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セリエA 第6節 ユベントス vs サレルニターナ 〜サイドバック・クライシス

サレルニターナとの試合は、謎の判定基準、VARを使ってオフサイドラインを間違うなど、審判が主役の試合でした。なんとも残念な試合でしたが、ユベントスのチーム編成上の問題が見えた試合でもあると思います。

押し込むユベントス

結果は置いておいて、試合内容に注目すればユベントスは狙い通りボールを保持して攻撃を仕掛け、敵陣に押し込んで試合を進めることができていた。スタッツを見ても支配率、パス本数、総シュート数、枠内シュート数でユベントスが大きく上回っている。後方からライン間に通す縦パスも多く、ミレッティを中心にチャンスも作っていた。

パレデスもサレルニターナの2トップの間にポジションをとってハイプレスを牽制しながら、ボールを受けるとドリブルや縦パスを積極的に狙っていた。ミレッティとポジションを入れ替えたり、スペースに置くパスで味方を動かしたりと、徐々にチームにフィットしてきているように思う。プレーキャンセルがうまく、プレスを外してボールを前進させられる。ミレッティ、マッケニーがライン間をとって、後方から中と外を使い分けたビルドアップでボールを前進させる。ロカテッリがいなくても、ビルドアップからボールを前進させるプレーもだいぶ板についてきた。

サレルニターナは5バックを敷いてゴール前を固めてきた。いわゆるバスを停めるパターンだ。5-3のブロックを低い位置に敷いて中を固められたら、崩すのは中々難しい。前半はミレッティが左ハーフスペースから個人技で打開しようと試みていたが、GKに防がれてしまった。後半はミドルシュートとクロスに活路を見出そうとしたが、ミドルシュートがあれだけ枠外に飛んでいってしまっては苦しい。結局、クアドラードの個人技による突破からサンドロがPKをもらうのが精一杯だった。現状、個人で仕掛けて相手の守備を一枚でも剥がすことができる選手はクアドラードくらいしか思いつかない。個人技での崩しが難しいなら、その他の方法を探すしかない。その一つがクロスなのだとしたら、クロスが上がるタイミングでペナルティエリア内に飛び込む人数を最低でも3人に増やしたい。ブラホビッチ1人では得点は難しいだろう。

例えばサイド深い位置までボールを運んだ後、一度ボールを下げてディフェンスラインを上げさせて、ダイアゴナルランとロングパスで裏をとるような計画的なプレーが必要だろう。マンCはこのプレーで引いた相手から点を取っている。引いた相手をどう崩すか、というこれまでのユベントスからしたら考えられない課題に挑む段階に来ているようだ。これから先の試合では、ポゼッション型のチームが越えるべき壁に挑戦することになる。

サイドバック・クライシス

さて、試合の方はというと、クアドラードとパレデスが浮き球のパスに見事にカブって背後を取られて2失点。1点目はクロスの精度、スピードともに素晴らしいものだったが、2点目はマッケニーが横パスのコースを塞ぐことは可能だっただろう。ブレーメルの手も不用意だった。パレデスの空振りは痛恨だったが、2点目は防ぐことができたと思う。

RSB,クアドラード

ただ、この試合を見ていて最も問題だと思ったプレーは、16分過ぎにクアドラードが横パスをカットされたシーンだ。それまでユベントスが押し込み、サレルニターナはボールを前に運ぶことすら難しい状況だった。敵に塩を送るとはまさにこのこと。ユベントスに押し込まれてセカンドボールを拾えず自陣から出られなかったサレルニターナにゴール前までボールを運ぶチャンスをプレゼントしてしまった。そこからゴール前にボールが送られてサレルニターナのスローイン。落ち着いてビルドアップできる状況になってサレルニターナがボールを保持する時間になり、その流れから失点。クアドラードがロングパスにカブったことも痛かったが、その前の不用意な横パスのカットが元々の原因と見る。

ただ、クアドラードを責める気にはなれない。なぜなら、クアドラードは本来なら「使われる」側の選手だからだ。高い位置に張って、スルーパスやサイドチェンジのボールを受けて、ドリブルやクロスでチャンスメイクする。もしくはスプリントをかけてゴール前に飛び出していくプレーが真骨頂の周りから使われることで本領を発揮する攻撃的な選手だ。そんなクアドラードをサイドバックとしてビルドアップに参加させれば、90分の中でパスミスや判断のミスをするのは、ある意味当然のことだ。むしろ、クアドラードをサイドバックで使わなければならないスカッドを作ってしまった補強プランの失敗と言っていいと思う。

