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セリエA 第15節 ユベントス vs ナポリ 〜守備で試合を支配する

ナポリとのビッグマッチはまたまた殊勲のガッティのゴールを守り切って1-0で勝利。互いに決定機があり、もう少しスコアが動いても良かったゲームでしたが、ユベントスがナポリを上回っていたように思います。

ナポリ不調の要因

今季のナポリはスパレッティの退任が大きく響いているようで15節にしてすでに5敗。絶好調だった昨季と比べてしまうと明らかに見劣りするシーズンを過ごしています。今季のナポリを追いかけているわけではないので、ユベントス戦に限って言えば、昨季のナポリとの大きな変化は以下の2点かと思います。

①左SBにナタンを置いており、マリオ・ルイに比べて攻撃参加の頻度が少ない。

②ネガティブ・トランジションの際のスピードが遅く、カウンターを未然に阻止できていない。

ナタンという選手は初めて見ました。キャラクターはどちらかというとCB寄りの選手なのかなという印象を受けました。上背があり、フィジカルが強そうなイメージです。クバラツヘリアとうまく連携が取れておらず、攻撃参加も稀でした。昨季はクバラツヘリアがボールを持ったらマリオ・ルイがボールを追い越して走り込むことでクバラツヘリアにパスの選択肢を与えていました。守備側はマリオ・ルイの走り込みもケアしなければいけなくなるので、クバラツヘリアのドリブル突破の威力が跳ね上がっていました。しかし、今回の試合ではナタンの攻め上がりがほとんどなかったことからクバラツヘリアのドリブル突破に集中して守備をすることができました。カンビアーゾが粘り強く対応したことで、マッケニーやガッティがダブルチームでつく場面も増え、クバラツヘリアにほとんどチャンスメイクさせませんでした。クバラツヘリアをどうやって抑え込むかは昨季からナポリと対戦するチームの大きな課題となっていました。しかし、クバラツヘリアに対するサポートがなく、ドリブル突破に絞って対応することができれば難易度は下がります。クバラツヘリアへのサポートができないことで、ナポリは自らストロングポイントを1つ手放しているように思いました。どうも、マリオ・ルイは11月以降怪我のため出場できていないようです。このタイミングで試合が組まれていたことは、ナポリからしたら不運、ユベントスからしたら幸運でした。ナポリは、1月に左SBの補強することを考えてみてもいいと思います。

そして、より深刻だと思うのがネガティブ・トランジションの遅さです。今回の試合では、ユベントスは効果的にカウンターを発動することができました。もちろん、ユベントスのカウンターへの意識が格段に上がっており、多くの選手が駆け上がって攻撃に厚みをもたらしています。昨季のカウンターは1人にお任せ状態に比べれば格段に進歩しているので、ユベントスのカウンターの破壊力を褒めるべきなのかもしれません。しかし、それでもナポリのトランジションには不安を感じます。特に中盤から前の選手のトランジションはもう少し改善できると思います。具体的には、ボールロストした際のボールへのプレッシャーとその周辺の選手へのマークのスピードを上げることです。今回の試合では、ユベントスがナポリからボールを奪った後、ボールホルダーとなった選手は比較的長くボールを持つことができていました。つまり、ナポリからのプレッシャーはそこまで強くはなかったということです。プレス耐性が強いとは言えないブレーメルやダニーロもルックアップして状況を確認するだけの余裕を持てていました。ロカテッリやラビオに至ってはナポリの選手がマークにつく前にプレー選択を終えている様子で、時間的な余裕を持ってプレスを外していました。これは監督交代の影響なのだろうと思います。スパレッティはネガティブ・トランジションについては徹底的にトレーニングで詰めていたはずです。ポゼッションで相手を押し込み、両SBをペナルティエリアへ突撃させるという超攻撃的なサッカーを目指した以上、被カウンターのリスクは他のチームに比べて甚大です。後方にはCB2人しかいないのですから。昨季のナポリは4-2、3-1など点の取り合いのゲームを見せてきました。だからこそネガティブ・トランジションのスピードと意識を高めて、ボールロスト時に素早くボールに蓋をする必要がありました。その指導はやはり監督によるところが大きいのでしょう。あのクロップですら、激しいカウンタープレスを仕掛けるチームを継続することはできないくらいです。ルディ・ガルシア監督やマッツァーリ監督はスパレッティ監督ほど、詰めて指導できていなかったのかもしれません。

①についてはマリオ・ルイの復帰か、1月の補強である程度改善できるでしょう。②については選手の意識の問題ですので、より深刻です。新たに就任したマッツァーリ監督の手腕にかかっていると言えるかもしれません。

守備で試合を支配する

さて、翻ってユベントスについてです。ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、カンビアーゾ、ガッティ、ブレーメル、ダニーロ、コスティッチ、マッケニー、ロカテッリ、ラビオ、キエーザ、ブラホビッチ。5-3-2をベースにハイプレスとブロック守備を使い分けて守備でナポリを押さえ込もうとしてきました。

