第7回「ナイチンゲール」を読む(中編)
前編に訳を掲載した童話「ナイチンゲール」、みなさん読んでいただけたでしょうか。
前々回(第5回)にもお話ししましたが、アンデルセンの童話は架空の舞台にデンマークの同時代状況が織り込まれていて、多くは作家の実人生での経験が創作の源流になっているのです。現在の批評理論では文学表現のメッセージ性を作者の伝記的事実に還元する議論は読みの幅を狭める陳腐な手法と見なされていますが、アンデルセンの創作童話がそれ以前の民間伝承としてのメールヒェンと大きく異なるのは、作者の実人生