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複数の診療科で相乗効果を狙え
さて、これまでは単独の診療科で考えてきた。
え?普通、診療科は一つでしょう。そう思ったあなた。
少し話を聞いて欲しい。複数の診療科を展開することを考えてみて欲しい。
おさらいになるが、医業収益とは、以下の簡単な掛け算で割り出される。
(医業収益)=(患者人数)×(患者単価)
では、患者単価をあげるには、どうすればよいだろうか。
すぐに思いつくのは、検査を増やすことだ。
当然だが、「お変わりないですか」、とDo処方だけで診療を済ませると、
(再診料)+(処方箋料)
しか入ってこない。
これに、血液検査や画像検査(レントゲンや心電図、エコー)が加わると診療報酬は上がる。
しかし、やはりこれにも限界がある。
訴えもないのに、必要のない検査を提案したりすると、患者さんは気づくし、下手すると悪評が立って悪い口コミが書かれてしまう。
では、どうすればよいのだろうか。
正攻法で患者単価を増やすことができるのか。
この答えが本題の「複数の診療科で相乗効果をねらえ」である。
相乗効果のある複数の診療科を標榜する
1人の患者が、単一の疾患しか抱えていない、というケースは少ない。
むしろ、複数の病気をかかえている。
また、本人が自覚していないニーズが存在する場合もある。
例えば、肥満症の患者で考えてみよう。
肥満症というとダイエットという風に直感的に考えてしまいそうだが、肥満症は様々な疾患を合併する。
内科疾患:メタボリックシンドローム、糖尿病、脂質異常症、高血圧
消化器疾患:脂肪肝、痔核、大腸ポリープ/大腸癌
呼吸器疾患:睡眠時無呼吸症候群(SAS)、気管支喘息
整形外科疾患:変形性膝関節症、変形性腰椎症、腰痛症
つまり、もし仮にこれらの診療科の中で複数の診療科を診る能力があれば、複数科分の検査料や処置料が入ってくるため、患者単価は2倍・3倍となる。
この中でも、受療率の高い内科と整形外科を抑えておくと強い。
参考:診療科ごとの外来受療率(人口10万あたり)
内科:2,189
外科:127
産婦人科:136
小児科:524
耳鼻科:189
整形外科:739
皮膚科:299
他にも
女性疾患→産婦人科と乳腺外科
皮膚疾患→形成外科と皮膚科
口鼻から肛門まで→耳鼻科と消化器内科
リハビリ→整形外科と脳外科/神経内科
など、診療科ごとの区切り以外で切り口を考えることで、相乗効果をうむ診療科の組み合わせが考えられる。
複数診療科をカバーして患者満足度を上げろ
最寄りのかかりつけクリニックが複数診療科をカバーできると、患者さんとしては当然満足度が高まる。
この中でも、例えば「便潜血陽性で大腸内視鏡検査をうけたい」などのニーズは緊急性がなく、他院に紹介しても、それほど患者満足度は落ちない。
しかし、「今日、内科クリニックに高血圧の薬をもらいに行く予定だったけど、ぎっくり腰になっちゃった」
「階段でつまづいて、足首を捻挫した」
などは、急に発生するイベントであり、患者さん自身が非常に困っている状態だ。
痛みで苦しみながら、初めて行くクリニックを探すというのは、なかなかしんどいことだ。
そんな時に、いつも高血圧の薬で通院しているクリニックで、今困っている整形疾患を診てもらったら、患者さんは安心する。
患者さんの満足度、そして何より「困ったらみてもらえる」とクリニックに寄せる信頼感も爆上がりする。
すると、次に腰痛で困った、となったときも頭に浮かぶのは、あなたのクリニック。
好循環が回りだすのだ。
まとめ:狙った診療科の戦略的ラーニング
いかがだっただろうか。
患者単価を増やす最も王道な方法は、複数診療科をカバーできる診療能力を身に着けることだ。
もちろん、複数の診療科を診れるように各領域の専門医まで取れれば鬼に金棒だが、それをするには何年もかかる。
完璧主義のように「専門医をとってからでないと、その科を堂々と標榜できない」と硬い発想になってしまうと、開業の機を逃してしまう。
医師の空白地帯や、はやっていた高齢の開業医がやめた地域などは、あなた以外の先生も狙っていると考えた方が良い。
開業してから、実際自分のクリニックを受診する患者さんの疾患の内訳を分析し、分析結果に応じた診療科を策定するのがいいだろう。
というのは、男性医師よりも女性医師の方が、美容医療などとの相性はいいだろうし、自院の半径3km圏内の診療科の分布によって、結果として自院に来てくれる患者の疾患の受療率はばらつくからだ。
サブとして掲げる診療科が決まれば、週1回でもいいからターゲットの診療科のクリニックに勉強に行かせてもらう。
大学や研修医時代の同期や先輩後輩のクリニックなど、知り合いのクリニックに頼むのが良いだろう。
その場合、謝礼を渡したり、患者さんを積極的に紹介したりと、何かしらのインセンティブがあった方がいいと思う。
もし週1回なら、最低でも1年は見学に行った方がいい。
というのも、ターゲット診療科の1疾患につき、すくなくとも3症例は診ないといけないが、疾患頻度は低いが重要な疾患を経験するためには、ある程度症例数が必要だからだ。
例えば整形外科でいうと、骨折は腰痛に比べて疾患頻度は低いが、見逃せない重要な疾患である。
骨折でも部位によって対応が異なるため、1部位につき3症例と考えると、週1でも最低でも1年くらいかかるのはお分かりだろう。
開業後のラーニングで、ターゲットの複数診療科が診れるようになったら、あなた自身の診療の幅がすごく広がっていることに気付くだろう。
断言しよう。
患者単価を2倍にするには、単一診療科だけで頑張るより、複数の診療科で取り組む方が10倍楽だ。
患者満足度も爆上がりだ。
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