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年収1億円を狙える診療科の将来需要

前回までのブログでは、診療科ごとの現在の需要で評価してきた。

ただ実際は、開業を決めてから、実際に開業するまでには数年以上のタイムラグがある。

さらに、開業してから経営が安定化するのに、通常5年ほどかかる。

つまり、「開業しよう」と決めてから、開業で標榜する診療科がピークに達するまで10年はみとかないといけない。

ここまで書いたところで勘のいい方ならわかるだろう。

そう。将来需要はすごく大切なのである。

さて、早速みていこう。

参考にしたデータは、新専門医制度における18の基本領域について、2036年の必要医師数と2016年の医師数などを比較した「診療科ごとの将来必要な医師数の見通しについて」という資料に基づいている。

厚生労働省の2019年第28回医師需給分科会で、診療科別の将来需要を示したのは、初めてとなる。

将来需要がなくなる診療科8領域

この資料であげられている、2036年に需要がなくなる診療科8領域のランキングはこれだ。

【将来需要がなくなる診療科のランキング】
1位 精神科 -1,688人
2位 皮膚科 -1,414人
3位 耳鼻科 -1,229人
4位 眼科  -895人
5位 産婦人科-467人
6位 小児科 -213人
7位 形成外科-18人
8位 放射線科-13人

ここに示している数字は、2036年に存在している予想医師数と、実際の必要医師数の差である。

このうち、1位から4位の精神科、皮膚科、耳鼻科、眼科は、2016年時点で

精神科 -254人
皮膚科 -309人
耳鼻科 -208人
眼科  -670人
(数字は、医師数-必要な医師数の値)

とすでに供給過多な状態である。

需要減少の原因は医師の偏在?女性医師の増加?


これは医療政策が失敗しているからなのだろうか?

そうではない。

2016年時点で、すでに内科の必要医師数は、+9,275人。外科は、+5,656人。

つまり内科や外科は2016年時点ですでに足りていないのである。

すなわち、総医師数の問題もあるかもしれないが、医師の偏在も問題なのである。

精神科、皮膚科、耳鼻科、眼科の医師供給過多は、一つは、女性医師率の増加も一因だろう。

1986年には、全医師に占める女性医師の割合は、わずか10%であったが、2016年には、約20%に増加している。

女性医師は、妊娠・出産という、どうしようもない年齢的なリミットがあるため、キャリア形成に時間がかかったり、当直があったり、業務がハードな科を避ける傾向がある。

内科や外科のメジャー科が避けられるのは当然である。

これは女性医師が悪いのではなく、女性医師が内科や外科を選びづらい環境になっている国や各自治体、公的医療機関、各学会のシステム設計が悪いのだ。

また、新専門医制度で、内科や外科の専門医取得のハードルが他科に比べて上がり、女性医師だけでなく、男性医師もこれらのメジャー科を敬遠している傾向がある。

厚生労働省や学会は、メジャー科の人数を増やしたいはずなのに、これらの専門医取得のハードルを上げるのは、正直、何をやっているのか分からない。

学会の利権がらみの問題なのかもしれない。

需要減少の科は少子高齢化も関係している?

さて、これまで将来需要がなくなる診療科のランキングの1位から4位までの診療科をみてきた。次に5位から8位の診療科をみてみよう。

5位 産婦人科-467人
6位 小児科 -213人
7位 形成外科-18人
8位 放射線科-13人

これらは、2016年時点では、需要があったが、年々需要が減って、2036年では上記のようになった診療科たちだ。

年々需要が減少していることからも、これらは、少子高齢化の影響で需要が減った科と考える。

放射線診断科や皮膚科は、AIの影響をかなり受けそうな分野といえる。

CTやMRIの画像読影、皮疹の読影などは、まさに機械学習のAIの得意分野だ。

専門医の読影レベルをこえたAI診断が、広く普及するのも時間の問題だろう。

将来も需要が続く診療科5領域

次に将来もしばらく需要が続くと予想される診療科5領域のランキングをみてみよう。

1位 内科   +14,189人
2位 外科   +4,363人
3位 脳神経外科+2,523人
4位 整形外科 +1,993人
5位 泌尿器科 +1,003人

まさに高齢化によって、ニーズが持続する診療科ばかりである。

メジャー科の内科外科はもちろん、高齢者との相関が強い整形外科、脳血管疾患が増加する脳神経外科、高齢化と相関する前立腺肥大や前立腺がん、膀胱がんの需要増による泌尿器科がランクインしている。

これから開業を予定している方は、このデータは必ず頭に入れておいた方がいい。

医療界は保険診療で守られているとはいえ、先細り市場の診療科のみで戦うのは不利な戦だ。

次回は、「複数の診療科で相乗効果をねらえ!」をテーマにお話しする。




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