コード生成AIが加速するクラウド開発

この記事で学べること

Googleが2023年5月に行った「Google I/O 2023」で、プログラムのソースコードを生成するAIを2種類、汎用的なCodeyとクラウド上でのシステム開発に特化したDuet AI for Google Cloudを発表しました。この記事ではコード生成AIについてまとめます。

2023年までのコード生成AIの情勢

コード生成AIといえば、Microsoftの子会社であるGitHubが2022年6月から一般提供するGitHub Copilotが人気です。このGitHub Copilotと直接競合するのがCodeyで、PythonやJava、JavaScriptなど20種類以上のプログラミング言語に対応します。また、Amazon Web Services(AWS)も2022年6月にAmazon CodeWhispererを発表し、2023年4月から一般提供を開始しています。今回グーグルがCodeyを発表したことで、Google, Amazon, Microsoftの大手クラウド3社のコード生成AIが出そろったことになるわけです。

グーグルの対話型AIサービスであるBardも2023年4月に20種類以上のプログラミング言語に対応したコード生成能力が追加されていましたが、これはユーザーインターフェースはチャットに限定されていました。同じGoogle製でも、ソフトウエア開発ツールに組み込んで利用できるCodeyはその点一歩先をいっています。

クラウドの機能を利用するコードをAIが生成

グーグルが2023年5月に発表したもう1つのコード生成AIであるDuet AI for Google Cloudは、これらのコード生成AIとは異なる位置付けになっています。つまり一般的なアプリケーション用のコードを生成するのではなく、Google Cloudが提供する様々な機能を利用するコードの生成に特化しているのです。例えばGoogle Cloudが提供する機械翻訳サービスであるCloud Translationを組み込みたいなら、ソースコードのコメント欄に「Cloud Translationを組み込む」などと自然言語で記述すると、Cloud Translation APIを呼び出すコードなどをAIが生成してくれます。

2010年代半ばにInfrastructure as Code(IaC)という考え方が登場しました。直訳すると「コードとしてのインフラ」という意味で、サーバーやネットワークなどのITインフラの構成や設定をコード化して管理・構築の自動化を行うことを指します。これはアプリケーションに必要なITインフラを手軽に構築できる、人為的なミスを排除できるといったメリットがあった一方で、あまりコードを書き慣れていないITインフラの担当者にとってはなかなか手を出しづらい存在だったので、特に日本では幅広く普及しているとは言い難かったわけです。

IaCへの生成系AIの活用に関しては2023年4月にPulumi社が発表していました。Pulumi AIはGPT4などを利用して130を超える環境に特化したコードが作成可能で、オープンソース化もされています。

2023年5月に発表されたDuet AI for Google Cloudは、この流れを組んでアプリケーションに必要なITインフラストラクチャーをコードによって定義したり制御したりするIaCを推進する上で、力強い味方になりそうです。

例えばですが、アプリケーションの可用性を向上させる方法をDuet AI for Google Cloudのチャット機能で質問したとしましょう。この場合、アプリケーションサーバーが複数のリージョンやゾーンで稼働するシステム構成をAIが提案するだけでなくその設定を実現するコードもAIが生成してくれるわけです。

生成AIの登場によって、クラウド上でのシステム開発の生産性はますます向上しそうです。一方で、オンプレミス (ローカルの環境)に存在する従来型のITインフラはIaCの実現は簡単ではありません。クラウドとオンプレミスの生産性格差は今後広がっていくことと思います。優秀な開発者は皆クラウドに集まってしまいそうで、逆にいえばオンプレ開発は今後開発者集めが厳しくなりそうです。

クラウドインフラには、独創性より、奇を狙わない可用性・完全性・機密性を獲得する堅実なデザインが求められるため、過去の成功事例を深く認知してるAIに大いに助けられるに違いありません。

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