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セリエA 第5節 フィオレンティーナ vs ユベントス 〜過密日程を乗り越えるために…

ハイスピードでハイプレスを敢行するフィオレンティーナとの一戦はフィジカルな戦いとなりました。結果は1-1の引き分けでしたが、アッレグリの選手起用に疑問を感じました。今回はユベントスの選手起用に的を絞って試合を振り返ってみたいと思います。

チグハグなユベントス

ユベントスのスタメンは、ペリン、クアドラード、ブレーメル、ダニーロ、サンドロ、マッケニー、パレデス、ロカテッリ、ディマリア、ミリク、コスティッチ。4-3-3の並びがベースになり、左CBにダニーロ、右SBにクアドラード、アンカーにパレデス、右ウイングにディマリアを入れる超攻撃的布陣で試合に臨んだ。人選を見る限り、若い選手たちのフィジカルを全面に押し出してハイプレスに出てくることが予想されるフィオレンティーナに対してボール保持で対抗しようという意図に見える。

だとしたら、ミレッティが必要だったのではないか。パレデスは加入後間も無く、チームトレーニングに参加できた期間も1週間もなかっただろう。周りとの連携や戦術理解を深める時間はなかったはずだ。フィオレンティーナのハイプレスの強度も併せて考えると、後方でのボール保持から縦へのパスが入らないことも十分考えられる。そうなるとロカテッリも下がってビルドアップのサポートに入ることが多くなりそうだ。ライン間にポジションを取れるミレッティがいないことでボールの前進が困難になるようにも思った。ボール保持から前進するためには、ライン間に人を置くことが必要だが、ユベントスで最もライン間をうまく使えるのは、おそらくミレッティだ。マッケニーのチョイスは守備のことを考えた上だったのかもしれないが。

ただ、それならクアドラードのサイドバック起用を考え直すべきだったようにも思う。フィオレンティーナの同点ゴールは、クアドラードでなければおそらくラインを揃えてオフサイドを取れていただろう。また、地味にシュチェスニーの不在も痛かった。ペリンも悪くはないが、ショートパスの選択、精度はシュチェスニーの方が上だ。フィオレンティーナのハイプレスにボール保持で対抗するためにはGKも重要なファクターだったと思う。

試合展開

さて、実際の試合はフィオレンティーナが高速のハイプレスを敢行。明らかにボールではなく、体にぶつかりに行っていてもファウルを取らないジャッジも相まって、フィジカルな試合へと変貌していく。とくにアムラバトはとにかく体にぶつかりに行くダーティなプレーをしていたが、ほとんどファウルを取られることはなかった。

こうなるとフィオレンティーナが優勢となる。ハイプレスと無茶な当たりでボールを確保してユベントスを押し込む。ユベントスは4-5-1の守備ブロックを敷いて構える守備で対抗。中を固めて、クロスをブレーメルとダニーロが跳ね返す。ボールを後方で保持してボールを前進させようとするが、ハイスピードでぶつかりにくるフィオレンティーナのハイプレスに阻まれて前進できない。やはり、フィオレンティーナの高速ハイプレスにボール保持で対抗するためには、いきなりパレデスを入れるのではなく、これまでボール保持に取り組んできたメンバーを送り出さなければならなかった。ボール保持からの攻撃においてキーマンとなっていたデシーリオ、ブラホビッチ、ミレッティはピッチにおらず、ロカテッリもアンカーポジションから外している。要は急造のビルドアップに近いものがあり、鍛錬されたフィオレンティーナのハイプレスに対抗するにはまだ戦術理解や連携が十分ではなかったということだろう。

