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セリエA 第2節 サンプドリア vs ユベントス 〜ジャンパオロvsアッレグリ


今朝方行われたサンプドリアとユベントスの一戦は、0-0の引き分けに終わりました。ユベントスとしてはうまくいかないところが多かったですが、サンプドリアのアグレッシブなプレーも相俟って面白い試合でした。特に後半はユベントスとしては狙い通りにボールを運べたシーンも多く、今後につながるゲームになったと思います。簡単に振り返っておきます。

ジャンパオロの4-5-1

サンプドリアのスタメンは、アウデロ、ベレシンスキ、フェラーリ、コリー、アウジェッロ、ビエイラ、レリス、リンコン、ザビリ、ジュリチッチ、カプート。

昨季からジャンパオロ得意の4-3-1-2から4-5-1へとシフトしているようだ。かつては3センターは3人でピッチの横幅をケアすることを求められて恐ろしい運動量を強いられていた。彼らの負担の上で前線の3枚もアグレッシブにハイプレスに出る、流動的に動いて自由自在のアタックを仕掛けることができていた。ただ、当然、それだけの運動量を求められる中盤3枚の消耗は激しく、強度を保つのは難しかった。昨季からは中盤を5枚にすることで守備時に中盤のスライドの負担を軽減することに成功している。その分、前からのプレッシャーが弱くなっているかといえば、そうでもない。5枚のうちから前へと人を動かすことで相手のビルドアップ隊へのプレスの強度は確保している。前からのプレスに対して相手が手間取るようならチーム全体を押し上げて一気呵成にハイプレスに出る。さらに、中盤を5枚にしているので4-5のブロックを敷ける。引いて守った時の強度も確保している。ただ、動く方向が横か縦かの違いであり、運動量を求められる方向性には違いはなく、後半になるにつれて攻守において動きの量が落ちる傾向にあった。後半の20分足らずで足を攣らせている選手が複数人いることからも、かなりの運動量がサンプドリアのフットボールの基盤になっていることが窺える。

その豊富な運動量に裏打ちされたアグレッシブなフットボールでユベントスに挑んだサンプドリア。ユベントスのボールの前進を阻んで、デュエルに競り勝ってマイボールの時間を増やすことに成功した。ロングボールに競り勝つことが多く、ロングボールのセカンドボールが重要な攻撃の基点となっていた。ユベントスのマズいパスをカットしてチャンスを作るシーンもあり、最初の決定機は是が非でも決めておきたかっただろう。

切り札はデシーリオ?

ユベントスのスタメンは、ペリン、ダニーロ、ルガーニ、ブレーメル、サンドロ、マッケニー、ロカテッリ、ラビオ、クアドラード、コスティッチ、ブラホビッチ。4-3-3を基本の配置として、守備時にはコスティッチをディフェンスラインまで下げた5-4-1で対応。ただ、この試合は時間を経るにつれてユベントスのボール保持が安定して、かつボールを運べるようになっていったので、ほとんどコスティッチが下がって守備をすることはなかった。しかし、多くの時間でボールを保持していたとはいえ、必要のないパスミスや最後の最後でパスが合わないなどチグハグな印象は拭えず、決め手に欠く試合となってしまった。

それもこれも、ディフェンスラインからグラウンダーの縦パスを前に通せる選手が後半から入ったデシーリオしかおらず、確実性の高いボールの前進ができなかったからだ。ロカテッリは常にマークされており、自らを囮としてルガーニとブレーメルに時間とスペースを与えていたが、その先がうまくいかなかった。前述のとおり、サンプドリアは5枚の中盤から前に選手を出してユベントスのCBにあたりに来ている。その時、中盤のラインには前に上がった選手が元いた場所にはスペースができている。サイドバックを経由するなり、ちょっと角度をつけるなりしてボールを送り込めればよかった。しかし、そのスペースに人がいなかった。残念ながら、マッケニーとラビオはそのスペースに入ってくることはできなかった。結局、前半は主にルガーニから対角のコスティッチを狙うロングボールが大きな狙いとなっていた。ディフェンスラインでボールを回してサンプドリアを右に引きつけておいてから左のコスティッチという悪くない流れだった。何度かいい形でコスティッチに繋がったが、その後はなぜかグラウンダーのクロスしか狙わないコスティッチ。戻ってくるサンプドリアの中盤の選手に引っかかってシュートチャンスを演出できない。素直にハイクロスをブラホビッチに当てに行っても良かったように思うが…。

