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セリエA 第8節 ユベントス vs ボローニャ 〜守備で流れを掴む

9月の不調からインターナショナルマッチブレイクを経たボローニャとのホームゲームは3-0の快勝でした。守備で試合を支配してカウンターとセットプレーから得点。ボール保持も悪くはありませんでしたが、ユベントスらしいゲーム運びに回帰してきた印象を受けました。
そして何より、審判がモントリーボに見えて仕方がありませんでした。

守備のユベントス

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、ダニーロ、ブレーメル、ボヌッチ、サンドロ、マッケニー、ロカテッリ、ラビオ、コスティッチ、ミリク、ブラホビッチ。4-4-2をベースにアグレッシブにハイプレスに出た。オールコートマンツーマン気味に早めに人を捕まえて選択肢を削ってパスコースを限定。ボールが出た先で強く当たって奪い切る守備を敢行してきた。この守備でボローニャからボールを早めに回収することに成功した。そして、カウンターを撃てる時には撃ち、人数をかけてフィニッシュまで持っていく意識を共有できていた。奪った位置が低くカウンターに繋がらない時にはシュチェスニーも使ってボール保持を試みた。

攻撃時にはロカテッリをアンカーの位置にズラしてボローニャの2トップに対してCBと3対2を作って後方でボール保持を狙っていた。ボローニャもロカテッリに対して後ろから人を出すことはなかったので、ボール保持には成功していた。そこからどうやって前進していくのかが課題のユベントス。ミリク、ブラホビッチとパサーの意図が合わずにボールが流れること多数。なかなかボローニャの守備ラインを越えられない。ただ、マッケニーやラビオがボローニャの中盤のラインの間にポジションをとって、ロカテッリやボヌッチからパスを通して中盤のラインはパスで越えられていた。その後、味方の動きに合わせて開いてくるスペースを認知して走り込めればいいのだが、そこの連携がうまく取れていなかった。

ただ、サイドまではボールを運べているのだから、ブラホビッチとミリクを狙って早めにクロスを上げてもよかったように思う。カウンターから猛然と走り込んだラビオがDFを釣ってコスティッチが角度のないところから決めて先制。スローインの守備の際、ミリクが激しくプレスバックしたプレーがパスミスを誘った。さらに後半、カウンターからファーでフリーになったブラホビッチ、コーナーキックの流れからミリクと後半に追加点。カウンターの際にスプリントをかける人数が増えたことは好印象だった。やり直しにせず、カウンターで前に出た勢いでシュートに繋げられたことは良かったと思う。ただ、うまく得点を重ねたものの、カウンターとセットプレーからであり、ボール保持をどうやってチャンスに繋げていくかということにこそユベントスが取り組むべき課題がある。

ボローニャも同じく4-4-2をベースにハイプレスを仕掛ける。ただ、2トップが数的不利の状況に置かれているため、ハイプレスは空転。ボール奪取の位置は低くなり、むしろユベントスのハイプレスに苦しめられるボローニャ。前から人を捕まえにくるユベントスに対して、アルナウトビッチがサイドに流れてボールを受けることが多くなった。しかし、本来ならば点を取るべき選手がサイドに流れては元も子もない。ボローニャはいい形でシュートに行けなかった。守備でユベントスが試合を支配していたと言えるだろう。

ロカテッリの帰還

やはり、ロカテッリの復帰がいい影響を及ぼしている。ボローニャも勢いよくハイプレスに出てきたが、2トップの間にポジションをとって牽制。CBに時間を与えていた。ゲームのリズムを読むのもうまく、ボールを受ける前にステップを踏んで体の向きを整えるため無駄なボールタッチがない。だからロカテッリがいる時はテンポよくボールが動く。その中でボールを持つプレーを入れてくるので、そのプレーが緩急となって味方にポジションを整理する時間を与えることになる。何より、認知のレベルがユベントスの中では抜きん出ている。常に首を振りながら周りの状況を確認するロカテッリの姿がある。左足を使ったパスも緊急避難的に使えるため、咄嗟にボールを逃すことができる点も大きい。ボール保持を継続して、相手を押し込むことにつながっていた。ボールを敵陣まで運べば、ボールを失ってもハイプレスに移行できる。ボローニャ戦ではボール保持とハイプレスの循環がうまくいっていた。ロカテッリもパスと守備時のポジショニングで大きく貢献。このスタイルを継続するなら、ロカテッリの存在は不可欠だろう。

