【ネタバレ】生きたいように生きろ/「aftersun/アフターサン」
こんばんは、瓶宮です。
aftersun/アフターサンを観た!
夏休み、11歳の女の子ソフィが父親カラムとリゾート地にやってきてバカンスを楽しんでいるのを収めたビデオテープを、カラムと同じ年齢になった20年後のソフィが観るという話。
予告やポスターの感じから、エモ!の感じがプンプンでエモ~~~~って言わせたい映画なんじゃないか?と思わざるを得ないところがありますが、ぜんぜんそうじゃない映画です。あのときの父カラムと同じ年齢になってから、というところがミソなんですね……。
ネタバレありで書きます!!
ソフィの物語というより、カラムの物語なのではないかと思う映画でした。鑑賞後、ものすごく悲しくなってしまった……。
カラムは、もともと精神に少し不安定さを持っている人物で、それは途中途中の場面にも表れています。私が特にパパ……となった場面は、彼が歯を磨いているところでペッと歯磨き粉を鏡に映る自分に吐き捨てるシーンでした。彼の苦しみが具体的にストーリーの中でわかるわけではないのですが、精神的にまいってしまっているときって、普通に生きることもできない自分が許せないと思ってしまうことがあると思うんですよね。しかも、娘がいる前でそんな気持ちをさらけ出すにも躊躇してしまわざるを得ない。そんなとき、ふと鏡に映った自分が見えて吐き捨てるといったところに、彼の「何かに追い詰められている」という気持ちが垣間見えたような気がして、苦しかったですね。
この作品が気になったきっかけに、[Alexandros]の川上洋平さんの映画コラムの連載がありました。
私も、Blurを聴いていた時期があって、「Tender」ってあの曲だよなあ……あれが流れるなら興味あるなあ……と思い、観に行ったという経緯があります。
ほんで、たしかに怖い!!!
たしか、「Tender」って愛の賛歌みたいなそういう歌詞の曲だったと思うのですが、カラムがソフィに「生きたいように生きろ。なりたい人間になれ。時間はある」って優しく諭しているシーンの後ろに流れていまして。そこで曲が遅回しになって歪んでいるって、もうそういうことですよね……。カラムは愛をきちんと受け取ることのできる環境で過ごすことができなかったのではないか、そういった背景が浮かび上がってくるんですよ。だからこそソフィには、愛をきちんと受け取れる場所にあなたはいるんだよということを伝えたかったのかな、と思いました。
そんな苦しみを抱えながらも、クライマックスでQueenとDavid Bowieの曲である「Under Pressure」をバックにカラムが楽しそうに踊っているんです。「アアア、よかったよおパパ(泣)」ってなっちゃう。本当に悲しくて、けど希望でもあり、儚い一瞬のように感じられます。この時間だけは苦しみを忘れて、心の底から笑うことができたのではないかなと思います、というかそうであれ!そうじゃないと割りに合わないよ!
ラストシーン、カラムはストロボの光る部屋に行ってしまいます。この喪失感、どうしたらいいんですか?この最後の5分、本当にすごい。戻ってきて!と叫びたいけれど、ビデオテープの中の幻影なのがもう胸が痛いです。なんだかわからないけど、涙が出てきてしまう。ソフィとの休暇が、カラムにとって救いであったならいいなあと願ってしまう作品でした。
サウンドトラックも90年代の洋楽がたくさん詰まっていて最高です。アフターサン、みんな観て~~~~~~~~~~~~!!!!
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