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セリエA 第4節 ユベントス vs ラツィオ 〜全方位型ユベントス

インターナショナルマッチウィークを挟み、前節ナポリを破ったラツィオとの一戦は、3-1で勝利。内容を見ても、完勝と言っていいでしょう。プレシーズンマッチから第3節までを経て、いいバランスを見出しているように思います。

2段構えの堅い守備

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、マッケニー、ガッティ、ブレーメル、ダニーロ、コスティッチ、ミレッティ、ロカテッリ、ラビオ、ブラホビッチ、キエーザ。定番の5-3-2でスタートしました。両翼にマッケニーとコスティッチを配して、両サイドの上下動をメインにプレーさせています。ネガティブトランジションの際に混乱を生じさせないように調整しているのは前節と同じです。素早く5-3-2の守備ブロックを形成してスペースを埋めてラツィオの攻撃を封殺しました。5-3-2で守った時の堅さは昨シーズンから証明されています。まずは簡単に失点しないことを基本として今節に臨みました。

さらにタイミングを見てハイプレスも織り交ぜ、敵陣でのボール奪取も狙っていました。2CBに2トップが寄せ、3CHには3CHをぶつけ、SBにはWBを上げてプレスに出ていました。同サイドをマンマークでついてハイプレスを仕掛けていましたが、なかなかボールを取り切るところまでは行けていないように思います。それは、ユベントスの選手がボールが出るまではマークについている相手との距離を詰めない守備をしているからです。予測で動かないと言ってもいいでしょう。パスが出るまではマークにつく相手との間に一定の距離をとっています。逆を取られてハイプレスを完全に外されてしまうことは避けたいということなのでしょう。相手の前進を止められればOK、囲い込んで奪うか、後ろの選手がボールの出た先で潰してしまうか。全速力でハイプレスに行くのではなく、ゆっくりとハイプレスに出ていくイメージです。高い位置で取り切ることは少ないかもしれませんが、ハイプレスを外されて一気にひっくり返されることもない。実際、ハイプレスをかけたにも関わらずボールを運ばれるケースは多々ありますが、そのまま決定機に結び付けられてはいません。ボールを逃がされてはいるけれども、遠回りさせて守備ブロックを形成する時間を稼いでいます。ローリスクローリターンのハイプレスを選択していると言えるでしょう。

リスクを冒さないハイプレスと、引いて守る堅い守備。この組み合わせでラツィオにチャンスを作らせない。守備でゲームをコントロールする術を見せていました。

ポゼッションとカウンター

そして、ラツィオに3点を叩き込み、その他にも決定機を演出した攻撃についてです。

今季のユベントスはポゼッションに力を入れているようです。1、2節ではカンビアソとウェアを両WBとして先発させ、中への移動を含めた大胆なポジションチェンジを使ってボールを保持。CBにもサンドロを使ってドリブルやショートパスを中心にビルドアップを試みていました。ボールを保持して相手を押し込み、敵陣でプレーする時間を長くすることに成功していました。ポジションを入れ替える分、ネガティブトランジションの際に本来戻るべきポジションから遠くなり、他の選手が守るべきポジションに別の選手が行かなければならなかったりして混乱が起きていました。特にカンビアソはWBの位置からCHの位置に入ることが多く、結果としてネガティブトランジションの際にサンドロが外に吊り出されてハーフスペースが空き、ピンチを招いていました。

3、4節はマッケニーとコスティッチを先発させてポジションチェンジをしない設計にしてネガティブトランジション時の混乱を修正してきました。その分、ポジションチェンジによる相手のマークを混乱させる効果はなくなりましたが、ボール保持への意欲は持ち続けています。今節は4-3-3をベースにしているラツィオが相手でした。マッケニーが上がり、キエーザが左サイドに張り出すことでサイドバックを引き付け、3バックとコスティッチで3トップに対して数的優位を作ってボールを保持していました。ただし、ラツィオに与えた決定機はいずれも自陣でのパスミスでショートカウンターを喰らったものでした。ブレーメルはポゼッション志向に慣れていないようで、素早く寄せられると特に慌ててしまって中途半端なパスを出してしまっています。今後、ハイプレスのターゲットになりそうな予感がします。守備のことを考えると、ブレーメルを外すことはできません。ボール保持の仕組みの強化とブレーメルの成長が必要だと思います。トリノではリーグNo.1ディフェンダーを勝ち取り、昨季はチームMVP級の活躍を見せた上でさらに成長の余地があるブレーメル。どんな選手になるのか楽しみです。

