北の国から

  学生たちの多くが、「貧困は自己責任」と思い込んでいる。大学に入り、就活をがんばれば、貧困になど落ちるわけがない。貧困に落ちるのは、つまりは怠け者だと多くの学生が考えている。学生の多くは、東京圏の恵まれた家庭のお嬢さんたちである。貧困など無縁の世界で育ってきている。努力をしようにも、それが不可能な状態に置かれた人たちへの想像力が働かない。しかし地方出身の学生は、それとは少し違う感覚をもっている。

 一年生のセミナーで「子どもの貧困」がテーマになった時のことである。北海道の地方都市出身のSさんは、自分の出身地の子どもの貧困率を調べてみた。全国の平均が7人に一人の子どもが貧困に陥っているのに対し、この市ではそれがなんと4人に1人。貧しいとは思っていたがまさかここまでとはと、Sさんは驚いていた。だが思い当たる節はある。毎日同じ服を着て異臭を放っている子が彼女の小中学校時代、必ずクラスに何人かいた。

 そうした子どもたちの多くは勉強ができない。普通学級に通っていても障害をもつ子どもも多く、いじめの標的になりやすい。不登校が実に多かったとSさんは言う。高校に進学しても、彼彼女らはすぐに中退してしまう。この市は家賃が安いから、高校を中退した若者たちが二十歳になるかならないかのうちに家を出て結婚をしてしまう。だが高校中退では、正規雇用の仕事に就けないから、彼彼女らの子どもたちも貧困に落ちてしまう。

 「貧困の連鎖」ということばに出会った時、「ああ、このことだと思いました」とSさん。Sさんの地元では、貧困の第2世代、第3世代が生み出されている。Sさんは高校は札幌の学校に通っている。「札幌の友人に地元の話をするとみんなびっくりします。毎日同じ服を着ている子どもなどみたこともない、と。ああ、札幌は別世界なのだと思いました」。札幌以上の「別世界」である東京圏の学生たちは、彼女の話にとても驚いていた。


 



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?