統計学入門(基礎統計学I) モーメントとモーメント母関数

はじめに

統計検定準1級に向けて勉強開始したもののまだ疎かな部分があった。統計検定2級と準1級の間に存在すると思われるギャップの部分を埋めるべく統計学入門(赤本)を読むことにした。

確率分布の形状について

期待値と分散によって確率分布の形状はおよそ把握できるが、それだけで分布の形状が一意に決まるものではない。例えば非対称ならどちらに歪んでいるかが知りたい。非対称性の指標は以下で定義される。

$$
α_3 = \frac{E(X-μ)^3}{\sigma^3}
$$

これはXの確率分布の歪度(歪度係数)と呼ばれる。$${α_3 > 0}$$の時、右に裾が長く、$${α_3 < 0}$$の時は左の裾が長い。その絶対値は歪みの程度を表す。歪度の計算は以下の通りである。

$${E(X-μ)^3 = E(X^3) -3μE(X^2) +3μ^2E(X) -μ^3 = E(X^3) -3μE(X^2) +2μ^3}$$

ここで例として離散型確率分布をもつ確率変数を考える。
確率変数X ={0, 1, 2, 3, 4, 5}とそれに対応する確率={50/311, 100/311, 100/311, 50/311, 10/311, 1/311}があるとする。

$$
μ = E(X)= 0・(50/311) + 1・(100/311) + 2・(100/311) + \\3・(50/311) +4・(10/311)+ 5・(1/311) = 1.59 
$$

さらに、$${E(X^2) = 3.68}$$、$${E(X^3) = 9.69}$$

これを上式に代入して$${E(X-u)^3 = 9.69 -3・3.68 +1.59^3 ≒ 2.64 > 0}$$
よって右に裾の長いことが分かる。また、

$${\sigma^2 = V(X) = E(X^2) -E(X)^2 =3.68 - (1.59)^2= 1.152}$$

よって歪度$${α_3 =1.23}$$となり非対称性の程度はそこまで大きくはなさそうということが分かった。また、確率分布の尖りの程度を表す指標もあり、以下の通り定義される。

$$
α_4 = \frac{E(X-μ)^4}{\sigma^4}
$$

これを尖度と呼ぶ。正規分布の$${α_4 =3}$$と比較して$${α_4 -3 >0}$$ならば正規分布より尖っており、$${α_4 -3< 0}$$ならば正規分布より鈍い形をとる。

$${E(X-μ)^4 = E(X^4) -4μE(X^3) +6μ^2E(X^2) -4μ^3E(X)+μ^4\\=E(X^4)- 4μE(X^3) +6μ^2E(X^2)-3μ^4}$$を用いることができる。

モーメントとは

以上より、確率分布の形は$${E(X-μ)^r}$$の量で決まることがわかる。

$${ E(X^r)}$$を考えてもよい。一般に、

$$
μ^r = E(X^r)
$$

をXの(原点まわりの)r次のモーメントまたは積率といい、$${μ'_r =E(X-μ)^r  (ただし、μ=E(X))}$$をXの期待値(平均)のまわりのr次のモーメントという。

また、$${α_r = E{((X-μ)/\sigma)^r}}$$はXのr次の標準化モーメントといわれる。

期待値、分散はモーメントの基礎的なものであり、$${μ_1=E(X) μ'_2=V(X)}$$である。

期待値、分散、歪度、尖度などの値を指定するとそれに該当する確率分布は制限されるためすべての次数のモーメントを指定すればそれにより一つの確率分布が決定されるはず。すべての次数のモーメントを生成するモーメント母関数を$${M_x(t) = E(e^{tx})}$$と定義する。その計算は

$$
M_x(t) = \sum_xe^{tx}f(x)   (離散型)
$$

$$
M_x(t) =\int_{-\infin}^{+\infin}e^{tx}f(x)dx   (連続型)
$$

による。モーメント母関数のr階導関数から

$$
M_x'(0) = μ_1 , M_x''(0) = μ_2 ,M_x'''(0) = μ_3 …
$$

となる。一般にモーメント母関数のr階導関数から$${M_x^{(r)}(0) = μ_r}$$のように各次数のモーメントが分かる。
以上より、モーメント母関数から期待値、分散、歪度、尖度など重要なモーメントが微分により求めるとのこと。

まとめ

より具体的に理解するために次回、指数関数や二項分布およびポアソン分布を例にモーメント母関数から期待値や分散を導出していきます。

参考文献


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