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セリエA 第17節 ユベントス vs ウディネーゼ 〜決戦を前に

序盤大躍進したウディネーゼとのホームゲームは終了間際のゴールでまたしてもユベントスが1-0で勝利。今や死語になりつつあるウノゼロがここにあります。5バックで堅く守る相手から点を取ることは中々難しいことで、8連続クリーンシートで8連勝はひとまず喜ぶべきことではないでしょうか。次節は勝ち点7差で追うナポリとのアウェイゲームです。ここで勝って勝ち点差を4にできれば、逆転でスクデット獲得が視野に入ってきます。楽しみなナポリ戦に向けて、ウディネーゼ戦を振り返っておきます。

攻撃的なユベントス

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、マッケニー、ダニーロ、ルガーニ、サンドロ、コスティッチ、ラビオ、ロカテッリ、ミレッティ、ディマリア、キーン。前半戦途中からの5-3-2でスタートした。昨季からさまざまなポジションで起用されるマッケニーがついに右ウイングバックとして登場した。右サイドを1人でカバーしてきたクアドラードのケガによって右ウイングバックを任せられる人材が不足している。前節はスーレに任せたが、守備面での不安は大きかった。高い運動量とそれなりの経験値を持つマッケニーの起用は現状のスカッドでは苦肉の策とはいえ最適解だろう。ドリブルによる突破力はクアドラードやスーレに劣るが、一定の守備力に加え、戦術理解力とゴール前への飛び出しで攻撃に厚みをもたらしてくれる。なお、中盤の構成は、試合開始当初はラビオが右、ミレッティが左に位置していたが、途中で逆になっていた。もしかしたら、マッケニーが慣れないウイングバックに入ることから、守備の負担を考えて経験値の高いラビオを右に置いていたのかもしれない。両者の利き足を考えると、ミレッティが右でラビオが左の方がプレーしやすいだろう。

攻撃時のユベントスは、3バックとロカテッリが後方に残ってボールを保持。ダニーロとサンドロは元々はサイドバックなだけあって、足元の技術、ドリブルでの持ち運び、縦パスの速さと精度を完備してビルドアップの起点になっている。さらに、ルガーニも3バックの真ん中で左右にボールを散らしながらボール保持に貢献。ウディネーゼも5-3-2の守備位置から3センターの一角を前に押し出してプレスをかけにきていた。しかし、3バックの距離を広げてロカテッリがボールの位置に合わせてポジションを移動させることで3トップ気味のハイプレスを牽制していた。ウディネーゼがそこまで強くハイプレスをかけにこなかったこともあって、後方でのボール保持は安定していた。

そして、ウディネーゼ戦のベストプレイヤーはディマリアだった。3-1でボールを保持している間に、ウイングバックが上がって5トップのような配置になるユベントス。ウディネーゼの5バックを後方に押し留め、3トップ気味にプレスに出る前線と守備組織を分断して、中盤を2枚でカバーしなければならない状況を作り出す。そこに現れたのが、ディマリアだ。ウイングバックとCHが上がって5バックを牽制する中、ディマリアは5バックの前から消えるように中盤に降りて行った。ウディネーゼの5バックからしたらマークする相手が目の前にいるため、ディマリアを捕まえに行けない。ウディネーゼの中盤の選手は、ユベントスの3バックにうまくプレスがかけられていないため、ボールを注視しておかなければならない。いつボールが動くかわからないからだ。そこにディマリアが忍者のように現れる。これではマークにつくのは難しい。そこにサンドロ、ダニーロから鋭い縦パスが届けられる。中盤で、フリーで、ディマリアが前を向く。ウディネーゼも5バックで守っていたので、パスの受け手をマークして、中盤も必死で戻って何とか失点を免れていた。しかし、ユベントスのボール保持からの攻撃は機能していたと思う。3-1-5+ディマリアのフリーロールというべきか。ディマリアに加えて、ミレッティ、マッケニーもポジションを入れ替えて下がってボールを受けてターンするシーンもあり、流動性も高く、この攻撃を継続できるなら、ナポリ戦ではボール保持においても互角に戦えるかもしれない。ボール保持率ではウディネーゼの方が上だったが、それはユベントスが後方から積極的に縦パスを入れ、攻撃を加速させていたからだ。縦に速く、ゴールに迫ろうとしていた。その分、ボールを保持している時間は短くなる。

