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セリエA 第7節 アタランタ vs ユベントス 〜ポゼッション路線の未来

アタランタとのアウェイゲームは0-0の引き分け。特にキーンが下がってからはアタランタのフィジカルに圧倒されて押し込まれる展開が続きましたが何とか守り切って勝ち点1を獲得しました。結果やスタッツを見ると厳しいようですが、アタランタのハイペースなフットボールは相手にすると相当厄介なもの。それより、ユベントスがアタランタを相手にしてもボール保持に意欲を見せていた事に少々驚きました。今季は本気でポゼッション路線を継続していくつもりなのだと思います。アタランタ戦を通じて、ユベントスのポゼッション路線の未来について考えてみたいと思います。

アタランタにもポゼッション

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、マッケニー、ガッティ、ブレーメル、ダニーロ、カンビアソ、ファジョーリ、ロカテッリ、ラビオ、キエーザ、キーン。5-3-2がペースフォーメーションとなることは変わりありません。注目したいのは、一気呵成にハイプレスに出てくるアタランタに対してショートパスを中心にポゼッションを試みていたことです。相手にボールを渡してカウンター狙いも考えられる中、後ろから繋ぐ意識を強く持ってプレーしていたことには少々驚きました。それだけ、ポゼッション路線を歩むことに本気で取り組んでいるということでしょう。

アタランタは5-4-1をベースに、速く選手を上下動させてボールホルダーに強く当たってきます。そのプレスに連動してボール周りの選手にマンマークでついてパスコースを消し、デュエルでボールを奪おうとします。スプリントでプレスに出てくるため、ボールを持つ選手は時間を奪われ、少しのミスも許されない状況に追い込まれます。ここで技術やフィジカル、もしくはプレースピードで上回ってプレスを外せればチャンスになります。キエーザやロカテッリは技術で、マッケニーやキーンはフィジカルでプレスを外すシーンがありました。また、縦パスでプレスに出てきた選手の背後をとるシーンもあり、前半は苦し紛れのパスは少なかったように思います。問題だったのは、プレスを外した後の連動がなかったことです。せっかくプレスを外して前を向いてフリーな選手を作っても、周りの選手が連動して動けていませんでした。裏に走り抜けたり、マーカーに駆け引きを仕掛けたりする選手はおらず、せっかくフリーになった選手も効果的なプレーをする前にマークにつかれてしまってチャンスに繋がらないシーンが何度もありました。原因としては、①チームとしての約束事が細かく決まっていないこと、②状況を読む力が不足していること、③お互いを信用しきれていないこと、などが考えられるでしょう。おそらく全てが関わっているんだと思いますが、配置や決まり事で出来ることは限られています。②について個々の選手が意識を高く持って成長を続けていくしかなさそうです。

決定機は少なかったものの、バイタルエリアには何度もボールを送り込んでいましたし、中盤の守備ラインの裏もとれていました。ロカテッリがいくらチャンスに繋がるパスを届けてもそのほとんどをフイにしてしまっていました…。

CBの強化は必須

5-4-1から人を前に出すプレスを仕掛けてくるアタランタに対して、ユベントスは3CBとロカテッリが後方でボール保持を狙いました。ロカテッリがワントップの背後にポジションをとってガッティもしくはダニーロをフリーにしていました。うまく数的優位を作って後方でフリーの選手を作ることには成功していました。問題はその後で、ガッティ、ダニーロ、ブレーメルは後方で作った時間とスペースをうまく使うことができませんでした。ドリブルで上がるわけでもなく、パスを出すわけでもなく、その場でボールタッチを繰り返し、時間を浪費してしまっていました。動き直してスペースでボールを受けようとしたロカテッリにパスが出て来ずガッティにキレるシーンを何度見たことか。その間にアタランタはポジションを修正し、マークを確認し直して守備組織を整えてしまいます。しかもその後ハイプレスに出てくる時間まで与えてしまっていました。後方でフリーの選手を作っても、この体たらくではアタランタの守備組織を崩すことなどできるわけもありません。せめてドリブルで持ち上がって相手の中盤の選手を釣り出すくらいはしてほしいところです。

結局、現在のユベントスは後方で時間とスペースを作ることはできています。相手のハイプレスに合わせて人数を調整し、フリーな選手を作るところまではうまくいってはいるのですが、その先、つまりフリーになった選手が得た時間とスペースを次の選手に繋ぐことができていません。フリーになったCBの選手が時間とスペースを使い切ってしまっています。後方の選手で時間とスペースを前に繋げる選手はロカテッリのみ。結局、ロカテッリ番をつけられたらビルドアップの質が一気に低下してしまいます。CBのビルドアップ能力の強化は最重要項目として取り組まなければいけません。トレーニングで強化するのか、冬の移籍で獲得するのか。個人的にはガッティではなくルガーニを使えば多少は改善されるのではないかと思ったりするのですが…。

アッレグリについて

現在のユベントスのポゼッションスタイルについて見ると、①CBのビルドアップ能力の低さ、②攻撃時の連動のなさ、の2点が大きな課題としてあるように思います。特に②については、各選手の動き出しの判断が100%マイボールと明確になってからなので、プレスが外せるかな?ボールが抜けてくるかな?という50:50くらいでは攻撃の一歩を踏み出しません。この辺りのチューニングはアッレグリの指導のような感じがします。負けないことを最重要視する監督ですから。そして、その指導も間違っていないと思います。どれだけ高い確率でもボールが抜けてきそう、プレスを外せそう、という予測の段階で攻撃に動き出して相手の守備に引っ掛かったら、相手に大きなチャンスを与えてしまいます。守備に切り替わった時点で、その攻撃に動き出した選手はすでに相手に置いていかれてしまっているわけですから。失点1と得点1は同等の価値だとすると、失点を避けるプレーも得点を狙いに行くプレーと同価値ということになります。ゲームを観る側からするとリスクを取って攻めに行けばいいのに、と思ったりしますが、その結果失点して負けてしまっては目標とするCL出場権から遠ざかってしまいます。現在の監督はアッレグリ。勝ち点1でも積み重ねていった先に目標達成、なんならスクデットという大きな到達点があるかもしれません。実際、アタランタの猛烈ハイプレスにも対抗しうるポゼッションも見せてくれたわけです。アッレグリの判断を信じることにしてみましょう。

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