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ELSEMIFINAL セビージャ vs ユベントス 〜試合が読めないユベントス

ヨーロッパリーグ準決勝のセカンドレグは1-1、延長戦の末セビージャに敗れました。ゲーム自体はアッレグリが想定した内容だったでしょう。来季以降、ユベントスが復権を果たすために取り組むべき課題が浮き彫りになった試合だったと言えるでしょう。

アッレグリのプラン

ボールはセビージャに譲って、ローブロックで堅く守る。セビージャの攻撃ルートは8割近くがサイドからのクロス。ペナルティエリアに人数をかけて跳ね返せばいい。失点をせずに時計を進めて、いい形でボールを奪ったり、ハイプレスをひっくり返せた時にカウンターで仕留める。もしくはセットプレーで得点を取る。

アッレグリが描いたプランはこんな感じだったのではないでしょうか。実際、セビージャに押し込まれながらもセビージャのサイド攻撃には中を固めて対応し、コーナーキックも危ない場面はほぼありませんでした。ガッティ、ブレーメル、ダニーロの3バックは高さと強さを備えており、単純なクロスには滅法強いユニットでした。さらにウイングバック、3センターハーフもクロス対応のためにペナルティエリアで待ち構えており、本当にピンポイントで合わせるクロスが入らないとシュートには行けないように設計されていました。ディフェンスラインのコントロール、中盤との連携も完璧で、ペナルティエリア内の密度を高めてゴールを割らせない往年のカテナチオがそこにはありました。そして、前半のうちに縦に速いダイレクトな攻撃からキーン、ラビオ、ディマリアに決定機があり、どれかを決めておけば、また違った試合展開もあったかもしれません。ただし、ファジョーリの負傷交替は計算外だったでしょう。ミレッティかパレデスか、というところでしたが、クレモネーゼ戦で好調だったパレデスを選択しました。パレデスをアンカーに入れ、ロカテッリを一列上げることになりました。ディフェンスラインの前を抜群のポジショニングでケアするロカテッリをアンカーから外すことは大きなリスクでした。結果的にはより運動量が求められるCHに上がったロカテッリは後半途中でミレッティと交替してピッチを去っています。その後、中盤の守備は統率が取れなくなり、延長前半の失点につながったように思います。ファジョーリに変えるなら、ミレッティで良かったのではないでしょうか…。

予想外の交代以外は、後半にキエーザとブラホビッチを投入して勝負に出るのもプラン通り。そしてブラホビッチが決めて後は試合を終わらせるのみというところまで来ていました。

ターニングポイント

この試合のターニングポイントは、ファジョーリの負傷交代と失点直前のキエーザのボールロストでしょう。アッレグリは試合後のコメントで多くは語りませんでした。いや、「ゴールを決めてから失点するまでは一瞬だ」というコメントは、むしろキエーザを擁護するような発言のようにも読めます。しかし、キエーザのプレーはあまりに軽率だったでしょう。ローブロックで守っている中、自陣ペナルティエリア前からまさかのドリブルを開始し、あえなくボールロスト。どこのクアドラードだ!と突っ込みたくなりましたが、クアドラードが2人もピッチにいては、それくらいのミスは起きうることなのかもしれません。結局、キエーザのボールロストが起点となってスソにスーパーミドルを叩き込まれました。ローブロックを敷くユベントスが失点するとしたら、スーパーミドルかピンポイントクロスしかありません。スソのシュートは素直に褒めるしかありませんが、キエーザが軽率なプレーをしなければ、そもそもスソのシュートはなかったはずです。キエーザに試合を読む力はなかったということでしょう。失点の後、シュチェスニーが珍しくゴールポストを蹴っていました。「止められた」ということかもしれませんが、キエーザのプレーに怒り爆発だったのかもしれません…。

復権に向けて

「重要な試合でプレーするときは、細部が違いを作り出すものだ。そしてゴールを挙げてから失点するまでは一瞬だ。これは、チームにとって、特に国際経験が少ない若手にとって、踏むべきステップと言えるだろう。」

ファジョーリ、ガッティ、イリング・ジュニオール、キーン、ミレッティ、キエーザ、ブラホビッチ……この試合に出場したこれだけの選手が20代前半です。ロカテッリとブレーメルも20代半ば。スーレ、バルビエリ、バレネチェアと今回出場していない選手も、今季セリエAで出場機会を得ています。過去のユベントスに比べて、今季は若い選手が多い構成のチームです。

「老獪な試合運び」

ユベントスの試合を観ていると実況解説でよく使われる言葉です。確かに、かつてのユベントスは言葉通りの試合運びをしていました。それは、百戦錬磨のベテランたちがチームの要として君臨していたからです。9連覇した時には、ディバラ、ポグバ、モラタらが期待の若手として躍動する一方、ブッフォン、キエッリーニ、ピルロ、ケディラ、マンジュキッチ、イグアイン、テベス、ボヌッチ、マテュイディら経験豊富な中堅・ベテランがチームの根幹となっていました。彼らの豊富な経験からくる試合への洞察力やリーダーシップによって若手を支え、助け、伸び伸びとプレーさせることでチームに貢献させる。締めるところは締めて、試合運びを間違えない。そんな強さがかつてのユベントスにはありました。例えば、14-15シーズンのCL決勝のスタメンは、ブッフォン、リヒトシュタイナー、ボヌッチ、バルザーリ、エブラ、ピルロ、マルキージオ、ポグバ、ビダル、テベス、モラタです。20代前半の選手はポグバとモラタの2人だけです。20代という括りにしても、ボヌッチとビダル、マルキージオが加わるに留まります。スタメンの半分に30代のベテランが名を連ね、しかもその経験値はとんでもなく高いものでした。CLを制覇した経験を持つ選手が4人もいます。このチーム構成のバランスがユベントスの強みだったように思います。

翻って、セビージャ戦のスタメンで30代の選手はシュチェスニー、ダニーロ、クアドラード、ディマリアの4人です。クアドラードとディマリアは感覚とセンスでプレーしているところがあるため、リーダーシップや試合を読むといったところに特徴がある選手ではありません。試合終了間際に不用意なパスでカウンターを誘発したディマリアにブチギレるアッレグリの姿がSNSに上がっていました…。実質、黄金期のベテランと同じ役割を担える選手はダニーロとシュチェスニーの2人だけという構成でした。

現在のユベントスは若いチームです。世代交代という難しいミッションに取り組んでいる最中だと言えます。彼らに経験を積ませ、勝者のメンタリティを取り戻すこと。今季、多くの若手をピッチに送り出し、試合経験を重ねたことで、復活への土台は出来つつあると思います。

そして、若手の助けになってくれる経験豊富でリーダーシップのある選手を獲得すること。ポグバがその役割を期待されていたはずですが、ケガで丸々一年棒に振ってしまいました。来季もポグバに過度な期待はできないでしょう。ボヌッチもケガでほとんど出場できませんでしたし、引退の噂もあります。何年かを見越した上でシーズンを通した働きが期待できる人材がいれば、獲得に動いてほしいと思います。

ブレーメル、ガッティ、ロカテッリ、ファジョーリ、ミレッティ、ブラホビッチにキエーザと、各ポジションに中心となるべき若い選手はいます。ロカテッリに至っては不可欠な存在と言っていいでしょう。ダニーロとシュチェスニーに加えてあともう1人、できれば2人、チームを鼓舞し、導ける存在が必要です。あと3試合を勝ち切り、この若いチームで少しでも勝利の経験を積み、来季に繋げたいところです。

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