土地の記憶 ~光州への旅の記録9
光州への旅の記録1~8の続きです。
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2024年5月18日。
光州民主化抗争記念式典が行われるこの日を光州で過ごし、
明日は釜山を経由して福岡への帰路につく予定だ。
1日の活動を終えて、帰り着いたゲストハウスの夜の風景。
ゲストハウスのだれでも集えるダイニングテーブルで、ソウルから光州へ来た若い女性と出会い、おしゃべりに花が咲く。
とても流暢な日本語で、話をしてくれる。
韓国に来て思うのは、日本語が上手な若い人がとても多いということだ。そして、もちろん日本がとても好きで興味があるという。
夜が明け、ゲストハウスを後にする時が来た。
長女がスマホから手配したタクシーで、光州のバスターミナルへ向かう。
陽気なタクシーの運転手さんが、これまた流暢な日本語で、ゲストハウスからバスターミナルまでの15分の道のりを、盛り上げてくれる。
光州のバスターミナルから、釜山のササンバスターミナルまでの3時間の道のり。
この日も、空は青い。
往路と同じく、
青々とした苗がきれいに並ぶ水田。
アスファルトの道を行くトラクターのかたちと運転する農夫の作業着。
ときどき現れる牛舎。
そして、太陽光発電機のパネル。
日本の田園風景と、変わらない。
途中休憩をした高速道路のサービスエリア。
日本のその風景と、変わらない。
私が光州の旅で常に感じ続けたのは、「自分と同じ」ということだった。
現地で感じた、土地の記憶。
木に茂る青々とした枝葉。
分岐する枝と、その先に芽吹き成長していく葉。
天から受け取る光と、根から吸い上げる水を糧に、新しい世界を広げていく。
見えない土の中で、木は広く根を張り、他の木や植物の根と複雑に絡み合っている。
土の中で絡み合った根と根の記憶は、土の中から地上に現れ、空へと向かう枝葉となる時も、その記憶を携えている。
見えない土の中に記された記憶が、根、幹、枝を通して携えられ、風の揺らぎの中で、末端の葉と葉がこすれあうように、
末裔同志が再び地上で巡り合う時が、来るのかもしれない。
ゲストハウスの玄関先でみた、どこかから飛んできた種が自生し、芽吹き、根を張り、咲いたという花を思い出す。
オレンジ色のポピーの花言葉は「思いやり」だった。
この花も、見えない地中で根を張り、そこにいる根と絡み合いながら、この場所で花を咲かせている。
そしてまた、その記憶を、風に乗せてどこかへ飛ばしていくのだろうか。
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