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「声」のはなし。

不安になると電話がくる。

内容を一生懸命話しているその声は、何を伝えたいのか不明瞭で、いよいよ気がおかしくなりつつあるのではないかと不安になる。

智恵子抄を思い出しながら、うつむいている彼女の表情を覗き見る。
目が合わないのは春だからだと、自分に言い聞かせながら、なんの勉強も一個人の目の前には無意味なのだと思い知りながら、ぼんやりと息をする。

そんな無意味さなんて、自分で充分知っている。
深淵にいるものが水面から声を聞いても、浮き上がることは難しい。

水面にいる側が、手を引きに行かなければ

口先だけならいくらでも言える。
共に深淵に沈もう。
上を向いたら手を引くから。

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