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セリエA 第11節 フィオレンティーナ vs ユベントス 〜ミレッティ、覚醒の予感


フィオレンティーナとのアウェイゲームはミレッティの先制点を守り切って0-1で勝利。勝ち点3を上積みし、首位インテルを追走しています。フィオレンティーナに押し込まれた展開になりました。ただ、おそらくはボールを持たせることを選んだアッレグリにとって特に大きな問題はない試合だったと思います。

バスストップ

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、マッケニー、ガッティ、ブレーメル、ルガーニ、コスティッチ、ミレッティ、ロカテッリ、ラビオ、キーン、キエーザ。定番の5-3-2で、かつ両翼にマッケニーとコスティッチという直線型のプレイヤーを配置し、守備から縦に早い攻撃を狙います。ボールを保持することも視野には入れていたでしょうが、キエーザのスピードを活かすなら敵陣にスペースがある方が都合がいい。守備から試合に入って、縦に速い攻撃を狙うプランだったと思います。そしてフィオレンティーナの攻撃を受け止めつつ、ブレーメルの縦パスからラビオ→マッケニー→キーン→ラビオとワンタッチのパスを繋いでフィオレンティーナのハイプレスをひっくり返しました。最後はコスティッチのクロスにニアサイドに飛び込んだミレッティが先制点をゲット。無理して前に出る必要もなくなり、5-3-2ブロックを敷いて自陣に構えるようになりました。

それともう一つ。ユベントスが押し込まれることになったのは、システム的な噛み合わせが悪かったこともあります。ユベントスの5-3-2に対してフィオレンティーナは4-2-3-1をベースとしていました。マッケニーとコスティッチはフィオレンティーナのウイングとマッチアップするため、低い位置から守備をスタートさせることになります。3センターハーフにはフィオレンティーナの中盤3人がマッチアップ。フィオレンティーナの4バックに対して2トップでプレスをかけるのは不可能なため、ユベントスはハイプレスに出られず自陣に下がるしかありませんでした。フィオレンティーナのベルトランとバラクに対して3バックとロカテッリで守っているため後方では人数が余っていたユベントス。何とかハイプレスに出ようと時間帯によってはルガーニが敵陣ペナルティアークまでマークに出ることもありました。それでも前線の恒常的な数的不利は変わらず、ハイプレスがハマることはほとんどありませんでした。

引くしかなかったユベントスですが、1点リードしていることもあり、ペナルティエリアに8人を並べ、いわゆる「バスを停める」守備でフィオレンティーナの攻撃を跳ね返し続けます。ラビオ、ロカテッリ、ミレッティがフィルター役として中を徹底的に閉めます。ガッティとルガーニも中を使われそうな時には素早くヘルプに出てペナルティエリアへの侵入を許しません。フィオレンティーナのボールをサイドへと誘導して、ガッティ、ルガーニ、ブレーメルでクロスを跳ね返す。ミドルシュートはギリギリまで寄せてプレッシャーをかけてシュチェスニーと連携してストップ。この日のフィオレンティーナはミドルの精度を欠いており、ミドルシュートで危ない場面はありませんでした。唯一危なかったのは、23分。ペナルティエリア内でニコ・ゴンザレスのカットインからシュートを打たれた場面です。コスティッチはニコ・ゴンザレスとのマッチアップに苦戦していました。ペナルティエリア内でカバーもない状態を作られたのは守備のミスだったと言えるでしょう。

求められる継続性

バスを停める戦術には批判があります。ただ、後述するように現在のユベントスのスカッドでは、フィオレンティーナの高速ハイプレスに対してボール保持で対抗するのは難しいように思います。ボール保持を狙ってハイプレスに引っかかってショートカウンターからチャンスを作られる確率は高いでしょう。ボールの扱いに長け、戦術眼にも優れる選手はロカテッリくらい。フィオレンティーナの時間とスペースを奪いにくるプレスに対して落ち着いてプレーできる選手はほとんどいません。ラビオやキーンはフィジカルで対抗できますが、ボールを捌く前に囲まれてしまってボールを前に運ぶことはできません。

しかし、ミレッティの得点の場面はフィオレンティーナのハイプレスを素晴らしいパスワークでひっくり返してゴールを決めています。あのプレーを再現性高く行えるようになること。これこそがこれからユベントスが取り組むべき方向性でしょう。後方からの縦パスが入るタイミングでワンタッチのパスを回せる距離にポジションをとること。実際にワンタッチでパスを回すための体の向き・角度を作ること。プレスを剥がすことを予測して、味方を信じて前に走ること。ほんの少しの意識改革とプレーの予測精度の向上です。

残念ながら、ミレッティのゴールは偶発的なものだと思います。ワンタッチのパスを繋いでプレスを剥がしてボールを前に進める場面は他に見られませんでした。ラビオが出したスペースへのパスに対してパリージが判断をミスしてくれたこともラッキーでした。クロスに対してニアサイドに走り込んだのもこれっきり。クロスに対してファーサイドで待つばかりのフォワードしかいないため、クロスが届く前に相手に触られてしまうことがほとんどです。もしかしたら、コスティッチのクロスにニアサイドに走り込んで来たのもミレッティが初めてではないでしょうか。いや、そんなことはないはずですが、そう思ってしまうくらいニアサイドに走り込む選手がいません。クロスに対してニアサイドに1人飛び込ませることも忘れてはいけないはずです。

覚醒の予感

さて、ミレッティです。ついにセリエA初ゴールを決めました。昨季は決定機が来ても肝心なところで枠外やコースが甘いシュートを撃ってしまっていました。ですが、ミレッティの実力は本物だと思います。ミレッティはディマリアと感性が合っていました。昨季はディマリアがパスが出せずにボールを持ち続けることが多々ありました。しかし、ミレッティとはワンタッチ、ツータッチでパス交換をしてリズムよくプレーしていました。それも敵陣ペナルティエリアで、です。相手守備陣が待ち構えているスペースがほとんどない中でディマリアとパス交換をしてしまう技術、感性、プレーそのものを楽しむ即興性。スペースを突く走り込みもユベントスの攻撃の貴重なオプションとなっています。ポグバがドーピング違反、ファジョーリが違法賭博で出場できず、ウェアの怪我でマッケニーがウイングバックをしなければいけない中、スタメンクラスのMFはロカテッリ、ラビオ、ミレッティしかいません。ラビオがバランスを見てペナルティエリアへの飛び込みを控えているような状況で、ミレッティの飛び込みはユベントスの攻撃の鍵を握っているように思います。何より、ミレッティを評価しているのは守備です。上記の通り、攻撃面で特徴のある選手ですが、決して守備をサボることはありません。相手のカウンターの時にはスプリントで戻ってきますし、ブロックを敷いて構える時のポジションも理解して動けるようになっています。守備にも手を抜かないユベントスのDNAを受け継ぐ攻撃的な選手です。現在のユベントスの中盤のスカッドを考えると、スタメンで出場する試合は多くなるはずです。今回のゴールをきっかけに得点を増やし始めるかもしれません。ミレッティの今後の成長も楽しみです。

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