今季、ユベントス所属のサイドバックの選手はクアドラードを除けば、デシーリオ、ダニーロ、サンドロのみ。ダニーロはCBとしての起用もあるし、デシーリオは左右のサイドバックとしてユーティリティに起用されている。となると、右サイドバックはクアドラードしかいなくなる。デシーリオは攻守のバランスがよく頼りになる存在だが、ケガが心配だ。サンドロは好不調が激しく全幅の信頼を置くには心もとない。右にダニーロ、左にデシーリオがベストチョイスだろうが、ダニーロも30歳を越えている。適度に休ませながら起用しなければならないだろう。結局、クアドラードに右サイドバックで出場してもらわなければならなくなる。

コスティッチの加入

コスティッチの加入も一つの要因だと思う。コスティッチの代わりにペッレグリーニをレンタルで出した。もしかしたら、コスティッチは元々はWBあたりで計算していたのかもしれない。しかし、コスティッチは左サイドの高い位置を起点に高精度のクロスを連発し、すでに2アシストを記録。他にもカウンター時にはスプリントをかけて左サイドを駆け上がってチャンスを作り出すなど、攻撃において欠かせない存在となっている。

コスティッチを左ウイングとして固定して左サイドの幅をとらせるなら、右サイドで幅をとるタスクはウイングか、サイドバックに任せることになる。ウイングに任せるなら、ブラホビッチの近くでプレーする選手、ペナルティエリアに飛び込む選手はCHとなる。ミレッティはライン間でボールを受けてチャンスメイクすることが多い。となると、もう1人のCHがブラホビッチの近くでプレーすることを求められるが、中々適役がいない。強いて言うならマッケニーだが、体型が気になる。いや、まだ本調子ではないように思える。加えて、ブラホビッチのサポートがマッケニー1人というのも、迫力に欠ける。そこで、ミリクとブラホビッチの併用となるのだが、さらにペナルティエリアに飛び込む選手としてマッケニーを使っているようだ。攻守のバランスを考えれば、4-4-2の右SHにマッケニーを置くことになる。そうすると、右サイドの幅をとるのは右サイドバックとなる。そのタスクを任せるなら、クアドラードかデシーリオのチョイスになるが、デシーリオは左に回すことも考えられる。クアドラードの右サイドバック起用が多くなる。そして、慣れないビルドアップへの関与を求められてクアドラードが苦しくなる。

いずれにせよ、サイドバックの頭数が足りないことは明白で、その問題が浮き彫りになってきていると言える。

解決策

クアドラードはウイングの位置から中に入ってプレーすることもできるはずだ。コスティッチのクロスに逆サイドから飛び込んできても面白い。クアドラードをウイングに戻すためにも、ダニーロかデシーリオを右サイドバックで使いたい。そうなると、左サイドバックのメインがサンドロになる。これが最大の不安材料だ。また、ダニーロをCBで使わければならなくなると、苦しい。ガッティ、ルガーニがアッレグリの信用を勝ち取ることがダニーロをSBに回すためには必要不可欠だ。

解決策②

冬の移籍に期待する。クアドラードとの契約は2023年までだ。もしかしたら冬の移籍で新たなサイドバックを獲得するかもしれない。キエーザ、ディマリアの復帰を前提とするなら、彼らがウイングの位置から中に入ってプレーできるよう、右サイドで幅をとるタスクを任せられる選手がいい。右サイドの上下動を繰り返すことができるスタミナとダイナミズムは必須だ。出来れば、クロス精度や守備力もあるに越したことはない。そう、リバプールのアーノルドのような。ただ、そんなサイドバックはあまりに貴重で高価だ。冬の移籍で獲得できる可能性はどれくらいだろうか。

解決策③

ただ、心当たりがないわけではない。デヴィンターは今、どこで何をしているのだろうか。昨季、CLのグループステージで見た彼は、右サイドで躍動していた。高さもあり、身体能力も高かったように記憶している。アッレグリがデヴィンターをもう一度トップチームに引き上げて、鍛え上げることはないだろうか。メルカートで獲得できないなら、自前で育てればいい。ミレッティはライン間でプレーできる素晴らしいプレーヤーになりそうではないか。必要なことを教え、プレーするチャンスを与えれば、輝く選手は輝き始める。デヴィンターにも、そのチャンスを与えてはどうだろうか。

最後に…

VARも人が確認するものであり、ミスはあるでしょう。ヒューマンエラーはある意味しょうがない。しかし、オフサイドをチェックするなら、ワイドな画角でまずは全員の位置を確認しましょう…。

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