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マラグーティをご存知ですか?そしてそのエンジンは…。 ②

 パスワードは良いバイクだった。ハイホイールが日本で定着する前のデビューだったのが惜しまれる。伊豆へのツーリングにはよく行った。大径ホイールのため立ちが強く、正にハンドルを切ってコーナーを曲がる感じだ。大柄な車体の持つフィーリングは、終始安定でアイポイントも高く疲れが少なかった。ハイホイールの最大の利点は、細かいギャップを拾わない事だ。よって乗り心地が良いので疲労感が非常に少ない。ましてや信頼性と、動力性能は申し分なしのマジェスティだ。
 小排気量のハイホイールは、弱点として加速の緩慢なところや登坂が苦手な場合が多い。
しかし、このパスワードは、アップダウンの続く伊豆の峠道で、なんのストレスも感じることが無かった。むしろ、ハイホイールであることをほとんど意識させずに、快適にツーリングをこなして見せた。マイナーな車体だが程度の良い機体があれば、1台持っていたいバイクだ。何と言ってもSG03Jのマジェスティのパーツが流用できるのはありがたい。

 この後、マラグーティの車体としては、多分最後となるマジソン3を新車で購入した。この車体のエンジンは、PIAGIOのクォーサーエンジンである。クォーサーエンジンは絶対乗っておきたいエンジンだった。

 キャブ車時代から、パワーと頑丈さには定評があったエンジンだ。このエンジンは、PIAGIOグループのベスパや、デルビ、アプリリア、マラグーティ等各社にサプライされていた。それに付随する電装系がイタリアンエレクトロニクスなので、トラブルの大半は電装系と思われる。よくエンジンが不動となっている個体を目にするが、大体はイグニッションキースイッチや、ECUそのもののトラブルによることが多いと思う。実際私のマジソン3も充電系のトラブルで、ECUの交換という憂き目にあった。

 当時どのメーカーの車体でこのエンジンに乗るかで悩んだ。各メーカーの車体の性格に合わせ、同じエンジンなのにセッティングを変更して、結構異なる性格を演出している。例えば、ベスパのGTSシリーズと、デルビのGP1ではフィーリングが明らかに違う。

 私がビッグスクーターに求めるものは、往復で、街乗り10Km前後から、500Km前後のツーリングをこなせる事だ。余りスポーツライクなものより、シートアンダーのラゲッジスペースも十分確保され、2人乗りでも、パッセンジャーシートが十分に確保されていることと、トップケースをつけても違和感のないスタイルを維持できることが理想だった。言わばグランツーリスモのような性格が欲しかった。よって、同じマラグーティで、フレームもほぼ共有されるファントムは候補にあがらなかった。

 マラグーティは風洞実験室を持ち、エアーマネジメントには定評がある。マジソン3での高速道路移動では、少し頭を下げてスクリーンの中に身体を入れると、全く無風の別世界が広がる。比較的大きめのスクリーンなので、体を入れるのも楽だ。
 前方から見ると左右のウィンカーの後ろ側あたりに左右のグリップが見える。このデザインは腕に直接風が来ないための工夫だ。ウィンカーが埋め込まれている部分のカウルの形状が、空気の流れをコントロールして、手から腕まで辺りにダイレクトに風が来ないようにしている。60Km/h前後以上の速度から体感できると思う。寒い時期や小雨の移動では非常に助かる。

 車重が軽いので、重厚な走りでは無い代わりに、かなり元気が良い。まんべんなくトルクが出ている感じで、谷間は感じられない。次回は、走りについて締めくくりです。


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