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セリエA 第9節 ミラン vs ユベントス 〜後半、ミスを重ねて

ミランとユベントスのビッグマッチは、0-2でミランの勝利に終わりました。ボールはユベントスが持っていたかもしれませんが、チームの総合力ではミランが上回っていました。ユベントスの歪なチーム構造と、今後の道筋が見えてきたような気がします。

試合について

試合自体は、ミランに対して引いて構えたユベントス。そこからカウンターを狙うが、ミランは素早いトランジションでカウンターの勢いを殺してシュートチャンスを作らせない。ユベントスはボール保持へと移行するものの、決定機を作れず試合は膠着状態で推移していた。しかし、レオンという飛び道具を持っているミラン。レオンにボールを集めて、彼の個人技でペナルティエリアに迫る。ドリブルだけでなく、カットインからパス、ミドルシュートでゴールに迫る。右足の振りが早く、ノーステップ気味でも強烈なシュート、クロスを放つことができる。さらにクロスのタイミングも読みづらく、クアドラードやダニーロは対応に苦労していた。そんな中、前半終了間際にコーナーキックからミランが先制。0-1で折り返す。

なお、オルサート主審はアフターを取らなかったので、ユベントスは少しイライラしていたようだった。プレーが終わっていようが足を蹴ればファウルだ。早い時間帯にファウルをとって試合を落ち着かせておくべきだったように思う。

後半も前半と同じように試合が進んでいたが、ブラホビッチとミリクの連携ミスによってブライム・ディアスに独走ゴールを被弾。前半23分にもブラホビッチの横パスが流れてカウンターを喰らっていたが、ブラホビッチは戻る気配はなかった。間に合わない可能性が高いが、DFがカウンターを一度止めてくれることも十分考えられるわけで、スプリントで戻るべきだろう。この試合もシュートを一本も撃てていない。その上パスミスでチームを窮地に追い込んでしまうのであれば周りからの信頼も失っていくだろう。ただ、ブラホビッチのパスミスが決定的だったとはいえ、ブライム・ディアスの前にはボヌッチがおり、ブレーメルもカバーに回れる位置にいた。その後のボヌッチの対応が最悪だった。中途半端に立ち止まってぶち抜かれてしまうという、1番やってはいけないことをしてしまった。カード覚悟で体を止めにいくか、バックステップで下がって味方の戻りを待つか、他にやりようはあったはずだ。ビッグマッチに相応しくないレベルの低いミスが2つも続いたら、失点するのは必然だ。この2点目で試合は終わった。

現状のユベントスは、勝つためにはとにかく守備で試合をコントロールしつつ先制して逃げ切るプランしかない。どんなにいい守備をしてもアクシデントで失点することはある。ただ、それも1点までに抑えない限り、逆転は難しい。ボール保持から得点するプランがないからだ。相手にリードを許し、引いて守られたら詰んでしまう。前半終了間際の失点がなければ、ユベントスのプラン通りの試合になっていただろう。もしかしたら1点までなら追いつき、逆転もあったかもしれない。しかし、ブラホビッチのパスミスとボヌッチのあり得ないカウンター対応で試合が終わってしまった。そして、2点リードしたミランがそれでも高いインテンシティを保ってプレスをかけてきた。なんとかプレスを外しても、ミランは素早い戻りでブロックを固めてしまう。ボールを持たされたユベントスは何もできなかった。昨季からミランはフィジカルなチームに仕上がっていた。この試合も、フィジカルで押し切られた試合だったように思う。

