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あはき柔整広告ガイドライン(案):無資格者関係

あはき柔整の広告検討会が令和6年5月20日に開かれた。
そして厚労省からガイドライン案が示された。

あはき・柔整広告ガイドラインに記載する内容(案)
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001255268.pdf

本記事では整体やリラクゼーションなどの無資格者に関する内容を取り上げる。なので鍼灸マッサージ師や柔道整復師以外の、整体師やカイロプラクターなどの無免許業者に関係する話である。


なお、日本リラクゼーション業協会や日本カイロプラクターズ協会は自ら広告ガイドラインを定めている。

日本リラクゼーション業協会
リラクゼーション業界におけるヘルスケアサービス品質向上に向けた自主ガイドライン[PDF]

日本カイロプラクターズ協会
カイロプラクティックの安全性と広告に関するガイドライン[PDF]
ソーシャルメディアの利用に関するガイドライン[PDF]


「Ⅰ.広告規制の趣旨について」

1 趣旨
(略)
消費者庁にあはき又は柔整の免許を有していない者等(あはき又は柔整等の免許を有しているが当該免許に係る業以外の行為を提供している者も含み、以下「無資格者」という。)による行為で発生した事故の情報が寄せられていることなどを踏まえ、あはき・柔整に関する広告だけでなく、無資格者による広告も含めた広告の在り方について、検討を行ったものである。

ガイドライン案

そんなわけで、無免許施術による健康被害が、無資格者の広告ガイドライン制定の理由である。なお、国民生活センターや消費者庁の報告書は現在、各サイトからは削除されており、他のサイトに転載されたものを見るしかない。

国民生活センターの報告書は厚労省のサイトに掲載されている。
手技による医業類似行為の危害-整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も-[PDF]
下記の消費者庁の報告書は大阪市のサイトへ転載されたものである。
法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に[PDF]

Ⅶ.無資格者の行為に関する広告について(p39)

「1 基本的な考え方」には

平成 24 年8月2日に独立行政法人国民生活センターが公表した資料では、
施術所を利用したきっかけ等について、家族や知人の紹介が最も多かった
が、情報誌や雑誌広告、チラシ等を見て選択したという相談も多く、また、
当該広告には、適応症の広告や、身体症状・疾病に効果があると受け取られ
るような広告など消費者に誤認や過度な期待を与えるおそれがある広告
や、
あん摩マッサージ指圧以外の施術所において、「マッサージ」という語句を
用いた広告等がみられ、消費者に誤認を与えるおそれがあると指摘されて
いる。
現在においても、無資格者の行為に係る不適切広告等の情報等が寄せら
れていることから、あはき、柔整の他に無資格者の行為の広告の適切な在り
方について、本指針に定めることとしたものである。

ガイドライン案

と書かれ、また前掲の健康被害もガイドライン作成の理由として挙げている。

「3 広告に掲載すべきでない事項」には

  1.  内容が虚偽にわたる、又は客観的事実であることを証明することができないもの

  2.  他との比較等により自らの優良性を示そうとするもの

  3. 早急なサービスの利用を過度にあおる表現

  4.  費用の過度な強調

  5. 科学的な根拠が乏しい情報に基づき、利用者の不安を過度にあおるなどして、事業所等へのサービス利用を不当に誘導するもの

  6. あはき師法、柔整師法等に抵触する内容を含むもの

  7.  公序良俗に反するもの

  8. 関連法令等で禁止されるもの

が挙げられている。
これらの内容の一部は国家資格者に対するガイドライン案で示され、無資格者独自の規制は本項目で説明されている。

あはき師法、柔整師法等に抵触する内容を含むもの

先に無資格者独自に書いてあるものから見ていく。

無資格者の行為は、国家資格が必要なあん摩業、マッサージ業、指圧業、
はり業、きゅう業若しくは柔道整復の業務とは全く異なるサービス価値を
提供するもの
であるので、国家資格を必要とする業を行っていると利用者
に誤認を与えるような表示は不適切であり、これは、写真、画像等を用い
た場合においても同様である。
また、「腰痛」、「膝の痛み」等の痛み症状に対する施術、慢性の「肩こり・疲労」等の常態的な症状に対する施術の表現は、特定の疾患に対する施術或いは疾患の原因となる可能性を含んでいる症状に対する施術に当たる可能性が高いことから、広告及びウェブサイト等に表現すべきでないものである。

