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ナメクジは何のためにいるの?

今度はある本でナメクジを見つけた

 以前、noteにナメクジについて書きました。特別にナメクジに興味があったわけではなく、写真を撮りに行った日に、目立った昆虫が見つからず、偶然、立派なナメクジがいたので、少し調べてみました。普段よく見るナメクジはだいたいナメクジという種で、多く種がいるカタツムリと多様性の面で対照的なことはわかりました。
 今度はある本を読んでいたら、偶然ナメクジに関する記述を見つけました。ナメクジを通して、大きな学びがあったのでまとめてみました。

「生物多様性の大切さ」について、ある集まり(市のシンポジウム)で子供たちに説明することになりました。準備として今いろいろと勉強しています。『サイレント・アース』という本を読んでいたところ、ナメクジの話が登場します。

ナメクジという種は何のためにいるの?

 『サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春」』は第5部まであり、第1部は「なぜ昆虫は大切なのか」で、第3章が「昆虫の不思議」です。著者(英サセックス大学教授)は、「昆虫の不思議」の中で、好意的に思われていない生物に対して「Xという種は何のためにいるのですか?」と、講演会の後に聞かれることがよくあるとと言っています。その例として、ヌカカとナメクジが登場します。
 ヌカカはヒトを刺すので、イギリスではヌカカが発生すると、観光客が減少するそうです。ナメクジは、気持ちのいいものでないし、育てた野菜や植物が食べられる被害もあるでしょう。
 みなさんは、そのような生物が「何のためにいるのですか?」と質問されたらどう答えますか。

ナメクジは何のためにいるの?

ヌカカもナメクジも、生態系の一員である

 ヌカカは大量に発生するので鳥やツバメなどの重要な餌になります。ナメクジはアシナシトカゲの大好物、多くの鳥、ハリネズミなど人に好まれる生物の餌になります。ナメクジの中には有機物の分解を助ける種類もいます。ともに生態系の重要な一員です。いなくなってしまうと困る動物がいると述べています。また、熱帯地方ではカカオの受粉をヌカカだけが担っているので、いなくなればチョコレートが食べられなくなることもあると言っています。
  ではナメクジは日本でどうなのか。何の餌になるのか、ナメクジの天敵は何か、少し調べてみると、次のサイトに

 ナメクジを食べる天敵として、
 1 カエル  2 鳥  3 コウガイビル  4 マイマイカブリ
 5 ゴミムシ 6 カマキリ 7 ヤチバエ・クロバエ 8 ハリネズミ
と8種類が列挙されていました。
 日本でもこれだけ多様な天敵がいるのなら生態系の中で一定の役割を果たしていると考えられます。8番目のハリネズミは野生に生息していないので、飼育している場合なのかもしれませんが。
 実際、生態系の中で役割が不明な生物も多いので、いなくなってしまえば予想していない問題が生じるかもしれません。これは大事な点でこの本で述べられています。

絶滅しても大して困らないのかもしれない?

 一方、かりに絶滅しても生態系や経済への影響を全く感じない昆虫やほかの生き物が確かにいるとして、いくつかの例をあげています。
 大西洋の孤島に生息していた大型のハサミムシやニュージーランドのカマドウマ、イギリス南部の丘陵地に生息するキリギリスは、絶滅に近い状態にあるが、生態系が大打撃を受けた形跡はないと考えてよいと言っています。
 では「生物は何のためにいるのか?」

昆虫は不思議で素晴らしい

質問の発想を変えようと試みてきた。人間に役立つとか、生態系に役に立つという視点で、ナメクジやヌカカの存在を正当化する必要があるのか?そもそもナメクジが「何のために」にいるかを知る必要があるのだろうか?

サイレント・アース第3章「昆虫の不思議」から

 この本の著者デイヴ・グルーソンは、昆虫、特にマルハナバチの生態研究と保護を専門としており、激減するマルハナバチを保護するための基金を設立したり、一般向けの著書を複数出版していています。EU全体にネオニコチノイド系殺虫剤の使用禁止を決断させた運動の立役者であり、ナチュラルガーデンをつくり、その様子を配信しているそうです。
 昆虫はそれ自体すばらしいと思うと言っていて、例を多く上げています。
ヤマキチョウを1年で最初に目にした際の鮮やかな黄色の翅、夏の直前の  キリギリスの鳴き声、不器用なマルハナバチが花々のあいだを飛び交う音、地中海から長い渡りを終えたヒメアカタテハが春のひだまりでひなたぼっこしている姿などなど。

ヒメアカタテハ

 昆虫は美しいだけでなく、魅惑的であり、奇妙でもあり、私たちと全く異なっている。5つの毛玉を付けたような奇妙なツノゼミ、プレスリーの髪形に似たカメムシなど、省略しますが、こちらも例をいくつもあげています。

「地球上のあらゆる生物は人間と同じように、この惑星に存在する権利がある」デイヴ・グルーソン

 この本の著者デイヴ・グルーソンは、経済的に存在意義はあるなど人の利益だけでなく、昆虫には美しいもの、変わったもの、珍しいものなどが存在し、地球上で存在するだけで意義があると言っています。これは、「地球上のあらゆる生物は人間と同じように、この惑星に存在する権利がある」ということです。さらに「人間は動物を支配する権利を誰からも与えられていない。私たちは略奪や破壊、駆逐する道徳的権利を神から与えらたわけではない。」と言っています。
 
 「宇宙戦争」や「インディペンデンス・デイ」は、宇宙人が侵略してくるSF映画です。侵略を阻止するために我々地球人は戦い、最終的には勝利します。でも考えてみてください。ほとんどの地球に生息している生物は、我々ヒトより前に存在していました。ヒト以外の生物から見ると、新参者で地球の侵略者なのです。
 この例はわかりやすく印象に残りました。

「ナメクジは何のためにいるの?」 では、どう答えるか

「ナメクジは何のためにいるの」と質問された場合、人間中心に経済面を強調して答えることも可能です。その方が納得してもらえることもあるでしょう。しかし、デイヴ・グルーソンが言うように、自然界の生態系の中で食う食われるの関係の中で生き続けてきた生物たちそれぞれ存在する権利があり、敬意を払い尊重する必要があるでしょう。自然に触れあって「昆虫の不思議」な体験を、子供のころから積むことが大切でしょう。子供たち、そしてお父さんお母さんにもそんな話をしようかなと考えてます。


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