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『三回目の「押すな」は「押せ」』のルールから感ぜられるジレンマについて

忘れてはいまいか日本人。ダチョウ倶楽部がいかに偉大であるかを。

「熱湯風呂」「どうぞどうぞ」「あつあつおでん」「地面蹴ってジャンプ」………。
ギャグを改めて文字にするのは“禁忌”という感じがしてしまうが、とにかく、ダチョウ倶楽部は日本人全員に知られるギャグをこれだけ生み出しているのだ。
日本のお笑い史に名前が刻まれるトリオであることは間違いない。

これほどの功績があるにも関わらず、普段のバラエティではポンコツ的な扱いをされているところも好きだ。
有吉弘行に激しくイジられ、土田晃之に「変わり者一人にバカ二人のグループ」と称される。
しかし、こと“リアクション芸”となると、日本随一の実力を発揮する。ハッピ姿が戦闘服。このギャップが最高にかっこいい。
ダチョウ倶楽部のフィギュアを飾りたいと思う今日この頃である。


ある意味「日本一安定したお笑い」をするダチョウ倶楽部だが、ひとつ不安なことが、観ていてある。
それが『三回目の「押すなよ」は「押せ」』のジレンマだ。

頭で話したよう、ダチョウ倶楽部の影響力はすさまじく、「熱湯風呂」とともに『三回目の「押すなよ」は「押せ」』というルールも同じく日本に知れ渡っている。
なので、テレビで熱湯風呂を見る時、我々は「三回目で押すんだぜコレ」と思いながら見る。ダチョウ倶楽部の三人のみであればその通りにやるのが正解なのだが、ほかの芸人さんがやる場合このルールを「裏切っ」てくる。

しかし考えてみて欲しい。
もとを正せば、「押すな」は「押せ」というルールそのものが「裏切り」であるはずだ。そりゃそうだ。「押すな」っつってんのに「押す」んだから。

この、元々「裏切り」であるはずのルールを、ほかの芸人がさらに「裏切る」。
この「裏切りを裏切る」流れすらも知れ渡るフェーズにもはや入っている可能性もある。そうなれば混乱ぴーぱーである。

裏の裏のそのまた裏をかく、というコメディは存在し得ると思う。しかしこれは落語やコントではなく、大人数で成す「リアクション芸」だ。台本が無い。

台本が無くても成立する「様式美」。これをダチョウ倶楽部は作り上げてきたはずなのに、ほかの芸人がやるとなると変に奇をてらうようなフォーマットとなる。これを安心してみることは、私にはできない。

つまり、私は「ダチョウ倶楽部三人だけの熱湯風呂」。これが見たいのである。

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