守備の課題

攻撃においては見事なプレーを見せたユベントスだったが、守備ではウディネーゼに対して後手に回ることもあった。具体的には、キーンとディマリア、コスティッチが戻りきれない時にチャンスを与えてしまっていた。4-3で守らなければならない場面で、4-3ブロックを恐ろしいほどコンパクトに保ってペナルティエリアのすぐ外を固める。それでもウディネーゼにブロックの中を経由してコスティッチの裏を使われて何度か危ないシーンを作られた。コスティッチを上下動させる守備のやり方を組んでいることから、コスティッチのポジション移動の時間と場所を狙われると守りにくいところはある。結局は久しぶりの出場となったサンドロの奮闘で事なきを得ていた。チームとして計算できているのであればいいのだが、少し手を入れてもいいかもしれない。

vs ナポリ preview

具体的には、ディマリアの起用法だ。先述した通り、ウディネーゼ戦のディマリアはCHやWBと入れ替わる形で下がってくるプレーでフリーになってボールを受けてそのクオリティを存分に発揮した。しかし、守備では無理が効かないのか、戻りが遅く、守備ブロックの一枚として計算が難しいように感じた。ウディネーゼ相手から攻守の期待値はプラスになるだろうが、ナポリ相手なら守備のマイナスが大きくなるように思う。そこで、スタートはウディネーゼ戦でディマリアと同じく下がってくる動きでフリーになって前を向いてチャンスクリエイトに絡んでいたミレッティで行く。ミレッティは守備でも貢献度も高い。インテル戦ではファジオーリと並んで素早いトランジションと戻りのスピードの速さで幾度となくインテルのカウンターを阻止していた。守備ブロックの一角に組み込んでもカウンターで前に走るだけの走力と体力を持っている。何より、19歳にして足元の技術、パスの差し込みどころを見極める目を持っている。ディマリアとのパス交換はダンスを見ているようだった。クオリティとアイデアではディマリアが上かもしれないが、守備での貢献を考えればミレッティを2トップの一角で起用し、ナポリのボール出しに制限をかけたい。少なくともサイドに迂回させれば、コスティッチが戻る時間を稼ぐことはできる。また、ミレッティなら中盤の守備ラインに組み込むこともできる。5-4-1で守ることができれば、守備ブロックの中を簡単には使わせないだろう。ウディネーゼ戦では、5-3の真ん中でロカテッリは1人で楔のパスをケアせざるを得なくなり、難しい対応を強いられていた。サイドの選手にラビオとミレッティが引っ張られたからだ。4枚で中盤の守備ラインを組めれば、2枚真ん中に揃えられる。堅く守って、カウンターで仕留める。ナポリは積極的にリスクを背負って人数をかけて攻撃に出てくる。ユベントスの守備とナポリの攻撃。ユベントスのカウンターとナポリのトランジション。面白い試合になりそうだ。

ナポリは4-3-3で来るだろう。3バックに対して3トップをぶつけるハイプレスは組みやすい。3バックによるビルドアップはナポリのハイプレスに捕まる可能性が高い。それでもユベントスはボール保持を狙うのか。ロカテッリともう一枚(ファジオーリ?)を3バックの前に置いて、3バックからロカテッリかファジオーリを経由してウイングバックに渡せればボール保持をベースに戦うこともできそうだが…。

予想は5-3-2で堅く守ってカウンター。ウディネーゼ戦のスタメンをベースに、ルガーニがブレーメルと替わるかどうかといったところ。人数をかけて慎重に守って、引き分けでもOKという試合をするのではないか。キエーザ、ディマリア、パレデス、ミリク辺りがベンチに控えており、攻撃的なカードは持っている。ただ、今季のユベントスは、リードされて追いつくイメージは持てない。低い位置で守備ブロックを構えて守るユベントスが、今季好調のナポリを封じ込めることができるかが試合序盤の注目になるだろう。ナポリも前に出てくる相手をひっくり返してスペースを効果的に使ってコレクティブな攻撃を仕掛けることには長けている。低い位置に予め引いてスペースを徹底的に消されたらどうか。ナポリにとってカギになりそうなのは、オシムヘン。スペースがなかろうがそのフィジカルでハイクロスを叩き込む力はある。ユベントスの守備を撃ち抜いてきたら、CLでもヨーロッパの強豪を相手に競り合えるだろう。ユベントスにとっても、ナポリにとっても今季の自分たちの取り組みを試す試合となるだろう。

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