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【シカゴでバードウォッチング!】  Sora

葦の茂みのそばを歩いている時に、「あっ、ソラだ!」という言葉を聞いて、私の頭の中は、「ソラ???何、それ。」とクエッションマークでいっぱいになりました。鳥の英語名だとは思えませんよね?漢字の「空」しか考えませんでした。

鳥のSoraという英語名は、おそらくアメリカ先住民の言葉が由来だろうと考えられています。古代のアメリカ先住民は北西太平洋沿岸を経由してアメリカ大陸にやってきたと言われているので、もしかしたらアメリカ先住民の言葉の中に縄文人の言葉と少し似ているものがあったのかもなどと私は勝手な妄想を繰り広げてしまいます。(笑)

そして、いつものようにこの記事を書くためにSoraの和名を調べたら、なんと「カオグロクイナ」と出てきました。

えっ!? クイナ?!

私にとって、「クイナ」は大江健三郎さんの息子さんの光さんと結びついているんです。四歳になっても言葉を発しなかった光さんは、野鳥の鳴き声が収められたレコードが好きで、いつも聞いていました。ある日、軽井沢の森で、大江さんが光さんを肩車して歩いていると、どこかでクイナの鳴き声が聞こえ、その時、なんと光さんは、「クイナです」とレコードのナレーションそのままの声を発したというのです。この衝撃的な逸話を知ってから、私にとって「クイナ」はある意味特別な鳥になっていました。

でも、鳥に興味が全くなかった私は、愚かにもクイナがどんな鳥か調べようともせずにいました。そして、Soraの和名である「カオグロクイナ」を知った時に初めてクイナの姿がわかり、たくさんの種類のクイナが日本にいることも学びました。シマクイナ、オオクイナ、シロハラクイナ、ヒメクイナ、ヒクイナなど。

クイナ     ML129906971 by David Irving, Macaulay Library

もちろん沖縄の固有種の「ヤンバルクイナ」は以前から聞き知っていましたが、「ヤンバルクイナ」という一語として知っていただけで、この鳥が「ヤンバル (沖縄北部のある地域の名前)+クイナ」という意味だとは知らずにいました。いつもながら、無知ということは本当に恥ずかしいことですねえ。穴があったら入りたいぐらいです。ベテランのバーダーさん、呆れないでくださいね。

ヤンバルクイナ    
すごいですね、嘴と目と脚の赤さ!白黒の縞模様の洋服の上に焦茶色のマントを羽織っているみたい。
ML103438221 by Anonymous, Macaulay Library

クイナを漢字で書くと「水鶏」なんですよ。ご存知でしたか。(あまりの恥ずかしさの反動で、ちょっと知ったかぶりをして・・・笑)

イギリスの鳥類学者ジョージ・エドワーズは、1750年にアメリカのハドソン湾付近で採集したSoraの標本を見て"little American water hen (小さなアメリカの水雌鶏)"と描写したそうです。また、Soraは、アメリカで "meadow chicken (川辺の低湿地の鶏)" というニックネームがあります。日本にいるクイナ種もアメリカのSoraも、姿が一見鶏に似ていますし、首を前後に動かしながら歩く姿も鶏のようです。

さて、アメリカに生息するSoraのことに話を戻しましょう。

Soraは、葦原や湿地帯に潜んでいます。姿を見るのはなかなか難しいですが、その鳴き声は非常に大きく特徴的です。このページで聞いてみてください。雄も雌もテリトリーを守るため、またお互いのコミュニケーションのために鳴きます。静かな葦原でこの大きな声が突然聞こえたらビックリしますよ。居場所の見当をつけて、姿を見ることができたらラッキーです。

ずんぐりした全身の姿を捉えることができたら、短く分厚い黄色の嘴に目を奪われることでしょう。嘴の付け根から目にかけて顔の前の部分が黒い (まさに和名の通り「カオグロ」) ので、特に嘴の黄色が際立つんです。顔の後ろ半分から喉、胸にかけては灰色で、頭は茶色い帽子を被ったようです。翼は茶と黒で少し白斑が見えます。お尻の羽が短く上向きで白いです。雌雄同色で、一雄一雌だそうです。

嘴の黄色がチャーミングポイント。     ©Dan Lory
尻尾がピンと跳ねていて、内側の白い部分が目立つ     ©Dan Lory

Soraの趾 (あしゆび)は長く、体重も49–112 gと軽い ため、睡蓮の葉の上を歩くことができるそうです。夫は何回も目撃していますが、私はまだなのでいつか見てみたいです。

趾 (あしゆび)が長い。獲物を狙って真剣な姿。     ©Dan Lory

Soraは、横から見ると体がぽっちゃりと丸いように見えますが、後ろ姿を見ると体の幅が狭く、葦の合間を歩くのに便利なようになっています。また、後ろから見ると、両脚の間隔が狭いためか、背筋を伸ばしてスレンダーな体を支えて歩くファッションモデルのような印象を受けます。

「後ろから見るとスレンダーでしょ?」     ©Dan Lory
「どう?ファッションモデルみたい?」     ©Dan Lory

ヤンバルクイナは、ほとんど飛べないそうですが、Soraは渡りをします。繁殖期には北米やカナダにいますが、秋になると中央アメリカや南米の北部に渡っていきます。

翼を広げるとかなり長い。     ©Dan Lory

私は飛んだところをまだ見ていないので、これからの楽しみの一つです。この秋に夢が叶いますように。



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