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千葉妖怪伝説「その五 七廻り塚の怪女」

みなさんは女の妖怪についてどう思われるでしょうか。

「雪女」「海女」「川女郎」「ぬれ女」「山女」「紫女」など女妖怪は数多い。かつて女性が社会的に弱者であった当時、女性は妖怪になるぐらいしか、不満を訴えることができなかったのだ。当然、千葉県にも女の妖怪は数多い。

 千葉市にとある七廻り塚という円墳がある。それは別名「姫塚」と呼ばれている。「殿塚」とのセットであり、芝山古墳群に所属する。元々七廻り塚古墳と呼ばれている。生浜東小学校の運動場の中央に位置したため、運動場の拡張整備のために削り取られた。その工事に先立って発掘調査が行われたが、円墳なのか方墳なのか、判断することができない程の変形した状態であった。ちなみに、現在は校庭の裏手に場所を移動しており、七廻り塚古墳園として存在している。 そして、早稲田大学の学生によって発掘され、葬式の行列を表現する動物・家・武人・農民などの形象埴輪がほぼ完全な形状で発見された。また鉄製武具・農具・装飾模造品・青銅製鏡など多くの副葬品も出土した。なお、姫塚は約全長60m、高さ6mのサイズで、横穴式石室が前方部南側に設けられていた。なおこの規模は千葉市内では最大規模のもので、かつ最古の古墳の一つである。成立は5世紀後半のであるという。

 この塚は一部の人々から怖れられている。何故なら、その塚には悲劇に見舞われた高貴な女性が埋葬されているという伝説があるのだ。そして、七廻り塚という奇妙な名称とも関連するのだが、片足跳びで塚の周囲を七回廻ると塚の中から機織りの音が、微かに聞こえてくるというものである。そこから、機織り姫にちなみ「姫塚」という名で呼ばれるようにもなったという説もある。まったく奇妙な伝説であるが、生実という地名が元々は「麻績」(おみ)であったところから生まれたという説が強い。つまり、この辺り一帯は麻の生産地であったのである。

 しかし、現在では噂がグレードアップしている。七回廻るとなんと血まみれで片手片足の女の妖怪が子供を抱いてでてくるという話になっているのだ。つまり、単なる「機織りの音」では恐怖度が甘いので「片手片足の女妖怪」というモチーフに変わってきたのであろうか。

 これは一体どういう事であろうか?葬られた女性が浮かばれずでてくるのか。それとも、この「姫塚」に地縛霊居ついた単なる女の怨霊なのであろうか? とかく、塚というものは「恨み」や「悲しみ」を封印してもらうものである。これは七廻り塚の上に鷲宮神社の碑があった事から、このような伝説が生まれたとも言われているが、どちらにしろ、「不思議な伝説のある場所」はいつまでたっても、いつの時代も「不思議な話がある場所」のである。

 つまり、かつて死者を葬った場所は「古墳」となり、墓としての記憶がなくなると「塚」と呼ばれ、そして現代では「公園」や「公的建造物」となる。そして、その場所には、時代時代にあった奇妙な噂や伝説が付随するのだ。言い替えれば伝説のある「場所」はあまり変わらないが、そこにでる「魔物」は時代によって変化するのではないだろうか。


ご注意:
下記の記事は、地域情報サイト「まいぷれ」で掲載されていた「千葉妖怪伝説」というコンテンツを転載したものです。記載されている内容は、当時のものですので、現在の情報とは異なる可能性があります。ご了承ください。

https://www.mpchiba.com/articles/257.html

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