著作権侵害認定の容易さや、出典を明記されずにツイートを無断転載された側のお気持ちとか。
最近、投稿者や出典を明記せずにツイッターの投稿を無断転載したブログの投稿報告を見たので引用RTで苦言を呈したところ、記事作成者のコアラ医師によって当該記事は非公開となった。
以下、著作権侵害のリスクや、無断転載された側の思いなどについて、つらつらと書く。
筆者は弁護士や弁理士ではない。
著作権法の規定など
著作権法で著作物は「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義される(同法第2条第1項)。
詳しくは下記ページなどを参照されたい。
前掲ページにおいては
と説明されている。
削除されたブログ記事は柔道整復師の免許業務範囲について、柔道整復師とコアラ医師のツイートを転載したものだったかと思う。
なので当該柔道整復師の投稿は柔道整復師法(ルール)を、投稿者が個性的に表現したものと解釈可能であり、著作物に該当しよう。
それで著作物の引用について、著作権法では
と規定されている。
また
と著作権者の明示が定められている。
そんなわけで他人のツイートを引用として無断転載する場合、できれば埋め込み機能を用いるのが望ましい。
ユーザーは埋め込み機能で投稿が転載されることに同意しているので、規約を盾にすることも可能である。
出典や著作権者を表示しない無断転載は簡単に著作権侵害を認定されてしまうし、批判対象者もそれを利用して不法行為の成立を主張する。
コアラ医師がTwitterで取り上げた整体士(整体処せせらぎ)は、理学療法士を名乗る者から誹謗中傷されたとして、開示請求が認められた旨の投稿をしている(下記。読みにくい改行は削除し、強調などをした。)。
PT(理学療法士)を名乗る当該人物から著作権侵害で開示されたと回答があった(現在は削除済み)。
開示請求の対象となった投稿は、当該整体師が撮影したと思われる画像を無断転載したものであり、著作権者の表示もされていないものであった。また転載した画像は切り取りしたもののようであった。
そりゃ著作権侵害は明白である。
その投稿を私が引用したら、私も著作権侵害で開示請求を認められかねない。
なお、発信者情報開示請求では権利侵害の有無を判断し、発信者情報を開示する必要性があるかどうかを判断する。
よって発信者情報を開示する場合、一つだけでも権利侵害を認定すれば良い。
なので裁判所としては著作権侵害さえ認定してしまえば他の争点、例えば名誉毀損の成否まで判断する必要はない。
著作権侵害を認定した上で、
「以上より、本件投稿が債権者の権利を侵害していることは明白であるからその余の争点について判断するまでもなく、債権者には発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。よって主文の通り決定する。」
と書けば良い話である。
裁判官も判決や決定文を書くのは大変だから、できるだけ省力化したい。
例えば以下のような発信者情報開示請求の判決がある。
(アフィリエイトです)
前掲の整体士のブログでは著作権侵害で開示請求が認められた旨は説明されていないのである。
もっとも名誉毀損や信用毀損で開示請求が認められたとも書いてはいないが。
一般の読者からすれば、誹謗中傷が不法行為と認められ、発信者情報が開示されたように思えるのではなかろうか。
これからの裁判で名誉毀損などが認められる可能性も否定できないが、著作権侵害認定による開示決定を利用して印象操作が可能なのである。
出典表示無しに投稿を無断転載された者のお気持ち
私は反ワク・反マスクの航空オタク、いけてるこうくう氏にスクショでツイートを無断転載された経験がある。
スクショで無断転載されたのは以下の投稿である。
確かユーザー名やIDはモザイクがかけられたかと思う。
埋め込みで引用するようにリプしたが、無視された。
なのではてな社に対し、著作権侵害を理由として記事の削除を申し立てた。
それで前掲の「画像は削除しました。」なのである。
私と同様の考え、つまり整体などの無免許施術は違法であるという考えで、私の記事を無断転載するならあまりうるさく言う気はない。
より多くの人に無免許問題を知ってもらうことは大事だ。
しかし批判的な文脈で、投稿者を示すことなく無断転載されることは不愉快である。
なぜなら私の意見を批判する記事を閲覧した者が、私を知り、交流する機会を奪うからだ。
閲覧者が私に直接返信するなり、普段の投稿を見て、私の意見を批判する立場から肯定する立場に変化する可能性だってあるだろう。
またスクショの場合、埋め込みと比べて私への接触が困難になる。
埋め込みであればクリックまたはタップすれば私のアカウントに簡単にアクセスできるが、スクショでは画像からユーザー名やIDを読み取り、一度それを入力して検索する手間が発生する。
知財高裁はスクショを引用と認めたが、第一審原告(被控訴人)の主張は下記の通りであり、閲覧者への接触の困難さは主張していない。
投稿を削除したり、改変する恐れがあるから証拠としてスクショを添付すること自体を違法視する気は無いが、著作権者が削除していない限り、引用する投稿や投稿主へのリンクは必要ではなかろうか。
悪名は無名に勝る、とか炎上商法に加担しないよう、リンクを貼らずにスクショ引用や魚拓で批判している投稿も見かけるが、それで著作権侵害を認定されない自信は無い。
違法薬物の取引とかならリンクを貼るべきでは無いと言えるし、整体などの無免許治療業務の広告へのリンクも犯罪への加担としてリンクを貼らないことは正当化できそうではあるが。