見出し画像

「さすがはフランコ!」 ISDE ブラジル2003 

当時、自動車用として販売されるガソリンにサトウキビを原料とするエタノールを25%混合することが義務付けられていたブラジルでは、レース用のガソリンがスムーズに供給されるのかどうかが心配されていた。チーム、ライダーは車検の前に、マシンセッティングのために少しは走っておかなければならないのだが、エンデューロマシンのタンクを満たすべきガソリンが手に入らない。聞けば、遠く数千キロ離れたリオデジャネイロから、大量のハイオクガソリンがタンクローリーで運ばれている途中だという。期間中に合計10万リッターが供給される予定で、タンクローリーは毎日到着するという。しかし、到着はすでに数日遅れている。

「ガソリンが無ければ話にならん!」。

業を煮やしたフランコはすぐさまヘリの準備をさせ、自らそれに飛び乗る。国道の上空をそのまま南下し、やがてタンクローリーのコンボイを発見した。ヘリを着陸させて、フランコはドライバーにこう通告した。「とにかく明日の朝7時までに届けるんだ。時間通りに到着したらボーナスを支払う。しかし、時間に遅れたら1分につき、1ドル、ボーナスを減らすからな!」。

アチェルビス・プラスティカ・イタリアの創業者であるフランコ・アチェルビスはまた、北イタリアの名門であるモトクラブベルガモの主要メンバーの一人でもある。地元イタリア、ヨーロッパのモーターサイクルイベントへの支援はもちろん、南米という土地への愛情は深く、かつてのインカラリー、そして2003年ブラジルのISDE、2007年チリのISDEでも自らオーガナイズの采配をふった。ブラジルもチリも、形式上は地元クラブとの共催となっているが、実際面では主要な部分をフランコとモトクラブベルガモが担っていたとして間違いないだろう。ライダーたちは、フランコのモータースポーツに注ぐ愛情を良く知っているし、信頼もしている。ビジネスで成功をおさめても、自ら、一人のエンデューロライダーとしてみんなの仲間であり続ける。そして、充分に恩返しを続けてもいる。ライダーたちは、エンデューロイベントで、"ACERBIS"のロゴマークを見ないことがない。それは、すなわちフランコがあまねくイベントを通じてライダーを応援していることの証明だ。なによりライダーたちにうれしいのは、お金持ちであるに違いないフランコが、自ら汗して、埃にまみれ、日にやけ、時に憔悴しながら、ライダーたちを楽しませるのにやっきになってがんばっていることだ。

フランコがバイクでスペシャルテストを点検しにきた。若いものにまかせておけばいいのに、いてもたってもいられないのだ。テストは思いのほかワダチが掘れていて、フランコはズデっと転んでしまった。

ここから先は

874字 / 1画像
1998年に創刊。世界のエンデューロ、ラリーのマニアックな情報をお届けしています。

BIGTANKマガジンは、年6回、偶数月に発行されるエンデューロとラリーの専門誌(印刷されたもの)です。このnoteでは、新号から主要な記…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?