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セリエA 第13節 イタリアダービー(HOME) 〜原点回帰

インテルとのホームゲームはカウンターからの2発で0-2で勝利しました。ミレッティ、ファジョーリが先発し、キエーザも途中からプレーすることができました。若手の台頭、怪我人の復帰と明るい材料も見えてきています。今季初のイタリアダービーについて書いておきます。

運が味方した前半

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、クアドラード、ダニーロ、ブレーメル、サンドロ、ファジョーリ、ロカテッリ、ラビオ、コスティッチ、ミレッティ、ミリク。ベースは4-4-2と見たが、5バックへの可変守備を見せていた。攻撃時は中盤ダイヤモンド型の3-4-3へと変化させていた。

インテルのスタメンは、オナナ、ダンフリース、シュクリニアル、デフライ、アチェルビ、ディマルコ、バレッラ、チャルハノール、ムヒタリアン、ラウタロ、ジェコ。5-3-2をベースに守備、攻撃を行う、スタンダードなチームだった。ブロゾビッチが怪我のためベンチスタートだったからか、3バックとブロゾビッチがポジションチェンジを繰り返して行う流動的なビルドアップは鳴りを潜めていた。それでも1人1人のフィジカル、テクニックのレベルは非常に高く、高いフィジカルを活かしたボールキープと素早いパス回しでユベントスのハイプレスを難なく躱していた。さらに素早いトランジションによるカウンターも迫力があった。

ユベントスの守備

ユベントスは、守備では4-4-2をベースにコスティッチを上下動させる。ボールが敵陣にあれば4-4-2でハイプレスに出る。ファジョーリが右サイドへのパスをケアしながらCBにまでプレスに出ていた。ミレッティはチャルハノールとデート。中盤真ん中を経由させないようにして、攻撃をサイドへと迂回させていた。その時間を使って守備ブロックを敷いて構える守備へ移行する。
インテルがポゼッションを確立してハーフウェーラインを越えられたらコスティッチを下げて5バックで守るように設定されていたように思う。最終ラインの人数を増やしてゴール前を堅く守りつつ、ファーサイドもケアする。5-3-2で構えて守りながら、サンドロ、ダニーロ、ブレーメルの機動力も活かして守備ブロックの中へ入れられるボールにはディフェンスラインから強く出て潰しにかかる。さらにボールを深い位置まで運ばれたら、ミレッティも中盤に下がって5-4-1でゴール前を厚く守っていた。守備の形を3パターン用意して段階的に使い分けていた。
また、ネガティブトランジションも格段に速くなっており、インテルの迫力のあるカウンターに対しても中盤以下の選手が同等の速さで帰陣して決定機を作るまでには至らせなかった。特にファジョーリ、ミレッティの2人は最前線から全速力で戻ってきていた。時にディフェンスラインにまで下がってボールを抑えに行き、カウンターを防いでいた。
しかし、25分のジェコ、42分のダンフリースの決定機は、アッレグリがコメントに残した通り、運が味方した。どちらかが決まっていれば試合展開は異なっていただろう。

ユベントスの攻撃

ユベントスの攻撃ついては、ダニーロ、ブレーメル、サンドロの3人で後方の数的優位を確保。さらにロカテッリが2トップの間をとって牽制して、3バックに時間を与えていた。それでもインテルはバレッラもしくはムヒタリアンを上げてハイプレスをかけてきた。その時はサイドに開いたクアドラードとコスティッチを使ってボール保持を狙っていた。この試合で目立っていたのはサンドロだった。元々サイドバックなだけあって高い機動力を持っており、バレッラのプレスが遅れるとドリブルで入れ替わって前進したり、ズバッと縦パスを通すなど、ビルドアップの起点として素晴らしいプレーを見せていた。
ハイプレスに対してロングボールを蹴ることもあったが、フィジカルで上回るインテルに悉く跳ね返されており、守備への時間稼ぎといった意味合いが強かった。