守備で流れを掴む

この試合のユベントスは、3点とっているものの、守備でボローニャを圧倒した。前半はオールコートマンツーマンに近い、強度の高いハイプレスを駆使してボローニャからボールを取り上げた。ボローニャのビルドアップ隊にマンツーマンでマークにつくことで時間を奪い、苦し紛れに出すパスをカット。特に中に入れてくるパスはブレーメルとボヌッチが徹底的に潰していた。そして、いい形でボールを奪えれば人数をかけたカウンターを撃つ。ボローニャとの試合では、スローイン、コーナーキックのボールを奪ったもので、セットプレーのカウンターという意味合いが強かった。流れの中から得点を奪えれば言うことなしだ。

後方に数的優位を残さないという意味でハイリスクな守備戦術ではある。ボローニャ相手だからこそ採用できたのかもしれない。前半はマンツーマンをベースにしたアグレッシブなハイプレスを用いてピッチを制圧。マッケニー、ミリクにもゴール前でフリーでシュートを打つ決定機が来ていた。ボール保持からクロスをシュートに持ち込んでいる。やはりボール保持からの得点はクロスを中心に狙っていくのが、今はいいのかもしれない。ただ、次週のミラン相手に同じ守備をやるのは難しいだろう。レオン相手にマンツーマンは相当なリスクを伴う。そうなると、後半見せたお得意の構えて守る守備で0点に抑えて時計を進めながら、いい形でボールを奪えれば人数をかけたカウンターでチャンスを窺う。後半も4バックで戦っていた間は、ボローニャを封殺していた。その守備で試合を支配している中から2得点。セットプレーではポスト直撃のシュートも放っており、カウンターとセットプレーの迫力は戻ってきている。守備をベースに試合を支配する。ユベントスらしい戦いが戻ってきている。前回の記事でユベントスの文化の継承に警鐘を鳴らしたが、守備の文化を繋いできたユベントスであれば、この方向性でいいと思う。次週のミラン戦もいい試合を期待したい。

課題は認知の向上

とはいえ、ボール保持からチャンスを作るのはなかなか難しかった。肝心なところでパスが合わない。パスが流れてあえなくボローニャボールという場面を何度見たことか。気になったのは、各選手の体の向きだ。例えば、ダニーロが中盤まで上がって右サイドでボールを受ける時、体の向きは中を向いていた。右サイドではクアドラードが開いてフリーで待っているのに、その体の向きでは視野に入っていない。結局、ボールは中に入れられて、フリーのクアドラードに渡ることはなかった。他にも、後方でボールを回している時にブレーメルだけでなく、ボヌッチでさえ、前を向いてボールを持てていない場面が何度もあった。完全に体が横を向いてしまっていて、体の向きとは逆のサイドへの展開ができない状態になっていた。その状態では、その後のボールの動きを予測され、ハイプレスの餌食になってしまう。

結局、見るべきものを見ていないことが原因ではないかと思う。試合を見ていても、首を振って周りの状況を確認している選手は驚くほど少ない。先発した選手では、ロカテッリとコスティッチくらいではないだろうか。普段のトレーニングから認知を鍛える練習を取り入れてみるのもいいのではないか。また、体の向きやボールを受ける前のステップなど、基本的なことかもしれないが、コーチやアッレグリが徹底して指導してほしい。そうすることで、ユベントスの文化を継承しつつ、新たな文化の創造というとてつもない仕事に挑戦できるのではないだろうか。

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