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フラム vs ウェストハム

フラムについてまとめる記事を書きました。せっかくなので、実際のフラムの試合について書いてみたいと思います。今回は0-0とホームで引き分けたウェストハム戦を簡単に振り返ってみます。フラム側の試合運びは悪くないもので、今後に期待が持てる内容だったと思います。それでは、見ていきましょう。完全にフラム目線ですが…。

パーカー監督の解答

以前、前半戦のフラムについてまとめる記事で、引いて守る時の守備の整備と崩しのフェーズで裏抜けを増やすことが課題だと書いた。

ウェストハム戦のスタメンはアレオラ、テテ、アンデルセン、アダラビオヨ、ロビンソン、デコードバ・リード、レミナ、ハリソン・リード、ルックマン、ロフタスチーク、カバレロ。このメンバーでなかなか面白いことをやっていた。

トランジションについては以前書いた通りの動きをしていたと思う。

今回注目したのは守備フェーズと攻撃フェーズ。それぞれのフェーズで、前半戦の課題に答える形になっていた。

守備フェーズの解答

まず、守備フェーズについて。
早い時間帯は守備時は4-4-2で構えていた。前半10分過ぎくらいからはウェストハムの両サイドの選手が高い位置でのサイドに張って来たことから4バックの選手間の距離が開きすぎることをケアしてか、デコードバ・リードを下げた5-3-2をベースにしていた。そして、相手が左サイドの低い位置でボールを保持している時はデコードバ・リードが中盤に上がり、深い位置までボールを運ばれた時には5バック化する可変式4-4-2に切り替わっていたように見えた。
中盤の枚数を増やし、戦術理解に長けるデコードバ・リードを右サイドに配したことで中盤の両サイドでボール保持者をフリーにしてしまう問題に対処しようとした。狙いはある程度うまくいき、引いて構えた時でもゾーン2で相手ボール保持者を捕まえて簡単に前進させない守備ができていた。中盤が4枚に増えたことでスライドの距離が短くなったこと、サイドの相手選手へのマークを中盤サイドの選手が担当するということでマークを整理できたことも大きいだろう。
また、レミナのポジショニングや守備対応はアンギッサに比較して素晴らしかった。まずは相手の前進を妨害するポジションに立ち、ボールの前進を止める。そして、ボール保持者に寄せるときも相手の前に入るようにしてボールをゴールから遠ざける。簡単にボールを前進させない守備をしていた。4-4-2の採用とレミナの起用でゾーン2〜3の守備は安定した。
さらに、この日は前線の動きも良く、速いスピードでプレスをかけられていた。プレスのスイッチを入れるのはハリソン・リードだ。中盤の底から一気に駆け上がってアンカーやCBにプレスをかける。それに連動してカバレロ、ロフタスチークが相手のビルドアップ隊にプレスをかけてパスコースを限定してサイドに追い込む。これで相手から時間とスペースを奪っているので相手はロングボールを蹴るか限定されたパスコースにパスを出すしかなくなる。そこで輝いたのはアンデルセンだ。ハイボールには滅法強かったし、グラウンダーのパスにはユベントスのボヌッチかと見間違うくらいのパスカットを再三見せていた。前線からのプレスがはまって相手のプレーが読みやすくなったところを次々とボールを回収していた。
というように、構えて守備に入っても簡単に隙は見せず、相手のバックパスはハリソン・リードのプレスをスイッチにはじまるミドルプレスも機能して、この日のフラムは磐石な守備を見せていたといえると思う。

攻撃フェーズの解答

次に攻撃のフェーズについて。
ビルドアップはアダラビオヨ、アンデルセン、レミナが3バック気味に構え、その前にハリソン・リードがアンカーポジションを取る。この4人で相手2トップに対して数的優位を確保してボールを前進させる。サイドの幅はテテとロビンソンが取り、左右ハーフスペースと中央レーンをカバレロ、ロフタスチーク、ルックマン、デコードバ・リードが動き回ってチャンスメイクする構造。5レーンを6人で使っていこうというかなりアグレッシブな攻撃戦術を採用していた。例えば60分、右サイドからテテがクロスを上げたシーンでは、上がってきたハリソン・リードも含めて5人がペナルティエリア内に入っていた。キーパーにキャッチされてしまったが、キーパーを避けてクロスをあげられていたらとても面白いシーンだったと思う。強いて言うなら、ロフタスチークがクロスに競りに行くともっと面白くなるのだが。

攻撃のキーマンはアンデルセン、ハリソン・リード、ロフタスチークだ。
アンデルセンは最後方でショートパスによるポゼッションの確立に寄与するだけでなく、ハイスピードかつ高精度のロングパスで一気にボールを前線に送り込む役割も果たしている。右CBの位置から対角のロビンソンにつけるロングパスは圧巻だった。前述の通り守備についても統率力、対人能力、読みの鋭さなど申し分なく、CB不足で苦しむリバプールは冬の移籍で狙ってもよかったレベルではないか。ファンダイクが復帰してもパートナーが務まってもおかしくないと思う。
ハリソン・リードは運動量が豊富で動き回りながら左右にボールを散らしつつ、機を見てズバッと楔のパスを打ち込む、高機動型のボランチだ。左右両足で正確なパスを操り、パススピードも速い。フラムの攻撃の多くは彼を経由して展開される。ウェストハムからしたら、ハリソン・リードをフリーにしてしまったことで一気に押し込まれてしまうことになった。
ロフタスチークは抜群のフィジカルと足元のテクニックで前線でボールを落ち着かせる役割を担っている。フィジカルと懐の深いボールキープでそう簡単には奪われない。最悪でもファールを誘発してマイボールにしてくれる。ロフタスチークがボールをキープしてくれるおかげでフラムはチームを押し上げ、各選手が的確なポジションを取る時間を作ることができる。フラムのポジショナルプレーはロフタスチークのキープがあってこそ成立する。
3人を中心に展開されるフラムの攻撃に対してウェストハムは中盤から1人下げて5バック気味に守備をしていたが、それでもフラムは簡単にゾーン1までボールを運び、ボールをリズムよく動かしながらチャンスを作っていった。52分、70分は明確な決定機だったと言えると思う。これまでよりも裏抜けを狙うシーンは増えていたし、裏抜けを狙う選手も増えていた。
敢えて言うなら、流石に中央レーンでの裏抜けは相手も警戒しているし、GKのケアもある。この日も左右ハーフスペースでの裏抜けは何度か成功していた。その左右ハーフスペースへの裏抜けからのショートクロスをチームとして攻撃のパターンとして組み込み、裏抜けした選手に合わせてゴールエリアに飛び込む選手を用意したい。これはチームのトレーニングでプレーに落とし込めるプレーだと思う。

残留を果たすために

リーグ5位につけているウェストハム相手にホームとはいえほとんどの時間をボールを保持して試合を進めることができたのだ。守備、攻撃の崩しの部分も改善が見られている。リーグ戦もあと15試合あまり。トランジションゲームには対応できる。あとはゴールだ。相手ディフェンスラインの後ろで勝負できるようにチーム戦術を整備していきたい。まだまだ残留の可能性は残されている。リーグ後半戦もフラムに注目していきたい。

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