ナポリは4-3-3がベースとなっているチームです。そして、クバラツヘリア、オシムヘン、ポリターノで組む 3トップには最大級の警戒が必要となります。アッレグリは、ポリターノにはコスティッチ、クバラツヘリアにはカンビアーゾ、オシムヘンにはブレーメルがマークにつくことを基本として、特にクバラツヘリアとオシムヘンにはダブルチームで対応するように設計していました。そして、ハイプレスの際は、2CBにはブラホビッチとキエーザが出て、ディロレンツォにはラビオが出て、ナタンにはマッケニーが出る。ロボツカにはロカテッリを上げ、アンギッサとジエリンスキにはガッティもしくはダニーロが守備ラインから飛び出して潰しに行くようにタスクを整理していました。ただし、ユベントスの場合は、ハイプレスとは言ってもボールホルダーにそれほど強く当たるわけではなく、ジョギング以上スプリント以下のスピードでカバーシャドウをかけながら寄せて選択肢を削るイメージです。スピードが出ていない分、ドリブルでプレスを外されることはありません。相手の選択肢は必然的にパスになります。この寄せ方でボールホルダーの選択肢を削り、パスが出た先でパスカットやファーストタッチの際に強く当たってボール奪取を狙います。もしくは、パスの出しどころがなくなった相手がロングボールを蹴ったところを屈強なCB陣が跳ね返してセカンドボールを拾うのが狙いです。

ハイプレスを剥がされてボールを運ばれたり、ロングボールの後に相手ボールになったら、全員が素早く引いて5-3-2ブロックで構えます。この時も、ナポリのウイングにはウイングバックが対応するため、中盤3枚は長い距離を走ってスライドする必要があります。しかし、そのためのラビオとマッケニー。サイド低い位置のボール回しには素早く寄せて、ボールの前進を阻害して不必要にディフェンスラインが下がることを抑止します。中盤の守備ラインは互いの距離が開きすぎることもなく、中への侵入をケアしたポジショニングを維持してボールをサイドに追い出します。そして、ポリターノはコスティッチが対応し、クバラツヘリアにはカンビアーゾが対応しつつ、マッケニーがダブルチームにつく形でサイドの守備を行い、クロスはガッティ、ブレーメル、ダニーロが跳ね返す。加えてロカテッリがペナルティエリア内の開いているスペースを埋めるので、ペナルティエリアでナポリが使えるスペースはほとんどありませんでした。ここまでスペースを閉めてしまえば、オシムヘンといえどゴールを破るのは簡単ではありません。クロスを跳ね返したり、ナポリのバックパスにあわせてダニーロの統率の下ラインを上げてハイプレスに出る準備も怠りません。

終始コンパクトな陣形を保っており、ハイプレスも連動して動けていました。ほぼ完璧な守備だったと言えるでしょう。ナポリにあった決定機はショートカウンターが引っかかってひっくり返された形とブレーメルのクリアがガッティに当たってこぼれた形。いずれも偶発的なもので、仮に両方とも決められて2-1で負けていたとしても、ユベントスの守備がナポリを上回って試合を支配したという評価は変わりません。それくらい、ユベントスの守備の完成度は高かったと思います。

そして、ボールを奪うとブラホビッチ、キエーザはもちろん、ラビオ、マッケニー、コスティッチ、カンビアーゾが一気呵成に駆け上がり、攻撃の人数を担保しています。昨季はカウンターを発動しても、フォワードとコスティッチの2枚か3枚上がるのがせいぜいでしたが、4枚、5枚と駆け上がる姿は爽快でした。カンビアーゾのシュート、ブラホビッチのシュート、マッケニーのバイシクル、クバラツヘリアの決定機に繋がったコスティッチのクロス…。どの場面を見ても、4人、5人が駆け上がってカウンターに参加しています。あとはシュートのタイミングと味方の位置もしくはスペースの認知でしょう。マッケニーのバイシクルに至る前のブラホビッチはワンタッチでシュートを打てていればブロックは間に合わなかったはず。カンビアーゾのシュートの場面は、ブラホビッチに横パスを出せていればより良い状況でシュートを打てていたでしょう。後半、ロカテッリの縦パスをブラホビッチがヒールで落としてラビオのワンタッチパスからキエーザが抜け出した場面は、キエーザのファーストタッチがもう少し近くに置けていれば決定機でした。あと少しの何かがあれば、さらに得点は増えていたかもしれません。

ユベントスの守備は確実に完成度を上げています。そして守備からのカウンターの迫力も増しています。若いチームながら、往年の強さ、しぶとさが見えつつあります。アッレグリのチームになってきたという印象を受けますが、これからチームはどんな方向性に進んでいくのでしょうか?

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