ユベントスが目指す方向性

ユベントスの経営戦略

現在のユベントスはセリエAにおいては挑戦者だ。しかし、ミラン戦の試合運びは、王者のそれだった。引いて構える守備でミランの攻撃を受け止めてカウンターを狙う。まるで横綱相撲ではないか。しかし、チームのメンタリティも、メンバーも、横綱相撲に相応しくない。守備的に振る舞っても我慢強くプレーできる成熟した選手は少ない。かつてのイタリアの王者として、どっしり構えて守備をするプランは向かないチームになってしまった。これには編成の問題もあるだろう。ロナウドを獲得してサッリ、ピルロに監督を任せた。ボールを保持して攻撃を仕掛けるためのメンバーを集めた。一方で守備で走り回れるメンタリティとフィジカルを持ったマテュイディ、マンジュキッチらは放出した。しかもボール保持のキーマンだったピアニッチをあろうことか財政的な理由からアルトゥールとトレードした。その上でアッレグリを招聘とは、もう混乱の極みだ。何がしたいのか、どんなチームを作りたいのか、全く見えない。ロナウド獲得以降、グッズの販売などの売り上げやSNSのフォロワー数は上がったかもしれないが、肝心のクラブとしての強さ、魅力、文化を失ってしまった。場当たり的な監督交代や補強戦略で100年以上かけて培ってきたクラブとしての存在感を失ったフロントの責任は計り知れないと思う。現代社会では、変化のスピードが恐ろしく速い。そのスピードに惑わされることなく、必要な変化は受け入れて対応しつつ、変化させるべきではない部分を見極めることの重要性を意識せずにはいられない。

目指すチームの方向性

とはいえ、チームは進んでいかなければならない。現在のメンバーでできることをやって勝ち点を積み重ね、スクデット争いに戻る必要がある。新たな歴史を刻むためには、結果が必要だ。

そのために、以下のことを提言したい。

①システムを4バックで固定する

今季、ユベントスは3バックと4バックを併用してきた。しかし、3バックは機能したとはとても言い難い。PSG、ベンフィカに対して3バックで試合に挑み、機能不全を起こして敗北した。1番の問題は、両サイドをクアドラードとコスティッチがそれぞれ1人でカバーしなければならない点だ。クアドラードは守備に不安があるし、コスティッチはユベントスにおけるWBのタスクを理解できていないように見える。何より、相手の攻撃に押し込まれると、クアドラードとコスティッチが攻撃に参加できずにブラホビッチが孤立する現象がより顕著になっていた。守備においても3CHの脇を使われてWBを引っ張り出されて、その裏を使われる。ユベントスの3バック(5-3-2)は中盤のサイドを簡単に取られてしまうという弱点を抱えていた。

おそらく、5-3-2はミリクとブラホビッチを同時起用するために使われていたのだろう。攻撃時に2トップを組むためならば、中盤のラインまで守備で下がることを求めることはない。解決策は、ベースを4バックにして、4-4-2で守備をすることだ。中盤にも4人揃えられるため、中盤のサイドを相手に明け渡すことはない。後の枚数が気になるのであれば、中盤のラインを越えられた時にコスティッチかクアドラードを下げて5バック化すればいい。昨季、クアドラードが行っていた守備だ。コスティッチとクアドラードはハッキリとタスクを割り振ったほうがいいのだろうと思う。「状況に応じてポジションを上げ下げしろ」ではなく、「ボールが中盤を越えたら必ず下がれ」の方がわかりやすく動けるのだろう。2人とも、攻撃的なキャラクターだと思う。守備のタスクは明確にした方がいい。そのためにも、ベースを4バックにしていずれかに守備ラインまで下がるタスクを与え、もう1人には中盤に留まる守備のタスクを与え、守備に関しては明確な指示を出すべきだろう。

②ハイプレスを守備の基本とする

4バックをベースにすると、中盤もしくは前線に人を増やせる。その前に割いた人数を使って、ハイプレスに出る。ボローニャ戦ではオールコートマンツーマンに近い形でハイプレスをかけてプレッシャーをかけて選択肢と時間を奪い、ボールが出た先でボールを奪回していた。ボローニャにまともにボールを保持させなかった。守備で試合を支配した素晴らしいゲームだった。もちろん、ボローニャとユベントスの戦力差、選手の質の差は考慮に入れるべきだ。だが、それでもミラン相手にもハイプレスを仕掛けて欲しかった。

