敗退ととてもわかりやすい状況はプラスかもしれません。コッパイタリアの準決勝のような負けに行ったかのような試合は見たくはないのですが、そうなりかねないのが我らが指揮官アッレグリ。この試合は悪くなかっただけに気を揉む1週間になりそうです。

アッレグリプラン

ユベントスは攻撃時は4-3-3、守備時はコスティッチを上げ下げして4-4-2と5-3-2を使い分ける可変システムを採用してきました。4-2-3-1を軸に戦うセビージャに対して、4バック+ロカテッリで後方で数的優位を確保してビルドアップを行いました。ディマリアも下がってきて積極的にボールを受けとり、ボール保持に加勢。効果は抜群で、セビージャ陣内に押し込んで試合を進めることができました。あとはセビージャの守備陣を攻略するだけだったのですが…。

問題だったのはブラホビッチに全くボールが収まらなかったことです。ディマリアがビルドアップのために下がっていく分、ブラホビッチには左サイドからアクーニャもマークについて潰されること潰されること。パプ・ゴメスに対するロカテッリのチャージでイエローが出るなら、前半のブラホビッチへのアタックもファウルをとっても良さそうなものですが、ノーファウルでボールロストを繰り返したため、ブラホビッチに直接ボールを渡すルートが使えなくなりました。そのため、ショートパスによる前進がメインとなり、後方でビルドアップに絡む人数が増え、前線の人数が足らない現象が起きました。ビルドアップでボールを保持して時間を作り、ディマリアなりラビオ、ミレッティがブラホビッチをサポートできるポジションを取れれば良かったのですが、ダイレクトな攻撃を志向している分無理な攻撃が多かった印象です。だからと言って、後ろからの上がりをじっくりと待っていればセビージャも守備組織を整えてしまいます。セビージャが守ってロングカウンターをメインの狙いとしていたことも考えると、早めに攻撃を仕掛けたユベントスの選択は間違いではないでしょう。実際、ボールを保持して後方からサンドロが上がった時にボールを奪われてカウンターから失点していますし…。ただ、コスティッチを使っているなら、時間をかけてでもペナルティエリアの密度を高めておいてハイクロスを撃ち込む攻撃ルートは狙いの一つとして持っておきたかったところです。ブラホビッチにラビオ、逆サイドからクアドラードもペナルティエリアに突撃する攻撃は4バックのセビージャには効果的だったはずです。

総じてアッレグリが用意してきたプランはセビージャに対して効果的だったと思います。ただ、セビージャも守ってカウンターのプランを第一に試合に入ってきていたため、失点の場面やそれ以降の前半はうまく噛み合ってしまったと言ったところでしょう。まあ、左サイドはコスティッチが、右サイドはクアドラードが幅をとるタスクを担っていたのだから、わざわざバランスを崩してまでサンドロがペナルティエリアまで攻撃参加する必要性はなかったでしょう。被カウンター対応と攻撃の人数確保のバランスを失ったタイミングでセビージャの鋭いカウンターが突き刺さってしまいました。ボール保持プランで失点する時はこんなものでしょう。

ハーフタイムの修正

用意してきたプランはそれなりに機能していたもののビハインドを背負ったユベントス。アッレグリはさらに攻勢を強めつつセビージャのストロングポイントを消しにかかります。イリング・ジュニオールとキエーザの投入です。スピードとドリブルに特徴のある2人をミレッティとコスティッチに替えて4-4-2へと変化させました。4バック+ロカテッリによるビルドアップを継続しつつ、サイド攻撃に特化して押し込み、セビージャのサイドを守備に走らせて攻撃を機能不全に追い込む。カウンターの起点になりうる選手をエン・ネシリだけに限定して被カウンター時のリスクを減らすという攻撃的な手を打ってきました。これでさらにセビージャを押し込み、カウンターに関してもエンネシリ一本に絞れるためCBが一気呵成に潰しに出られるようになり、狙われていた左サイドにもカバーリングが間に合うようになりました。特にガッティが入ってから左CBに回ったダニーロのカバーリングは恐ろしく速く、左サイドを狙ったボールを悉くカットしていました。