中盤を形成したロカテッリ、ファジョーリ、ラビオ、ミレッティは流動的にポジションを入れ替えていた。互いのポジションチェンジに対して開いたポジションを埋めるように動くことができていた。インテルのマークを混乱させて中盤を使ってボールを動かすことに繋がっていた。前半はユベントスがボールを保持する機会も多く、中盤を使ったボール運びから高い位置を取っていたコスティッチにボールを渡してクロスを狙っていた。その時、ミリク、クアドラード、ラビオもペナルティエリアに入ってきていた。インテルの3バックに跳ね返されてしまったが、ペナルティエリア内に人数をかけられるようになっていることは頼もしい。また、コスティッチもインテルの3バックの高さを警戒してか、グラウンダーのクロスを敢えて選んでいたようだ。この辺りのクロスの選択もコスティッチらしくて面白かった。

カウンター炸裂の後半戦

後半もお互いにボール保持から決定機は作れず。そうこうしているうちにインテルのコーナーキックからクリアボールが流れたところをバレッラの密着マークを利用してターンしたコスティッチが左サイドを独走。マイナスに折り返したショートクロスをラビオが右足インサイドで逆サイドネットへ流し込んだ。注目すべきはミリク、ファジョーリ、クアドラードもペナルティエリアまで走り込んでいたことだ。昨季、もしくはこれまでのユベントスならば、ミリクが走り込んで終わりだっただろう。チャンスと見るやコスティッチを筆頭に5人もの選手が敵陣ペナルティエリアまで走り込む。これだけの迫力のあるコレクティブカウンターを撃てるようになっている。今のユベントスのカウンターはどんなチーム相手でも脅威を与えられるだろう。特筆すべきはコスティッチだ。左サイドを守備で上下動しながら、カウンターの際には必ずと言っていいほど最前線まで駆け上がってくる。ユベントスのカウンターを牽引している。さらにシュート力、ラストパスのアイデアと精度も高く、カウンターを高い確率でシュートまで繋げてしまう力を持っている。

一方のインテルもラウタロ、コレアに決定機が訪れたが、シュチェスニーがビッグセーブを見せてチームを救ってくれた。ただ、後半のインテルの決定機はユベントスのパスミスが原因だった。今回はシュチェスニーやダニーロがシュートを防いでくれたために事なきを得ているが、迂闊なパスミスを減らしていく努力をしていかなければならない。今度は致命傷になりかねない。

原点回帰のユベントス

ボール保持からの攻撃の質も向上しつつあるユベントスだが、基本的なゲームプランは守備で試合をコントロールしてカウンターもしくはセットプレーで得点して逃げ切るというものだ。伝統的なユベントスの戦い方である。そこにボール保持からの攻撃を組み込んできているように感じる。守備をベースにゲームを組み立てるゲームプランを成立させるために獅子奮迅の活躍を見せているのが、ミレッティ、ファジョーリの2人だった。ミレッティとファジョーリはネガティブトランジションで恐ろしいスピードで守備に戻ってインテルのカウンターに対応した。彼らがいなかったら、インテルのカウンターに対して数的不利に陥って失点していた可能性が高い。必死に戻って守備をする彼らのプレーにネドベドやマルキージオら往年の名プレイヤーの姿が重なって見えたのは、私だけではないだろう。ユベントスのDNAは、下部組織で育った彼らに脈々と受け継がれているように感じた。

もちろん、ロカテッリの危険なスペースを予め埋める守備対応は円熟の域に達しつつあるように思うし、ダニーロ、ブレーメル、サンドロの身体を張った守備も素晴らしかった。守備に対して手を抜くことなく最後まで諦めない姿勢がチームに共有されつつある。全員で守備に取り組み、守備で試合を支配する。その上で人数をかけた迫力のあるカウンターでゴールを狙う。いずれのプレーもフィジカルの負荷が大きく、その負荷を物ともしない強靭なメンタル、スタミナ、スピード、自己犠牲を厭わないチームスピリットが必要だ。それらを兼ね備えた頼もしい選手たちが揃ってきている。しかもユベントスの下部組織で育った若い選手たちがその中心にいる。ミレッティ、ファジョーリ、ソウレ、アイリング…。まだまだ荒削りでミスもあるが、ダニーロを筆頭にそのミスをカバーしてくれる兄貴分たちもいる。ゲームを読んで方向性を示してくれるロカテッリもいる。豊富な知識と経験を持ち、守備の構築にかけては世界トップクラスの監督もいる。

ここ最近のユベントスは、若い選手を中心に、彼らの成長を共に喜びながらチームとしても成長しているように見える。ようやくユベントスがチームになってきた。彼らの姿を、プレーを見ることはこの上ない幸せである。

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