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ダークウェブの子猫達(5) 最終章

タプティムはソーシャルメディアのプロファイルでは「無神論者」と自己紹介。彼女が実行犯とされるダークウェブ子猫虐殺事件にタイ伝統呪術が深く関係していることに思い至るまでは、私も「タイ富裕層子弟の逸脱」くらいにしか考えていなかった。

2019年5月4日ラーマ10世戴冠式、そして5月8日にタイ選管が露骨にタクシン派を排除した下院比例代表制党別当選者数を公表し、軍事政権体制続行が内定してからネットでは若年富裕層が軍事政権批判をより強めた。

軍事政権は仏教を政治利用し、高僧達にもあまり立派な人物はいなかった。上座部仏教では僧侶は政治に関係してはならないという戒律があり、また嘘をついてはならないという戒律がある。

だが実際には「タイ仏教業界」は王室派とタクシン派に分かれていたし、元受刑者や社会不適応者のセーフティネットと化した寺では未成年強姦や麻薬使用など不祥事が日常茶飯事。

タイの高学歴者が仏教に見切りをつけるのはも無理はなく、軍政批判筆頭の新未来党党首タナートン氏も旧来の仏教やそれに関連する年長序列制度に批判的だった。

タナートン氏はタプティムと同時期に別派閥で軍政批判活動をしていたが、彼等に共通するのは「富裕層の中流」であること。

富裕層の中にまた階級があるタイ。3月24日に行われた総選挙におけるタイ民主党比例代表制候補者150名の顔ぶれを見ると、党創設者にして首相経験者の子弟、王族の血を引く者などまるでタイセレブ社交クラブの名簿の如し。タプティムやタナートン氏は絶対仲間に入れず、彼等に無視されていた。

学歴や収入では決して越えられない壁の前でタプティムはスーパーエリートでありながら軍政側についたアピシットを憎んだ。また、彼女の母親は日本人だった可能性が極めて高い。

彼女がツイッター越しに私に文句をつけてきた時の日本語は、よくある日本のサブカル好きタイ人の日本語と比べて二段階は上。また彼女は小さい頃から日本の漫画を読んでいたという友人の証言がメディアで記事になっていた。

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