レオンの個人技とジルーのフィジカルを考えた時、マンツーマンはリスクが高すぎると判断したのだろう。しかし、引いて守ってボールを奪う位置が低くなると、ゴールまでの距離が遠くなるし、ボールより前に相手が揃っていることも多くなる。相手にボールを渡すということは、相手にポジションを整理する時間も与えることになるからだ。ボールを保持しながら、後方の選手がカウンターを意識したポジションをとるのは当然のリスク管理だ。それでもゴールまで走り抜けられるスピードとテクニックがある選手、それこそレオンのような選手がいればいいが、今のユベントスにはそんな選手はいない。キエーザの復帰を待たなければいけない。だとしたら、ハイプレスを仕掛けてポジションを整える時間を与えないうちにボールを奪ってカウンターを仕掛けたい。高い位置で奪えれば、ゴールまでの距離も近い。多くの選手が相手ゴール前まで走り抜けることができるだろう。単独のカウンターではなく、複数の選手が駆け上がるカウンターの方が選択肢も多く、相手も守りにくい。

ユベントスは、引いて守ることはいつでもできる。得点を意識するなら、どんな相手であってもハイプレスを仕掛ける守備も選択肢に入れた試合運びをする必要があるだろう。

③クロスを攻撃の主軸にする

さて、ボール保持はなんだかんだでできるようになっているユベントス。あとはポゼッションをシュートへと繋げていくことが必要だ。しかし、それがうまくいかない。ファイナルサードへとボールを運んでも、攻撃が手詰まりになってしまってシュートを打てない。そうこうしているうちにパスがズレて味方が混乱している間に決定的なカウンターを撃たれてしまう。ユベントスの負のスパイラルだ。

だが、よく考えてみてほしい。ウイングに誰を使っているのか。左にコスティッチ、右にクアドラードが第一選択になっている。右にディマリアを使うケースもあるが、その時には右サイドバックにはダニーロかクアドラードが起用されて大外を駆け上がってくる。逆足のウイングを使わず、利き足サイドにウイングを配しているのだ。つまり、利き足でクロスを上げることを前提にしているはずだ。カットインからシュートやコンビネーションを使うことは想定してはいない。ならば、ボール保持から前進して、サイド高い位置にボールを運ぶことはできている。後はコスティッチとクアドラードからクロスを撃ち込めばいいだけではないのか。そのクロスにブラホビッチ、ミリク、ラビオが飛び込めば十分迫力ある攻撃になるだろう。3人とも、高さ、強さはある選手たちだ。逆サイドのウイングもダイアゴナルに飛び込めば、さらに得点の可能性は上がる。セカンドボールは残っている中盤の2枚とSBが競り合いに行けばいい。セカンドボールに対するポジショニングをとっておけば、最低限のリスク管理はできる。少なくとも、下手にパスを回してパスミスからカウンターを喰らうよりはマシだと思う。選手の配置から考えれば、サイドにボールを運ぶことができたら、コスティッチとクアドラードからクロスを上げた方がいいだろう。彼らの利き足の精度と威力は十分相手の脅威になり得る。

まとめ

とまあ、つらつら思ったことを書いてきたが、ミラン戦は実はアッレグリの想定したゲームになっていたはずである。引いて守ってミランの勢いを殺しつつ、セットプレーかカウンターから得点を窺う。2点目がなければ、引き分け、逆転の可能性も十分あった。それでも、結果は0-2の敗戦。ボールを保持しても攻撃の形が見えてこない点が最大の弱点となっている。守備を基調として試合を支配するプランはユベントスの十八番であり、それが出来れば勝ち切れる可能性は高い。しかし、残念ながらそのプランに向いた選手が揃っていない。ブラホビッチは下がらせるより出来るだけ前に居させた方がよさそうだ。ハイプレスを導入して前から守備に出て、ボールを持ったら思い切ってクロスを攻撃のメインにして高さとパワーと数で押し切る方がいい。ブラホビッチを軸にするならその方が合っていると思うのだが…。

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