ユベントスがサンプドリアに対してショートパスで前進できるようになったのは、後半デシーリオが入ってから。ブレーメルからボールを受けるや否や、すかさずブレーメルへプレスに出た選手の明けたスペースにズバズバと楔を打ち込む。サンプドリアがそのスペースを埋めれば、デシーリオは開いてくるコスティッチへボールを流してボールを前進。左サイドからショートパスでボールを前進させ、サンプドリアを押し込むことに成功する。その後は、ブラホビッチがオフサイドになりまくるやら、落としのパスがズレるやら、チグハグな攻撃を繰り返してサンプドリアに塩を送り続けて試合終了。ブラホビッチもやたらと倒れてファウルをアピールする前に、自身のプレーを見直してみるのもいいのではないだろうか。

デシーリオを使ってボールを前進させられるようになり、ライン間を使えるミレッティを左CHに入れてラビオを右に回したなら、ケーンはそのまま右に入れるべきだったのではないか。左からボールを前進させて、コスティッチのクロスにブラホビッチ、ラビオ、ケーンが飛び込む。左で作って、右で仕留める。終盤に左からのクロスにコスティッチがボレーシュートを撃ったシーンがあった。左で作って、右で仕留める狙いを持っていたのなら、クロスの質が高いコスティッチを左に置いた方が良かったかもしれない。


まとめ〜ローマ戦に向けて

さて、サンプドリアに引き分けとなったユベントス。結果は最善のものにはなりはしなかったが、ビルドアップに手を打って後半はサンプドリアに決定機を作らせず、試合を支配した。自分達はコスティッチのボレーを筆頭にペナルティエリア内からのシュートチャンスを作り出した。ボールを保持してゲームを進めることを目指すなら、方向性は間違っていない。

ただ、サンドロは空気だったし、開幕戦で獅子奮迅の活躍を見せたダニーロも目立った活躍はなかった。何より、ブラホビッチが孤立しがちという問題は解決しなければならない。そのためにも、アッレグリは配置の整理やタスクの割り振りを見直す必要があるだろう。
まずは、左サイドバックのファーストチョイスはサンドロでいいのかをもう一度よーーーく検討するべきだと思う。かといって怪我がちなデシーリオに全てを託すのも心配だし、ペッレグリーニを残しておけば…ということのないように願うしかない。
次に、ダニーロについてだが、サンプドリア戦は前にクアドラードとマッケニーがいたことが関係しているだろう。自由に動き回るクアドラードに合わせて、マッケニーが中と外を使い分けてバランスを取っていた。ダニーロが上がるスペースがそもそもなかった上、後半はデシーリオを起点にボールを進めたため、ダニーロがボールに絡むことが少なかった。
そして、CHのチョイスとタスクの割り振りだ。サンプドリア戦はマッケニーとラビオだったが、どちらもペナルティエリアへの侵入は少なかった。左サイドをコスティッチが突破してクロスを上げるタイミングでもボールより後ろに控えていた。それはロカテッリやダニーロの仕事だ。CHにはブラホビッチに近い位置まで走り込んで得点に絡むプレーを任せたいところだ。マッケニーはクアドラードに振り回された感はあるが、ラビオは昨季からなかなかペナルティエリアまで入ってこなかった。ポグバの復帰がベストだが、それまでの間は後半はデシーリオから次々とボールを受けてゴール前までボールを運んでチャンスメイクしたミレッティも悪くない。守備に少し不安はあるが、中盤から前に出るタスクを与えた上で守備でも力を発揮できるザカリアかマッケニーと併用することで負担を軽減できるだろう。ミレッティはユベントスの戦力となっていると言っていい。

ローマ戦にポグバもディマリアも間に合わないだろう。だとすると、両ウイングはコスティッチとクアドラードになるだろう。だからこそ、CHの人選とゴールを狙う意識には注目したい。

また、ロカテッリを消しときゃいいだろ問題もなんとかしたい。ロカテッリがマンマークを逆手にとって、CBをフリーにしているのだからドリブルで前に運んでマークを引きつけて、他の選手に時間とスペースを渡すプレーを仕掛けてほしい。実際、ロカテッリも再三腕を前に振るジェスチャーを見せてCBに前に運ぶように促している。ルガーニも縦パスを通す意識はあったし、コスティッチを狙った対角のロングパスも悪くはなかった。ただ、後方からのビルドアップやチャンスメイクに関してはボヌッチに一日の長がある。ローマ戦のキーマンはボヌッチになるかもしれない。

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