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彼方へ - Go Beyond - 連載 Vol.33

著 / 山田徹

第六章 最終章
其の九 遭難

夜が明けた。
未着は1台。ゼッケン30だ。一日目、井戸のところで言葉を交わした選手だ。昨日は涸れ川で見かけた。大会本部のテントには重たい沈黙が占めていた。これまででも、朝になってもライダーたちが帰ってこないことは間々あった。しかし、そんな時でも情報を把握していなかったことはない。走っているのか、止まっているのか。着けるのか、着けないのか。今どこのあたりを走っているのかだ。
ルートのちょうど中間にあるRCPは通過していた。しかし、RCPとゴールであるビバークとの中間にあるCP2には到着していない。つまり、RCPからCP2までの間、約150Kmが捜索範囲と考えられた。しかしCP2をミスした可能性も捨てられない。するとRCPからビバークまでの300Kmが捜索範囲だ。

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1,658字
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