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地名が伝えるもの - No.238 編集後記

小さな子供の頃、ぼくはよく日本列島の地図を描いていた。カレンダーの裏など、古紙の大きなものをもらうと喜び勇んで島の輪郭を描いた。北海道から、沖縄まで。特に自分がいる北海道の形が大好きで、択捉島、国後島を含み、離島まで、そらで憶えてよく描いた。祖父にほめられるのが特に嬉しかったものだ。お前は将来地理学者になれるぞ。チリガクシャとはどんな職業か知らなかったけれど。

 長じて、自分で旅ができるようになると、北海道のあちこちに行って、この島のことが少しずつわかったような気になれたものだ。自分が知覚する世界を拡大しようという欲求は若者にとって根源的なもので抑えることが難しい。このような年齢になっても好奇心がすっかりなくなるということはない。心のどこかに、まだ少しの若者がいるのだろうか。この島にある、自分にとっての謎がひとつ解けるたびに、小さな贈り物をもらったような、ささやかな満足を得ることがある。

 次のラリーで、千島列島を望むオホーツク海岸に行こうと考えている。知床や根室。調べていると、清里町という地名が気になった。どこか不自然な感じがしたのだ。北海道の地名には、アイヌ語由来、または入植者の出身地に由来するものが多い。札幌のベッドタウンである「北広島市」は出身地由来の典型的な例だ。

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