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セリエA 第20節 ユベントス vs ナポリ 〜攻撃と守備は等価値

クリスマス休暇も明け、セリエAが再開しました。ユベントスはいきなりナポリ、ローマ、ミランとのリーグ戦が組まれており、インテルとのスーペルコッパも控えています。新年1戦目となったナポリ戦を簡単に振り返っておきます。

機能した攻撃

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、クアドラード、デリフト、ルガーニ、サンドロ、ロカテッリ、マッケニー、ラビオ、ベルナルデスキ、モラタ、キエーザ。

キエッリーニがコロナ感染で出場できず、ボヌッチも大腿部の違和感で出場を見送ったとのこと。ルガーニとデリフトのCBコンビを起用することになった。フィオレンティーナ戦は右にルガーニ、左にデリフトだったが、ナポリ戦では左右を入れ替えてきた。右利きのデリフトのビルドアップ力をより活かすためか、もしくはクアドラードとルガーニのセットを避けるためなのか…。ルガーニはどことなく緊張しながらおそるおそるプレーしていたように見えた。しかし、多少判断が遅れて危ない場面もあったもののそれなりにプレーできていたように思う。フィオレンティーナ戦でも目下絶好調のブラホピッチを抑え込んだ。自信を持って堂々とプレーしてほしい。なお、デリフトと組んでいるので、ルガーニが後ろに構えてカバーすべきなのだろうと思う。ボヌッチの状態次第だが、ローマ、インテル、ミランといった国内の強豪クラブとの試合でもデリフト、ルガーニのセットで戦うことになるかもしれない。DFはまずは守備だ。互いの連携、ポジショニングを深めていってほしい。

ナポリ戦は、攻撃が機能したと言っていい。攻撃のメカニズムは、主に2CBとロカテッリが後方でのボール保持を担っていた。時には擬似的に3バックを形成して後方での数的優位を確保、ラビオ、左右のSBが状況に応じてフォローに入る。キエーザ、ベルナルデスキはサイドに張ってボールを待つが、SBの上がりに合わせて中にポジションを移動させていた。マッケニーは常にライン間にポジションを取り続け、ナポリの守備陣を牽制し続けていた。低い位置のロカテッリからベルナルデスキがライン間でボールを受けて裏へ走るキエーザへのスルーパスからシュートに持ち込むなど、これまで以上に相手守備陣の「中」を突いた攻撃が多く見られた。ウイングやSBをタッチライン際に張らせることでピッチの幅を使い、相手の守備陣型を間伸びさせ、マッケニーやベルナルデスキ、キエーザといったライン間を使える選手を用意したことで「中」も使える状況を整えた。そしてピッチの状況を読み取り、的確にボールを配球できるロカテッリを後方に配置して、中と外を使い分けた攻撃を繰り出そうとした。このポジショニング、タスクの整理によって、中、外、両方を使った攻撃ができるようになり、ナポリに守備の的を絞らせなかった。攻撃は戦術的に整備され、見事だった。シュート数、ペナルティエリア内でのシュート数ではナポリを上回っており、攻撃を完結させることもできていた。明確な決定機も複数あり、狙い通りの攻撃ができていたといえる。

課題は中盤の守備

ユベントスはうまく攻撃を完結させられていた。トランジションの回数も抑えて、構えて守備をする機会を増やすことにも成功していた。ナポリ戦では、アッレグリが目指す静的な試合運びができていたように思う。

しかし、結果は1-1のドロー。ナポリにも決定機を複数回作られており、守備には不安を残すことになってしまった。

いくつか要因はある。

まず、ナポリの攻撃も戦術的に整備され、良かったということ。ナポリは攻撃の局面では前線の4枚に加え、サイドバックのグラム、中盤のデンメが攻撃参加をかけて攻撃の枚数を確保している。特に、デンメはスーパーな選手で、攻撃参加のタイミングをほぼ間違えることはなく、運動量も抜群で守備での貢献度はチーム随一。ゴール前まで侵入して攻撃参加したすぐ後、素早いトランジションでボールに蓋をして相手の前進を阻むと、ボールを奪いきれなかったら即座に中盤の守備に戻って中央の危険なスペースを消してしまう。戦術理解度が高く、技術もあって、運動量も豊富。プレミアのトップ4のチームでも十分通用する選手であり、さらにステップアップする可能性も高いと思う。ユベントスもこういう選手を補強したいところだが…。
それは置いておいて、ナポリはユベントスの4バックに対して攻撃の枚数を5枚は確保していた。例えば、失点したシーンでは、中盤の守備ラインの前でインシーニェが横へのドリブルをしてボールを持っていたとき、左サイドにはグラムが上がってきており、ペナルティエリア付近にメルテンスとジエリンスキ、右からポリターノがボックス内への侵入を窺っていた。左から中央にボールを運ばれて、右のポリターノを使われ、ピッチの横幅を上手く使われたシーンだった。4バックでこのような攻撃に対応するのは難しく、ユベントスも今季は必要に応じて5バックへの可変を取り入れてきた。しかし、その要のダニーロをケガで欠いてしまっており、5バックへの変化は現状難しい。63分のナポリの決定機も、今度は右から左へとボールを動かされてクアドラードの外からペナルティエリアに侵入されてシュートを打たれてしまっている。5バックへの変化が使えないことが守備の強度の弱さにつながっている。

