布の気持ち、子どもの気持ち
友人から、使わなくなったタオルを雑巾にしてほしいと頼まれた。
私は、ずっと縫う仕事をしているけれど、最後に雑巾を縫おうとしたのは、いつだっただろう。
小学校の家庭科か、学校に学期のはじめに持っていく雑巾を自分で縫ったのが最後かもしれない。
大人になってから、自宅の掃除には既成品の雑巾を使っている。
わが子の小学校や中学校時代、学校に雑巾を持たせる時も、100円ショップで売られている雑巾を買って、持たせた。
仕事や家事に追われていると、使い古しのタオルで縫うよりも、
買ったほうが早いし、安い。
使い古しのタオルも、捨てるのが一番早い。
手間がかからない。
そんな風に思っていた。
私が仕事で作る服やバッグは、立体に仕上げる。曲線と曲線を縫い合わせる複雑な構造。
雑巾は、四角い平面を直線に縫うだけの単純な作業。
それでも100円でいつでも買える雑巾と比べると、時間もコストもかかってしまう。
雑巾を縫ってる暇はない。そう思っていた。
時間とコスト。
これを優先した結果が、子どもに100円ショップの雑巾を持たせるという結果になっていた。
今、雑巾を介して振り返ると、子どもには雑巾を作って学校に持たせてあげたらよかったと、後悔している。
学校で掃除をする時、気分の上がるような、嬉しくなるような、刺繍や飾りをつけて、雑巾を作ってあげたらよかったな。
使い終わったタオルも、最後に少しおめかしをした雑巾に生まれ変わり、汚れをふき取り、ものを磨いて、そして命を終えて土に還る。
その方がきっと、子どもも、布も、幸せだったに違いない。
時短と効率を追いかけること。
かたや幸せな気持ち、ものや環境を大切にすること。
追いかける方向が違うと、やることも違ってくる。
時短と効率を追いかけて、思いを忘れてしまった自分を、今は後悔している。
子どもたちが生きる未来が、どんな世の中になって欲しいかを考える。
効率や経済性ではなく、思いや慈しみを大切にできる、そんな世の中になって欲しい。
そんなことを思いながら、使い古しのタオルに、着なくなった服のリボンをあわせて、少しだけおめかしをした雑巾を作ってみた。
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