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“持ち帰らない”ことで拡張するものづくり体験/河和田微住

文:田中

福井県鯖江市、河和田地区は、1500年の歴史を持つ越前漆器や、 眼鏡づくりの産地として知られる「ものづくりのまち」。
微住のグッズづくりをこの土地ならではの漆を使って作ることにした。

“これからは「コト体験」が大事だ!”と、農泊や伝統工芸など様々なジャンルで体験型のツアーなども良く目にするようになった。僕自身もこれまで全国様々な場所でガラスのコップや陶器のお皿などなど作ったことがある。作ったところまでは楽しいのだが、実のところ自分で作ったその“世界で1つだけの”品々は使われないまま戸棚の奥にしまってある。皆さんはいかがだろうか。

そんな残念なことにならないものづくりの体験がしたい。微住で提唱するコンセプトの1つに「タメづくり、タメ消費」があるけれど、このコンセプトに因んだ微住ならではのものづくり。

答えは、「持ち帰らない」ということ。

例えば、自分が作ったガラスのコップ。持ち帰ってしまうとそれでおしまいだけど、その土地に置いて帰り、ましてやどこかの喫茶店で使われるとしたら、なんだかワクワクする。

その土地との関係がその物を通じてつながっている感じがするし、ちょっとした責任感が持てる。お金を支払い所有してきたこれまでの気分よりも、実はお金を払って自分が地域の何かに関われているという状態になれる方がなんだか嬉しい。この“気分”は今後さらに世の中で当たり前となっていくクラウドファンディングが成り立つ理由と近いと思う。

さて、河和田での微住中ここ地域ならではの漆を使った微住グッズを、台湾の微住者のみんなとつくってみた。
微住のコンセプトである「地域の心の鍵を渡し合う旅」に因んで、鍵の形をした木に漆を丁寧に塗る。
本来であれば自分で塗ったものは“記念品”として持ち帰るが、そうはしない。
チェックアウト時のホテルの鍵のように、置いて帰る。
さらに漆の技法の1つである“重ね塗り”を活かし、次の微住者がこの地にチェックインする際、鍵を受け取り、漆を重ねる。
微住者の横のつながりが漆の美しい色合いを生む、そんな微住グッズの1つになった。

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このアイディアは今後その他の地域でも実施していきたいと思う。
例えば陶器やガラスの食器を、微住者が作り、地元のカフェや居酒屋で実際にお客さんに提供する。
さらにそのカップは誰が作ったのかがわかるようになっていて、カウンターに並べられた微住カップやおちょこをお客さんは指名できる。人気でなかなか使えないものが出ちゃったりして。笑 
作った本人たちもオンラインを通じてその状況を知れたり、また次行く際の楽しみや接点の1つにもなる。
他にも地域の福祉や教育の現場などにも微住者の作ったものが活用されるなど、地域の課題や不足しているところに対して、地元の特技を活かしたモノづくりを、微住者が提供するという面白い接点があるのではないかと思う。

ただし、微住者としてはその体験が不特定多数だとあまり嬉しくない。だからこそ地域側は微住者の数に価値を持ってはいけない。

お腹いっぱい、全部お金で消費させちゃう完了型はこれまでの旅。 
微住で目指すのは、完了させない旅、完了させない関係性。
コロナ時代、不特定多数へ向けたもてなすばかりの完了型観光よりも、
特定感をお互い感じられるタメ体験を微住では提供していきたい。


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