見出し画像

彼方へ - Go Beyond - 連載 Vol.31

著 / 山田徹

第六章 最終章
其の七 ゾーモットへ


重傷者を運んだヘリが、ウランバートルからビバークに帰還するまでに、ラリーは新しい行程のスタートを終えた。すでに日は高くなり、気温はじりじりと上がってきた。
衛星を介して届いた最新の情報によると、その緊急輸送されたライダーは無事だ。ウランバートルでは、フランスから帰ったばかりの女性のドクターが、見事な執刀をしたのだとも告げた。
ゴールしたら、さっそく病院に行ってみようかと思った。
ウランバートルの医療水準は、国際機関の援助もあって長足の進歩をしていた。
ほぼビバークの撤収が終わった資材の周りに、何人かの本部スタッフと車座になった。
「今日のルートは、今大会の山場のひとつだ。距離こそ短いが、気を引き締めような」
本部隊地上班は三日後のビバークであるハラホリンを目指す。行程的には比較的楽だが、今日は1名の遭難者を回収に当たらないといけない。
「出発準備を急いで、早く行ってくれ、待ちくたびれているだろうよ」
そう頼むと
「心配なく、先発隊を出してあります。」
「そうか」
「我々は、ヘリを見送ってから出発しますよ」
本部隊の隊長は、実に機転がきく。

ここから先は

1,363字
1998年に創刊。世界のエンデューロ、ラリーのマニアックな情報をお届けしています。

BIGTANKマガジンは、年6回、偶数月に発行されるエンデューロとラリーの専門誌(印刷されたもの)です。このnoteでは、新号から主要な記…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?