失点したシーンは、サンドロがインシーニェからの浮き球を跳ね返してくれていればよかった。しかし、サンドロの前にいるはずのキエーザが予定のポジションに戻ってきておらず、サンドロはキエーザとサンドロの間でポリターノにボールが入ることも警戒しなければならなかったことも考えると、サンドロの対応が後手を踏んだのも致し方なしと言えると思う。その後は、ルガーニがサンドロのカバーで下がったことは当然として、ポリターノの後ろに回ったメルテンスを中盤から下がって捕まえに行くべきだった。しかし、実際のシーンでは、左サイドバックのサンドロとマッチアップしているポリターノの後ろに回ったメルテンスに中央の守備に当たっていたロカテッリがマークにつかなければいけなかった。明らかに左サイドの守備に不具合を抱えていると言っていいだろう。本来ならば、ラビオかキエーザが下がってマークにつくべきだった。では、なぜそうならなかったのか。インシーニェの横のドリブルに対して、マッケニーが中盤の守備ラインから出てマークについているが、ラビオも出てきてしまっている。それでも潰しきれずにポリターノに浮き球を出させてしまっている。そして、キエーザは中盤の守備には参加せず、ウォーキングしている。
守備に出たら最後までマークにつく。残りの選手は守備に出た選手をカバーするポジションをとる。という、ゾーンディフェンスにおけるディアゴナーレの原則を守りきれていない。横に移動するインシーニェに対してマッケニーが振り切られずに着いて行き、ベルナルデスキ、ロカテッリ、ラビオ、キエーザが中盤の守備ラインを維持していれば、ラビオとキエーザの位置も下がった位置になってメルテンスのマークにつけたのではないか。

結局、守備意識の欠如、守備戦術の理解不足が問題だと言える。ナポリ戦のスタメンで言えば、ロカテッリ以外は守備に不安を抱えている。マッケニーはマシになってきていると思うが、ラビオ、ベルナルデスキは守備で気を抜いてしまう場面が何度かあり、それが危ない場面に繋がってしまっている。キエーザに至っては、そもそも守備をする気があまりないのだろう。守備のポジションにつくのが遅く、思い出したように自分の前の選手にボールが渡った時だけ追いかけ回す程度だ。本来であれば、守備の戦術理解も高いロカテッリが最終ラインと中盤の守備ラインを上下して5バックと4バックの使い分けができればいいのかもしれない。しかし、ロカテッリが中盤の守備ラインから抜けると、中盤の守備が崩壊してしまう。アッレグリが真っ先に取り組むべきなのは、中盤の選手たちに守備戦術と守備意識を叩き込むことだろう。

キエーザとマッケニー

特に気にしておくべきなのはキエーザだろう。ナポリ戦でも得点を取り、他にも多くの決定機に絡んだ。ユベントスの攻撃的な選手の中では、最も得点の匂いがする選手だ。左WGを基本ポジションとして、SBの上がりに合わせて中に入ってシュートを狙いに行く。キエーザ本人もインタビューで自分は本来はウイングの選手だと言っていたようである。4-3-3をベースにこのタスクをキエーザに任せるならば、左SBは攻撃の時には常に高い位置をとり続けられるペッレグリーニがサンドロよりも適任だろう。そして、マッケニーはライン間にポジションを取り続けられることから外せないとすると、左CHの選手にはキエーザの分まで左サイドの広範囲をカバーする守備を任せたい。現状であればベンタンクールが最有力か。キエーザに守備意識と守備戦術を植え付けるのは時間がかかるだろう。それまでの間は、キエーザを使うのであれば、タスクの割り振りで解決を模索していった方がいいと思う。サラーも、マネも、マフレズも、ネイマールですら、少なくとも守備のポジションにはついてチームの守備を助けている。時には全力のスプリントで相手のボールを止めにかかる。キエーザは、守備には得点と同等の価値があることを認めて、守備にも真摯に取り組んで欲しいと切に願う。

一方、マッケニーは相変わらず素晴らしいパフォーマンスだった。守備でもポジショニングを間違えることはほとんどなかったし、サボることもなかった。何より、攻撃時にライン間にポジションをとり続けられる点は、現在のユベントスでは稀有な存在で、マッケニーがいるといないとでは攻撃の質に大きな差が出てしまいそうである。キエーザの得点に繋がった長い距離のフリーランが象徴しているように、運動量、フィジカル能力も高い。ロカテッリ、デリフトと並んで、ユベントスにとって欠かせない選手にまで成長したと言っていいのではないだろうか。さらに、見た目がレアル時代のロナウド(ブラジル)にそっくりなところが、どことなくかわいく感じさせてくれる。ますます愛される選手になった。

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