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セリエA第14節 モンツァ vs ユベントス 〜やらかしたアッレグリ

昨季、シーズンダブルを許してしまったモンツァとのアウェイゲームは後半アディショナルに同点に追いつかれ、すぐに逆転するという感情の起伏があまりに激しいゲーム展開になりました。ただし、失点は必要なかったものだと思いますし、その原因はアッレグリの采配にあると思います。

左右非対称システム

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、カンビアソ、ガッティ、ブレーメル、サンドロ、コスティッチ、マッケニー、ニコルッシ、ラビオ、キエーザ、ブラホビッチ。5-3-2をベースにメンバーを組んできたが、カンビアソの右WB起用も 3試合目になり、主に攻撃の場面で役割分担が明確になってきている印象を受けました。以前の記事でも考察した通り、左利きのカンビアソを右WBに置くことで、カンビアソを経由してボールを前進させる速度が遅くなるという現象が起きています。そこで、カウンターなどボールの前進を加速させる必要がある時には右サイドにいるカンビアソを経由せず中央のブラホビッチに当てるか、左サイドを使うかしてボールを運ぶ。その代わり、カンビアソの流動性を解放して中盤、前線にフリーで走り込ませ、右サイドの幅を取るのはマッケニーが行う。ボール運びのメインルートを左サイドにして、右サイドはカンビアソが中に入ってマッケニーが外に出たり、ガッティが駆け上がったりと流動的に動くように調整されていました。ただ、これはカンビアソをウイングバックで起用せざるを得ない現状に対する苦肉の策だと思います。中盤の選手が足りないからマッケニーをインサイドハーフで起用しているのだろうと思います。ロカテッリがスタメンに戻ったら、ウェアが復帰したら、カンビアソはそのまま右WBで出場し続けるでしょうか?本来ならば右サイドを使ったボールの前進を選択肢から外すことなく、ウェアやマッケニーをウイングバックで使いたいところでしょう。ただし、カンビアソの流動的な動きは相手にとっても掴みどころがなく、うまく使いたいところです。この試合のPK獲得もカンビアソの流動的な動きで勝ち取ったものです。左サイドでのボール保持の最中に最前線まで駆け上がり、コスティッチのロングボールをペナルティエリア内で受けました。キリアコプーロスもカンビアソについていくのがやっとで最後は腕を掴んで止めてしまいました。

アッレグリの失策

カンビアソのおかげで獲得したPKの流れで得たコーナーキックをラビオが叩きこんで先制。(ブラホビッチのPK失敗はこれで2回目。キエーザの方がいいのでは?)その後は5-3-2ブロックでモンツァの攻撃を受け止めつつカウンターやセットプレーでチャンスを窺う展開になりました。ニコルッシもアンカーの位置から動いてインテル戦よりは積極的にプレーに絡み、長いボールで展開を変化させようという意図も見えました。そして、そのニコルッシに変えてダニーロをアンカーで投入しましたが、この一手が失策だったと思います。21-22シーズン終盤、中盤にケガ人が相次いでダニーロをアンカーで使ったことがありました。しかし、うまくハマらず失敗に終わっていました。まさかもう一度試してくるとは!?

ダニーロのアンカー起用でうまく行かなかった点は主に2つです。

①ボール保持時にポジショニングが良くないためボールの循環が滞ってしまう。

②守備時に下がり過ぎてしまう傾向があり、バイタルエリアを開けてしまうことがある。

まあ、結論から言えばダニーロはディフェンスラインの選手であって、SB、CBに高い次元で対応できるポリバレントなプレーヤーですが、中盤の選手ではないと言うことです。少なくとも、ロカテッリクラスの働きは望むべくもないのは明白。その選手をアンカーで起用したのはアッレグリのミスです。

では、昨季猛威を奮ったストーンズのCH化はどう解釈するのかですが、あくまで一時的なポジションチェンジなので、ダニーロを終始アンカーで起用する今回の起用法とは異なるのでうまくいっていると言うべきでしょう。ストーンズは守備時にはCBのポジションで守っているので、ダニーロの②は起きません。そして、ストーンズの足下の技術はよりプレッシャーが厳しい中盤のタスクもこなせるレベルで、360度の視野の確保もできていました。一般的なCBをはるかに凌駕するスキルを持ったストーンズだからこそ実現できた戦術と言えます。何より、CBをスタートポジションとしている選手が一列上がって中盤でプレーすることで相手のマークを混乱させることが大きな狙いです。守備まで中盤で行わせることはありません。ストーンズはそのキャラクターとペップの戦術設計によって上記①②の弱点は露呈しないようにされていました。

一方、ダニーロの場合は常時中盤でプレーすることを求められたため、ボール保持時にスキル以上のプレーを求められ、かつ守備時には中盤の選手として中盤の守備ラインを維持することが求められました。しかし、本来はディフェンスの選手のダニーロは360度の視野を持っていませんでしたし、守備時にはいつものポジションであるディフェンスライン近くまで下がってしまう傾向がありました。今回は②の弱点が失点につながってしまいました。ダニーロが下がりすぎなければ、クロスは上がらなかったはずです。ペップでもストーンズを常時中盤で起用することはないはず。なぜなら、中盤でプレーできるだけのスキルはあるとは言え、その他の中盤の選手には力量の上で劣るからです。ディフェンスの選手を中盤で起用することには無理があると言えます。中盤の駒不足に加えてサンドロの復帰などさまざまな要因がある中で、ダニーロにもプレータイムを与えるための苦肉の策だったのでしょう。しかし、結果としてチームを窮地に追い込む選択となってしまいました。ラビオの怒りのドリブル突破と経歴からも桜木花道を彷彿とさせる「なぜそこにいるんだ?」というガッティのゴールが救ってくれましたが。

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