アッレグリが狙った通りに試合は動いていたと思います。計算違いだったのは、キエーザがアクーニャを全く抜けなかったことでしょう。左サイドはイリング・ジュニオールがヘスス・ナバスに対して優位に立っており、モンティエルも下がってヘルプに入っていました。しかし、右サイドに配置されたキエーザはアクーニャのフィジカルに手を焼き、なかなかチャンスを作れませんでした。アッレグリはキエーザとイリング・ジュニオールで質的優位を取ってサイドから殴りにかかる算段をしていたはずですが、ここがうまくいきませんでした。途中からキエーザを左に持ってきますが、こちらもヘスス・ナバスが時間を稼いでダブルチームに持って行かれてサイドを封鎖されてしまいます。万全の状態のキエーザなら、もっといい勝負ができたでしょうか?

ポグバとガッティ

そして、ボヌッチが交代を要求したところで切り札のポグバとボヌッチの代役としてガッティが投入されます。ポグバのコンディションは上がっており、この試合のプレーは今季1番でした。半身の姿勢で受ける懐の深いキープと柔らかいボールタッチで密着マークをモノともせずにボールを収めて時間を作っていました。さらにはボールを頭に乗せて運ぶ遊び心も見せ、スタジアムの空気を1人で変えて見せました。ポジショニングも絶妙で、セビージャの選手から一定の距離をとってスペースに入り込み、守備を引き付けて周りの味方にスペースと時間を与えていました。ポグバの投入で攻めるユベントス、守るセビージャという構図が明確になり、ハーフコートゲームを展開。しかし、守備に徹したセビージャを崩すまでには至らず、時間は過ぎて行きました。クアドラードのクロスにラビオが飛び込んだシーンはバドのスパイクは間違いなくラビオの足に当たっています。少なくともVARの介入はあってもいいのではとは思います。セリエAの笛も含めて、財務処理の不正が発覚した今季のユーベに対しては何をしてもいいような空気でもあるのでしょうか?

そして、コーナーキックから劇的な同点ゴール。下部リーグからここまで辿り着いたガッティがまたもや大仕事をやってのけました。ガッティとの契約時にアッレグリが「セリエB最高のセンターバックと契約できたことをとても嬉しく思う」と言っていたことが思い出されます。荒削りながらも守備での貢献は大きく、不足するCBの数を補って余りある活躍を見せてくれています。7部リーグから駆け上がり、プレミアリーグを制覇したバーディーと重なって見えるのは私だけでしょうか。バーディーと違ってガッティは未だタイトルを獲得してはいません。ただ、イタリアの名門を助ける結果を残し、「FINO ALLA FINE 」というユベントスの信条を体現していることは間違いありません。ガッティが繋いだ希望を消してはいけない。セカンドレグはユベントスにとって今季最も重要な試合となります。

セカンドレグへ向けて

ハッキリ言いますが、この試合で迂闊なパスミスを心配せずにプレーを見られたのはポグバとロカテッリくらいでした。その他の選手は危ないパスミスを何度かやらかしており、セビージャにカウンターの機会を与えていました。正直、ユベントスの選手の技術的なクオリティは決して高いとは言えません。ユベントスは、本来であればフィジカルで戦術的なチームだと思っています。ボール保持よりも堅い守備をベースにダイレクトな攻撃で一気に相手ゴールに迫るプレーが向いているでしょう。アッレグリがボール保持をベースとした戦術を組んできたり、後半からさらに攻撃に出ることでセビージャの攻撃を機能不全に追い込むといったかなり攻撃的な采配を振るったにも関わらず、土壇場でドローに持ち込むゴールを決めたのがボヌッチの交代要求で出てきたガッティということが象徴しているように思います。

そして、次戦はアウェーです。セビージャもホームではボール保持を目指してくるでしょう。むしろ、守備から試合に入るユベントスが得意とする展開になるかもしれません。そうなると、敵陣に広がるスペースを攻略する走力を備えたストライカーがカギとなるでしょう。ズバリ、ブラホビッチとキエーザです。ユベントスの未来を象徴する2人に決勝進出がかかっている。2人がゴールを決めれば勝つし、決めなければ負ける。そんな展開になるのではないでしょうか。

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