見出し画像

TIME TO RIDE 「ミドルクラスの誘惑」 大鶴義丹 No.245より

 KTM890アドベンチャーRに乗り始めて、色々な方から「どんな感じなの」と聞かれることが多い。しかしそれを分かり易く表現するのがとても難しい。


「アドベンチャーじゃないかも」

 私はこのマシンに2022年末より乗り始めたばかりだが、最大のリスペクトを込めて逆説的表現をしている。
 フルサイズのアドベンチャーバイクと本格的に関わったのは2016年のことだ。某二輪誌の取材で発売されたばかりの「新生CRF1000Lアフリカツイン」を乗り回した。千葉の林道で初めて対面したとき、その巨大さに圧倒された記憶がある。まさに林道の巨獣。まともに林道を走らせられる訳がないと思った。
 雑誌ガルル創刊以前より、林道や河原を走り出し、昭和の林道ブームをリアルタイムに駆け抜けた世代としては、アドベンチャーバイクよりも、ビッグオフという響きが馴染みやすい。だが私が青春時代を泥まみれにした80年代、今は無き「丹沢林道」や「富士山周辺」といったフィールドにおいては、その手の大きなマシンが活躍している姿は少なかった。または裕福そうなオジサンがツーリングマシンとして使っているだけだった。
 その理由は二つあり、一つは限定解除という免許問題で、もう一つは予算的なものだ。当時は国内最強と言われていたマシン、DT200R(37F)が新車32万円だった。1ドルが237円もして、逆車XR600Rは新車で120万円程度だったと記憶している。当時国内最速クラスのスポーツカーである、サバンナRX-7の新車価格が169万円。その値段帯のものを泥道でゴロゴロさせるのは、富裕層の子息か、パリダカにでも出場する以外は現実的な存在ではなかった。当然、十代の林道キッズがそんなものでスッ飛んでいるケースは、バブル以前では極端に少ない。

ここから先は

1,431字
1998年に創刊。世界のエンデューロ、ラリーのマニアックな情報をお届けしています。

BIGTANKマガジンは、年6回、偶数月に発行されるエンデューロとラリーの専門誌(印刷されたもの)です。このnoteでは、新号から主要な記…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?