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UEL R16 2ndレグ フライブルグ vs ユベントス 〜モダン・クラシカル

ケガ人続出でやり繰りに苦労している中迎えたヨーロッパリーグのセカンドレグ。初戦はユベントスが今季ベストの内容で1-0としていました。ただ、フライブルグとしても最少の点差でホームゲームはそこまで悪い状況ではないと捉えていたでしょう。互いがベストを尽くした好ゲームを期待していました。試合は、前半終了間際にPKでユベントスが先制。なおかつフライブルグに退場者が出てほぼ前半で決まりかと思ったら、後半は1人少ないフライブルグの方が躍動する展開に。アッレグリのコメントの通り、後半のプレーをしていてはこの先の勝ち抜けは難しいでしょう。試合の感想を書いておきます。

ユベントスの選手起用について

ユベントスは5-3-2をベースに、シュチェスニー、クアドラード、ガッティ、ブレーメル、サンドロ、コスティッチ、ファジョーリ、ロカテッリ、ラビオ、キーン、ブラホビッチを先発させた。

意外だったのはガッティとキーンだった。ディマリアの代わりにミレッティを使ってボール保持を狙うプランかと思っていたが、キーンとブラホビッチを並べた。キーンの起用によって前線から選手が下りてくるビルドアップはこの試合では封印。ビルドアップはベースフォーメーションの噛み合わせからフリーになりやすいロカテッリを使ったベーシックなメカニズムが中心となった。

また、ルガーニではなくガッティを先発させてきた。ガッティはスピードに難があると思っていたが、少なくともフライブルグのFWに対してスピードで後手を踏むことはなかった。さらに積極的なドリブルでの持ち運びやPKに繋がったペナルティエリア内への攻め上がりなど攻撃においてもチームに貢献。アッレグリも今季の3バックはブレーメルのセンターは不動で、両脇にはサンドロとダニーロという機動力に優れたDFを置いてきた。3CHをフォローするための前に出る守備やドリブルでの持ち運びには機動力は必要だ。ルガーニとガッティを比較した時、足元の技術や経験はルガーニが上だが、機動力ならばガッティに軍配が上がる。結果的にPK獲得という決定的な仕事をやってのけたのだから、アッレグリの慧眼には感服するしかない。

さらにレッドカードによって数的優位に立った後半にはイリング・ジュニア、バレネチェア、スーレとNEXT GENの選手たちを次々ピッチに送り出した。キエーザにも怪我から復帰した試運転をさせ、コンディションを確認。若手に経験を積ませつつ、キエーザ復活の道筋を立てるなどスカッドの強化にも余念がなかった。常に目の前の試合に集中すると言っているが、もしかしたら週末のイタリアダービーのことが頭にあったのかもしれない。

モダンなユベントス

さて、前半はユベントスがフライブルグに対して優位に立っていたと見る(後半はペースを落としたユベントスの体たらくということで割愛)。それは、ベースフォーメーションの噛み合わせと双方の守備の仕組みの取り合わせによる。

ユベントスは5-3-2、フライブルグは5-2-3がベースフォーメーションだった。互いにウイングバックはサイドを上下動して攻撃にも守備にも関与する。となると、ユベントスは中盤で3対2の数的優位となる代わりに、前線で2対3の数的不利を受け入れなければならなくなる。しかし、ユベントスはもともとハイプレスを狙うつもりはほとんどない。前線の数的不利は、少なくとも守備の場面で問題になることはほぼない。一方で、ユベントスの攻撃となった時に中盤の数的優位が効いてくる。フライブルグは3トップをユベントスの3バックにぶつけてハイプレスを仕掛けてきた。しかし、中盤は2枚しかいないので、縦パスの受け手となるラビオとファジョーリをマークしたらロカテッリが浮いてしまう。フライブルグは3トップの真ん中の選手がブレーメルがボールを離したらロカテッリのマークへと移行する形で対抗しようとしていた。しかし、ロカテッリが3バックから距離をとった位置にポジションをとっていたためマークにつくのが遅れてしまうことが多かった。あるいは、ロカテッリがディフェンスラインに下りてきたり、ラビオとポジションを入れ替えたりとフライブルグの守備戦術と駆け引きをしてマークの受け渡しを混乱させてフリーになる瞬間が多々あった。ロカテッリクラスの選手であれば、その一瞬でターンして決定的なパスやサイドチェンジで局面を打開してしまう。ロカテッリを経由して何度となく前線にいい形でボールを届けることができていた。

ベースフォーメーションの噛み合わせを計算して、フリーになる選手を活用してビルドアップを仕掛ける。ちょっとやそっとのハイプレスには動じない、モダンなフットボールを垣間見ることができた。

クラシックなユベントス

その一方で、キーンとブラホビッチの2トップのフィジカル的優位を押し付けた攻撃も仕掛けていた。フライブルグにとっても勝ち抜けがかかった大一番。先制すればスコアを五分にもどせることもあって、プレスへ出るスピードは速く、ウイングバックとセンターバックの飛び出しも遅れることはなかった。総じてフライブルグのハイプレスの強度は高かった。そのため、ショートパスによる前進を諦め、ロングボールを選択する場面もあった。本来ならば、フライブルグの狙い通りのはずだ。ハイプレスを仕掛けて時間とスペースを奪って無理なボールを蹴らせて回収する……はずだった。しかし、そこにはブラホビッチとキーンがいた。アッレグリが再三コメントしてきたように、ブラホビッチはコンディションが上がってきているのだろう。動きのキレ、スピード、量はシーズン前半と比較して格段に向上している。フライブルグのCBが背後から密着に近い距離でマークをしてもモノともしない。足元にボールを収め、味方にパスを出してゴールへと走り出す。ダイレクトパスの精度も向上しており、ブラホビッチを使ったボールの前進はユベントスの攻撃ルートの中でも信用度の高いものとなっている。ブラホビッチほどではないが、キーンもしなやかでバネのあるプレーでフィジカル的に優位に立っていた。PK獲得につながる一連の攻撃はキーンのフィジカルによるところが大きい。ダニーロのロングボールをキーンがダイレクトでラビオに落とし、さらに裏抜けからシュートに持ち込んだ。そのこぼれ球をラビオが拾ってPKへと繋がっている。前線にフィジカルの強い選手を置いて、その選手めがけてボールを蹴る。トレゼゲやヴチニッチ、ジョレンテらの系譜に位置する攻撃のルートだ。ブラホビッチとキーンをめがけてロングボールを蹴る攻撃は、ポジショナルプレーやストーミングと呼ばれる戦術が流行する中、一昔前の攻撃スタイルを思い出させる。ただ、これが決定的な1点につながるのだから、フットボールは面白い。

もちろん、ほとんどハイプレスを仕掛けることなく、淡々と5-3-2の守備ブロックを組織して守る守備のスタイルも多くのチームとは一線を画している。そのクラシカルな守備スタイルが批判の的となることは多いが……。

特にブラホビッチのフィジカルコンディションは今季最高の状態なのだろう。フィオレンティーナで点を取りまくっていたころの動きのキレと量、そしてガムシャラにシュートを撃ちまくる姿勢が戻ってきている。今回はPKによる1点だけだったが、ボール保持、ロングボール、カウンターと多彩な攻撃を見せ始めた今のユベントスであれば、これから大爆発しても不思議はない。

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