さらにラツィオが明確なロカテッリ番をつけてこなかったためにロカテッリがフリーでボールを持つ機会が多くなり、ユベントスのリズムでボールを保持することができました。ロカテッリはすでにユベントスの中心選手であり、攻撃のリズム、方向、スピードを決定する選手です。ゲームを落ち着かせたい時にはGKへのバックパスも使ってボールを保持する姿勢を示し、チャンスと見るや鋭い縦パス、大きなサイドチェンジで攻撃を加速させます。特に今季はサイドに振るロングボールをよく蹴っており、シャビ・アロンソのイメージにさらに近づいている印象を受けます。先制点をアシストしたワンタッチパス、2点目の起点となったサイドチェンジを見れば、そのクオリティは一目瞭然でしょう。ロカテッリが自由にボールを持てれば、ユベントスは攻撃のリズムを見出し、多彩な攻撃を繰り出すことができます。サッリの失策は、ロカテッリに明確にマークをつけず、フリーにしてしまったことでしょう。

今季調子を上げてきているミレッティが右ハーフスペースのライン間にポジションをとってラツィオ守備陣を引き付けている分、マッケニーがフリーになっていました。マッケニーはロカテッリやダニーロからサイドチェンジを受け取って1on1をしかけて右サイドからチャンスを作っていました。ただ、アイソレーションを仕掛けるならマッケニーよりキエーザの方が良いのではとも思いますが…。ミレッティは積極的にペナルティエリアにも飛び込んでチャンスメイクする意識が高く、ユベントスの攻撃に欠かせない存在になっていると言えるでしょう。

特筆すべきは、ペナルティエリアへ送り込む人数が増えていることです。2点目のシーンでは、マッケニー、ミレッティ、ラビオ、キエーザ、ブラホビッチがペナルティエリアに入っていました。しかもブラホビッチを除く4人でペナルティエリア内でパスを繋いでキエーザがシュートを叩き込みました。ペナルティエリアに人数をかけ、得点を狙う姿勢を明確にできています。

そして、鋭さに磨きがかかったカウンターです。5-3-2で堅く守って、ボールを奪ってからダイレクトにゴールに迫る。素早くボールを前に送ってキエーザのスピードやブラホビッチのフィジカルを活かして一気にゴールに向かうカウンターは、2トップのクオリティも相まって絶大な脅威を相手に突きつけています。3節のキエーザ、今節のブラホビッチの得点はいずれもカウンターからゴールネットを揺らしています。この2人がカウンターを狙っているというだけでも、相手チームにかなりのプレッシャーを与えているでしょう。

今季のバランス

1、2節はどちらかというとポゼッションに力点を置いた戦いをしていたように思います。ポジションチェンジも多用しながら、ボールを保持して押し込む試合運びを見せていました。しかし、カウンターから危ない場面を何度もつくられ、試合運びは盤石ではありませんでした。3、4節はポゼッションにも意欲を見せつつ、守備寄りに重心を移している印象です。まずは5-3-2で堅く守りつつ、ハイプレスも活用して守備で試合をコントロールする意識が高かったように思います。その上でポゼッションをスパイスのように効かせているイメージでした。ほとんど相手にチャンスを作らせず、試合を終わらせました。これまでのユベントスらしい戦い方と言えるでしょう。今後、どちらのスタイルをベースにしていくのでしょうか。現状であれば、特にWBの人選によってスタイルも変えているように思います。特にカンビアソかコスティッチか、の選択はポジション重視か守備寄りかに直結していると思っています。先発メンバーを見ると、試合展開がわかるかもしれません。

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