広告ガイドライン案p39

というわけで、「痛み症状」、「常態的な症状」に対する施術を行う旨を表現してはならない、というわけである。

費用の過度な強調

利用者に対して費用の安さ等の過度な強調・誇張等については、利用者を
不当に誘引するおそれがあることから、本指針での広告やウェブサイト等に
掲載すべきでないこと。

広告ガイドライン案p40

例えば初回限定料金や期間限定料金みたいなものであろう。
これは国家資格者のところにも書いてあったりする(p37)。
もっとも国家資格者のところは「早急な受療を過度にあおる表現又は費用の過度な強調」と項目が書かれている。無資格者のところは「(3) 早急なサービスの利用を過度にあおる表現」と別の項目に分けられており、(3)に説明は無い。

回数券等販売の表示義務

で、国家資格者の自費に関する項目では「3 自費による施術を行う施術所等がウェブサイト等に掲載すべき事項」(p34)において

(2) 自費の施術に係る施術の内容、通常必要とされる費用等に関する事項について、情報を提供すること

 自費による施術は、医療保険療養費による施術とは異なり、その内容や
費用が施術者又は施術所ごとに大きく異なり得るため、その内容を明確化
し、料金等に関するトラブルを防止する観点が重要であること。標準的な
費用が明確でない場合には、通常必要とされる施術の最低金額から最高金
額までの範囲を示すなどして可能な限り分かりやすく示すこと。また、
数券やプリペイドカード等を販売する場合には、その商品の内容や契約内
容を利用者が正確に理解して購入できるよう表示すること。

広告ガイドライン案p34

とある。
最近、施術者が国家資格者であると宣伝し、「自費」施術として「整体」をやっている事業者をよく見かける。
そういうところでは初回料金の安さを強調し、回数券などを売りつける例が多い。
健康に関する弱みを握られ、いきなり営業をかけられては心の準備ができまい。訪問販売やエステなどに対する規制(特商法によるクーリングオフ)はこういう不意打ちを理由としている。

回数券販売を隠して、初回の格安料金のみ表示している、「国家資格者」による「自費」施術所の例

上掲の口コミには回数券の料金表が掲載されており、最大40回で26万4千円(税込)である。初回料金は2,980円と案内しているが、2回目以降は回数券なしで1回1万1千円である。それをウェブサイトには書いていないのである。

他との比較等により自らの優良性を示そうとするもの(地図サービスや口コミサイト)

これも国家資格者の広告規制(p36)の援用である。

「日本一」、「No.1」、「最高」等、特定又は不特定の他の施術所と自らを比較の対象とし、提供する施術の内容等について、自らの施術所が他の施術所よりも優良である旨を示す表現は、仮に事実であったとしても、優良性について利用者を誤認させ、不当に誘引するおそれがあるものであり、ウェブサイト等に掲載すべきでないこと。
併せて、ウェブマッピング等において、自らの施術所が他の施術所よりも優良であるような情報を掲載するため、利用者に謝礼を支払う又は依頼するなどして、自らの施術所に便益を与えるようなコメント等を掲載させるべきではないこと。
また、著名人との関連性を強調するなど、利用者に対して他の施術所より著しく優れているとの誤認を与えるおそれがある表現は、利用者を不当に誘引するおそれがあることから、ウェブサイト等に掲載すべきでないこと。

広告ガイドライン案p36

「ウェブマッピング」というのは用語が間違っている気がするが、地図サイトのことだと思われる。
そして「利用者に謝礼を支払う又は依頼する」とあるので、謝礼を支払わなくても「自らの施術所が他の施術所よりも優良であるような情報を掲載するため」に利用者に投稿を依頼するのを禁止する趣旨であると思われる。
例えば下記の記事で取り上げたケースが該当するのだろう。

口コミを書いて下さいとお願いされた時に
「絶対に入れて欲しいワード」を書いた付箋を渡された。
そもそもそこがおかしい。
他の方が言ってた通り、ここに口コミを書いたら電話がきました。

https://maps.app.goo.gl/9ce5Bo5HiybspxVw8

回数券の終わりになると施術後に捕まってGoogleレビューを頼まれるので、知識は付いたけど症状は悪化していた現状をふまえて☆2を付けていました。
そうしたら施術前に「説明が悪かった。高評価じゃないならレビューを取り消してくれ」と何度も圧をかけて来たり、筋膜治療と関係なく尻の表面を何度も叩かれたりするので(なので女性にはお勧めしません)金払って何してるんだろうという気持ちで回数券を使い終えることになりました。

https://maps.app.goo.gl/ffVEAUZsCtYgUukw5

他にも色々ありますが、無資格者(国家資格者でも保健所に届け出た業務以外の施術)の場合、

  • 痛みや常態的な症状への施術の表示は禁止

  • 回数券を販売することも含め、料金はちゃんと書け

  • 口コミサイトに、自店にとって都合の良い投稿を依頼するな

ということになります。

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