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「ヴィンテージ」 エンデューロ日記 - 014

ここのところ、KTMのラリーバイクを素材にして、6日間競技とは何か、エンデューロとはそもそもどういう競技で、その後のラリーと、どのようにつながっているのか、ということを書いてきた。

簡単に整理すると、エンデューロとは、モーターサイクルそのものの黎明期に、その工業製品としての性能、信頼性を向上させることに資する機会としてはじまったもので、同時に、モーターサイクルという道具をどのように使いこなすかという技術を研鑽し、また工具や服装といった周辺のハードウェアを進化させるための機会でもあった。

また当然、それは、メーカー=製造者が自らの製品の優秀性をPRする機会にもなっていた。

が、モーターサイクルは、時代とともに、トランスポーターとしての役割を持つものから、スポーツの道具へと変化していくことになり、6日間競技=ISDEも、その役割を変化させていく。ほぼオフロード競技としての外観を備え、そう認識されるようになったのは1970年代。入れ替わるようにしてティエリー・サビーヌのラリーが始まった。

パリダカと6日間競技は、一見、あまり関係がないように見えるかもしれないが、前回まで書いたような視点から見ると、そこには通底する文脈がある。モータースポーツは、常に、モータリゼーションの変化とともにあるのだが、その中で、6日間競技はほぼ「化石」のような存在になった。

かつては社会とともにあることで生き物として存在したが、社会との接点を薄くしたことで石化してしまったため、もはや時代の変化に左右されない。

とはいえ、スポーツにはスポーツの価値がある。

ここまで書いて、ちょっと疲れてきたので話題を変える。

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ヴィンテージ


 実のところ、ぼくはヴィンテージモトクロスとか、以前に紹介したエルバ島のヒストリックエンデューロのようなイベントなど、そうしたものの意味というか、存在理由というものが良く分かっていなかった。今でも充分にわかってはいないかもしれない。もちろん、みんな、自分が好きだと思うこと、やりたいと思うをことを、存分にやればいいと思っているし、そのことに是も非もない。だが、なんでわさわざ、という思うが一方ではある。例えば、最近乗っているエンデューロバイクひとつとってもそうだ。十数年も前のKTMでも、まだよく走るし、楽しいことは楽しいのだが、新しいバイクに乗ると、もっと気持ちよく走れて、すかっとする。100年余り前に誕生したモーターサイクルという機械は、まだまだ進化していて、毎年毎年、どんどん良くなっている。レースなどはそういうバイクでやればいいのであって、なにもわざわざ、旧式のバイクで…。

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