ただ、選手のクオリティは高いユベントス。そんな中でもハイプレスを剥がしてひっくり返すことに成功してミリクが先制。その後もうまくボールが跳ね返ってハイプレスの裏を取ることに成功したが、マッケニーがフリーにも関わらずシュートを撃たなかったりと相変わらずフィニッシュで手間取るユベントス。ボールを保持したフィオレンティーナはディマリアとクアドラードが並ぶユベントスの右サイドに照準を絞って攻撃を展開。それでもディマリアはあまり守備に戻ってこなかったため、クアドラードが守備で奮闘するハメに。右サイドの守備のサポートのためにロカテッリが駆り出されてしまい、ボールを奪って前に運ぼうにもロカテッリも後ろに残っているため、ライン間には人がいなくなってしまった。ディマリアがいたこともあったが、フィジカルで潰されてカウンターの起点になってしまうこともあり、昨季の悪い時期のディバラを見ているようだった。

そして、コーナーキックのカウンターからオフサイドを取れずに失点。(ディマリアはバウンドしたボールに触れずに失点にもしっかりと関与してしまっている…。)さらにパレデスの不用意な右手にクロスが当たってPKと自滅の一途を辿るユベントス。ヨビッチのPK失敗に助けられて1-1で折り返すことができた。

後半はフィオレンティーナのハイプレスを剥がすことはほとんどなく、交代策も疲労の色が濃い選手を変える意味合いが強いものだったように思う。4-4-2に変化させて前に起点を作ろうとしたりしてみたものの、結局、まともに敵陣にボールを運ぶこともできずに終了。最後はブラホビッチを温存して引き分けでもOKという采配だった。

ただし、フィオレンティーナにしても決定機と言えるチャンスは得点シーンくらいのもので、クアドラードがサイドバックでなければオフサイドを取っていただろう。引いて守る守備でチャンスを与えなかったことは悪くなかった。結局はユベントスがCLのためにターンオーバーを敢行したことが全てだったと言えそうだ。

今季のスケジュールと選手起用

今季は11月にワールドカップに伴う中断期間がある。それでも例年と同じ試合数を消化しなければならない。CLのグループステージ6試合は9月10月でやり切らなければならない。かなり特殊な日程が組まれており、1週間に2試合行うという殺人的なスケジュールが次々とやってくる。今季は選手の疲労度のコントロールがカギとなるだろう。8月27日に行われたローマ戦から9月17日のモンツァとの試合まで試合間が1週間空くことはない。その後はインターナショナルマッチウィークで選手たちは各国の代表に呼ばれて休めない。さらに10月も連戦が続く…。うまく選手を入れ替えて疲労を溜めないように注視していく必要があることは明白だろう。

日本のプロ野球では、昨年日本一に輝いたヤクルトスワローズが中10日で奥川投手や高橋奎二投手を先発起用したことが話題になった。いいピッチャーだからといって中6日で無理して投げさせるのではなく、しっかりと回復期間を設けて万全の状態で投げさせる方がいいという。もちろん、怪我の防止の意味もある。また、中継ぎ投手についても、勝負所のシーズン終盤までは3連投はさせないという方針でやりくりしていたそうだ。これもコンディション調整と怪我の防止のためだ。投手の肩は消耗品と考えられ、先発投手は100球を目安に降板させるなど、怪我の防止やコンディション調整については、プロ野球やメジャーリーグはかなり気を遣っている。もちろん、野球とサッカーを単純に比較できるとは思っていないが、参考になる考え方だとは思う。

うまく選手を休ませてコンディションを整えた状態でプレーする方がいい。十分な回復期間も与えられないままプレーして怪我をしてしまっては元も子もない。今後も選手を大幅に入れ替えたためにうまくプレーができない試合は出てくると考えられる。その他の上位陣も同じようなスケジュールとの戦いが待っている。スクデット争いのポイントになるのは、上位同士の直接対決になりそうだ。その時にベストメンバーを組めるかどうか。スクデット争いのライバル相手に勝ち点3をもぎ取ることがライバルに差をつける、もしくは差を詰めるために最も効果的だ。そう考えると、ぶつかり合いを仕掛けてくるフィオレンティーナ相手にアウェイでケガ人を出さず勝ち点1を持ち帰るという結果はある意味、大きな価値があることなのかもしれない。


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